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#探偵
橘靖竜
5,860
麟兎
43
神崎はスマートフォンの画面を見つめていた。
着信:神崎悠真
自分の番号。
あり得ない。
「……出ないでください。」
少女が怯えた声で言った。
神崎は少女を見る。
「どうして?」
「それに出ると……また始まります。」
「また?」
少女は答えない。
その代わり、もう一人の神崎が口を開いた。
「出てください。」
「何?」
「あなたは、その電話を受けるためにここへ来た。」
神崎は眉をひそめる。
「お前は何を知っている?」
「全部ではありません。」
「なら、何を知ってる?」
「……この電話の向こうにいるのが誰なのか。」
神崎の指が通話ボタンの上で止まる。
着信は鳴り続けている。
一回。
二回。
三回。
やがて四回目の呼び出し音。
神崎は通話ボタンを押した。
「……もしもし。」
返事はない。
ただ、微かな呼吸音だけが聞こえる。
「誰だ?」
数秒後。
声がした。
「神崎悠真です。」
神崎の顔が強張る。
「……お前は誰だ。」
「あなたです。」
「ふざけるな。」
「十四回目のあなたです。」
地下祭壇の空気が一変した。
もう一人の神崎が顔を上げる。
「……そんなはずはない。」
初めて、その男の声に動揺が混じった。
神崎は電話を握り締める。
「十四回目?」
「はい。」
「俺は十三回目じゃないのか?」
「違います。」
電話の向こうの声は淡々としていた。
「あなたは、十三回目の人生を生きている。」
「そして僕は、その次です。」
神崎は息を呑む。
「じゃあ、お前は……?」
「あなたが死んだ後に生まれた存在です。」
神崎の視線が、もう一人の神崎へ向く。
男は首を横に振った。
「信じないでください。」
電話の声が笑った。
「その男は嘘をついています。」
「何?」
「そいつは神崎悠真じゃない。」
もう一人の神崎が黙り込む。
電話の向こうから続く。
「そいつは、あなたの記憶をコピーして作られた偽物です。」
「偽物……?」
「あなたが十二回目の人生で作った。」
神崎は混乱していた。
転生。
記憶。
複製。
十三回目。
十四回目。
どれが真実なのか分からない。
⸻
突然。
地下祭壇の床が大きく揺れた。
少女が悲鳴を上げる。
「きゃっ!」
神崎は少女を抱き寄せる。
祭壇中央の扉が、ゆっくり開き始めていた。
ギギギギ……
扉の向こうには、何もない。
ただ真っ黒な空間が広がっている。
そして。
その暗闇の中から、一人の人影が歩いてくる。
黒いコート。
顔は見えない。
ゆっくり。
一歩ずつ。
近づいてくる。
信者たちが一斉にひざまずいた。
「来た……。」
「転生者様だ……。」
神崎は拳銃を構えた。
「止まれ!」
人影は止まらない。
そして、光の中へ入った。
神崎は目を見開く。
「……嘘だろ。」
そこに立っていたのは。
三年前に死んだはずの刑事だった。
神崎が新人時代に組んでいた先輩。
佐伯修司。
「……佐伯さん?」
佐伯は微笑んだ。
「久しぶりだな、神崎。」
神崎は銃口を下げられない。
「あなたは……死んだはずだ。」
「ああ。」
佐伯は自分の胸を指差す。
「三年前、ここで殺された。」
「じゃあ、今のあなたは……。」
佐伯は答える。
「転生した。」
神崎の背後で、もう一人の神崎が呟いた。
「違う。」
佐伯を見る。
「こいつは転生者じゃない。」
佐伯の表情が変わる。
「……さすがだな。」
「お前は……」
もう一人の神崎が言葉を続ける。
「最初の実験体だ。」
神崎は二人を見比べる。
「実験体?」
佐伯は笑った。
「そうだ。」
そして、地下祭壇にいる全員へ告げる。
「転生なんてものは、最初から存在しない。」
静寂。
神崎の心臓が大きく鳴る。
佐伯は続けた。
「この教団が作っているのは、転生者じゃない。」
「人間の記憶を移植した、別の人間だ。」
神崎の顔から血の気が引く。
電話の向こうから、十四回目の神崎の声が聞こえた。
「やっと、真実に近づいたね。」
その直後。
スマートフォンの通話が切れた。
画面を見る。
着信履歴には何も残っていない。
そして。
地下祭壇の壁に、巨大な文字が浮かび上がった。
PROJECT REINCARNATION
その下には、さらに小さく。
「被験者001:神崎悠真」
神崎はその文字を見つめる。
自分が事件を追っていたのではない。
最初から。
自分自身が、この事件の「事件現場」だった。
コメント
1件
うわっ、めっちゃエモくて鳥肌立った…!!😭💕 “自分から電話”っていう導入からして既に不気味で最高だったんだけど、十三回目と十四回目の神崎の会話とか「被験者001」のオチで全てが繋がった感じがして脳がバグった…!! 佐伯さんの転生かと思いきや記憶移植って真相、完全に持ってかれた。次どうなるの!?続きが気になりすぎて今夜眠れない…📞💥