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激しく荒れる風の中、玲央は必死に走り続けた。
(やっぱり、スタンリーはしつこいねぇ……。)
耳を澄ませば、遠くから銃声が聞こえる。弾丸が地面をかすめ、鋭い音を立てていた。
「チッ……さすがに正面から戦うのは無理だねぇ。」
玲央は木々の間を駆け抜けながら、頭の中で戦況を整理する。
(スタンリーの目的は千空。だから、俺が囮になって時間を稼げば、千空たちは動けるはず。)
(問題は、どうやってこの包囲網を突破するか……。)
突然、後方から鋭い声が響いた。
「そこまでだ、ガール。」
玲央の背筋が凍る。
スタンリーの声——それは、まるで死神のささやきのようだった。
玲央は反射的に足を止め、息を整える。
(まずいねぇ……思ったより早く追いつかれた。)
ゆっくりと振り返ると、スタンリーがライフルを構え、冷静な視線を向けていた。
「君は利口だ。ここで降伏するなら、命までは取らない。」
玲央は目を細め、少しだけ口元に笑みを浮かべた。
「そういうのは、信用できないねぇ。」
「なら、無駄な抵抗はやめたまえ。」
次の瞬間——玲央は一気に動いた。
スタンリーの狙いをずらすように、地面を蹴り、一気に側面へと駆け出す。
直後、鋭い銃声が響いた。
玲央は寸前で身を低くし、弾丸を回避する。
(くそっ、さすがプロ……動きを読まれてる!)
しかし、玲央はすぐに切り替えた。
(だったら、こっちも”リズム”を変えればいい。)
玲央は呼吸を整え、体の動きを意図的にランダムに変えながら走る。
まるで音楽のビートを刻むように、動きに変化をつけることで、スタンリーの照準を惑わせるのだ。
「ほう……面白い動きだな。」
スタンリーはわずかに目を細めた。
(なるほど、ただの素人じゃないってことか。)
だが、次の瞬間——
「だが、そんなトリックが通用するほど、私は甘くない。」
スタンリーの指がトリガーを引いた。
銃声が響く。
玲央は反射的に身を翻した——が、回避しきれず、銃弾が腕をかすめた。
「……ッ!」
鋭い痛みが走る。
(くそっ、やっぱり簡単には逃げられないか。)
それでも玲央は立ち止まらなかった。
痛みをこらえながら、一気に崖の方へと走る。
(ここで捕まるわけにはいかない——!)
玲央の決死の逃亡劇が、極限状態へと突入する——。