「連れていきたい」
榊(さかき)のサイン会があった週明けの月曜日、俺はいつもより早めに出社した。
先週起こったトラブルの影響を響かせないよう処理に追われていると、ふとした瞬間、サイン会のことを思い出す。
榊と別れた後、俺は 花音(かのん)の居酒屋に行くのをやめ、千尋に会いに行こうとした。
けれど 千尋(ちひろ)の護衛だという男が見張っているかもしれず、羽交い絞めにされた時の痛みが蘇って、行くのを躊躇ってしまった。
……あぁ、思い返すだけでもイライラする。
結局、気持ちを落ち着けようと、週末は会いに行くのをやめたが、それはそれで悶々とした休日を過ごすことになった。
苛立ちが抑えられないせいで、花音から会いたいと連絡がきても、気乗りせず応えなかった。
全く、あいつが出てきてからロクなことがない。
昼休み、貿易部に目を向ければ、千尋は田中さんと笑いながらオフィ****************
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