テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
27
89
BOOK Only
243
――翌日。俺は『過去視』のスキルで特定した、街の片隅にある古びた雑貨屋に足を運んでいた。
怪しまれないよう、気配を完全に遮断する隠密スキルを発動させ、棚の陰からそっと様子を伺う。
少し待つと、カランコロンとドアのベルが鳴った。
水色の髪を揺らしながら、チェリルがお店に入ってくる。
彼女は迷いのない足取りで店の奥へと進み、ある棚の前で足を止めた。
そして、お目当てのものをじっと見つめた後、そっと手を伸ばす。
チェリル「………あった………」
小さな、けれど嬉しそうな声が店内に響いた。
彼女が愛おしそうに両手で包み込んだのは、一つの小さな品物だった。
(……それだ。それが、彼女が毎日街に通いつめてまで探していたものなのか!)
物静かな彼女がそこまで熱心に求めていたアイテムの正体が、猛烈に気になり始める。
同時に、このチャンスを逃す手はないと、俺のサラリーマン魂が囁いた。
偶然を装って声をかけ、彼女の力になる絶好のタイミングだ。
彼女が愛おしそうに両手で包み込んでいたのは、一本の古びた羽ペンだった。
チェリル「………お願いして良かった………ちょうど……折れちゃって…………」
ほっとしたように、嬉しそうに呟く彼女。どうやら店主に頼んで、わざわざ取り寄せてもらっていたらしい。
店主「いいんだよ。お会計、5リーンだ」
カウンターの髭面の店主が、ぶっきらぼうながらも優しく微笑んだ。
(5リーン……!)
俺の脳内にあるゲームの知識が、即座にその価値を計算する。
『魔王様と聖女様』の世界における通貨、「リーン」。
前世の感覚で言うと、1リーンは確か約100円だ。つまり、お会計はワンコインの500円程度。
(世界を滅ぼせる魔王の財布からすれば、はした金にもならない額だな……)
毎日街に通っていたのは、お気に入りの羽ペンが折れてしまい、それが届くのをずっと待っていたからだったのだ。人間の街が苦手そうな彼女が、健気にも毎日足を運んでいた理由を知り、愛おしさが限界突破する。
コメント
2件
現実だったら500円でも大金だな、
分かる……チェリルが毎日街に通ってた理由、折れた羽ペンの代わりを待ってただけってめっちゃ健気でしんどい🥀 “ちょうど……折れちゃって……”の呟きに全部持ってかれた。世界を滅ぼせる魔王の財布からすれば500円程度っていう落差も沁みる。愛おしさがバグる回だった🖤