「今日も雨降るっぽいよ」
「そうなん?」
普段電車を使うけれど、数駅だけだから歩いて帰れる距離だ。俺もチャリ通でも良いかもしれないな。
空は分厚い雲で覆われていて、今にも降ってきそうだ。
「この時期は毎日雨だね」
「ジメジメしてて嫌なんよな…。きのこ生えそうや」
「そんな?」
変なこと言うよね、と笑って空を見上げている。俺も釣られて空を見る。
「そう言えばさ―」
「ん?」
「昨日は大丈夫だった?俺に傘貸しちゃったから…濡れちゃったよね…」
「ああ、気にしなくていいよ」
「でも…」
「家近いんだ、俺。だから大丈夫」
なんだよ、めちゃくちゃ優しいじゃん。こんなの、俺が女子だったら好きになっちゃうんだろうな…
背も高いし顔もかっこいいし、その上優男なんて、完璧にもほどがある。
「…ありがと」
「うん」
歩道を二人で歩くって、なんか良いな。慣れないことだからちょっと緊張しちゃうけど。
もう一駅分は歩いたと思う。特に方向も言う感じではなかったから、なんとなく自分の家に向かっていた。そう言えば、キヨくんの家はどのへんなんだろうか。
「キヨくんもこっち?」
「いや…」
キヨくんは後ろを指さして
「曲がり角過ぎちゃった」
へらっと笑ってまた歩き出す。
ってことは反対方向ってこと?
やばい…俺全然気が利かへんやん…
「えっ…じゃあ戻らないと…」
雨も降りそうだし、このまま俺んちまで歩かせるわけにはいかないでしょ。
「いいのいいの。俺が好きで歩いてるんだから」
「でも…」
そんな話をしていると、上空の雲が一瞬光った。
「雷…?」
「夕立来そうだな」
ゴロゴロとその音が近づいてくるのがわかった。するとポツポツと雨粒が頭に当たる。その感覚は徐々に狭まっていき、少しずつ地面を濡らしたかと思ったら
「うわ!」
「こんな急に降ってくるかよ!」
俺は急いで傘を差した。リュックのキヨくんは傘を出すのか難しそうで、どんどんその体を濡らしていく。
「キヨくん」
これ以上濡れないように、自分の傘に入れてあげた。身長差があるから腕を伸ばすのに疲れてしまう。
俺が必死に濡れないようにしているのを見て、ふっと笑って
「ありがと」
と一言。なぜかその瞬間、少し胸のあたりがチクッとなった。なんだこれ…
「雨止むのかな…」
「夕立ならすぐだよ」
服なんてビショビショで、すぐに止んだとしてもこのまま帰ったら風邪を引いてしまう。俺はキヨくんにある提案をした。
「俺んち近いけど…寄ってく?」
「いいの?」
「誰もいないけど…少し服乾かしていったらどうかなって…」
するとキヨくんは俺が持っていた傘を取って、
「じゃあ、お言葉に甘えて」
と言って歩き出した。
To Be Continued…
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