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#人間ドラマ
雨宮寧々
#恋愛
桜咲かな
1,037
ワープホールを抜けた瞬間、俺たちの目の前には、果てしなく続く森が広がっていた。
空を覆い隠すほどに生い茂った木々。足元には湿った土と枯れ葉が積もり、周囲からは鳥の鳴き声すら聞こえない。
いや、正確には聞こえないのではない。
何かが、音を奪っているようだった。
俺は周囲を見渡し、思わず口を開いた。
「……ここが、長野か?」
プラトンは腕を組み、森の奥へと視線を向けた。
「いや、正確には青木ヶ原樹海だ。長野の任務と聞いていたが、どうやら対象がいる場所はここらしいな」
「青木ヶ原樹海……」
名前だけなら聞いたことがある。
しかし、実際に足を踏み入れてみると、そこは俺の知っている森とはまるで違っていた。
木々の隙間から差し込む光は薄く、どこまで進んでも景色が変わらない。まるで、この森そのものが俺たちを拒んでいるかのようだった。
「……妙だな」
隣に立つ老人カール・ポパーが、静かにつぶやいた。
「何がですか?」
俺が尋ねると、カールは森の奥を見つめたまま答えた。
「静かすぎる。自然というものは、もっと不規則なものだ。鳥が鳴き、風が吹き、木々が揺れる。だが、ここにはそれがない」
「確かに……」
俺は息をのんだ。
カールはゆっくりと歩き始めた。老いた体からは想像できないほど、足取りに迷いがない。
「行こう。君たちの任務は、この森の奥にいる竹之内一家を討伐することなのだろう?」
その言葉を聞いた瞬間、俺の胸が重くなった。
竹之内一家。一歩。
また一歩。
木々の隙間を抜けるたび、空気が重くなっていく。
そして――。
森の奥から、かすかに何かのうなり声が聞こえた。
俺たち三人は、同時に足を止めた。
カールが、静かに口を開く。
「……どうやら、歓迎されていないようだな」
俺は拳を握りしめた。
そのときだった。
「……来るぞ」
カール・ポパーが、静かに口を開いた。
俺は森の奥へと目を向けた。
木々の間から、一体の霊が姿を現した。
人間のような形をしている。だが、その身体は異様に膨れ上がり、皮膚はところどころ裂けていた。顔には目が三つあり、口は耳元まで大きく裂けている。
そいつは俺たちを見るなり、喉の奥から濁ったうなり声を上げた。
「グ……ァァ……」
「野良の霊か。竹之内一家とは無関係のようだが……」
プラトンがそう言い終える前に、霊が地面を蹴った。
速い。「いや……驚きますよ。だって、相手の身体そのものを武器にするなんて……」
「身体というものは、実に不思議なものだ。正常に機能しているからこそ、人は自分の身体を信頼できる。しかし、その均衡が崩れたとき……何が起こるかは、誰にも予測できない」
カールは倒れた霊に一瞥をくれた。
「さて。立ち止まっている時間はない。私たちが倒すべき相手は、こんな野良の霊ではないのだからな」
「……竹之内一家」
俺は、その名を口にした。
先ほどの霊は、俺にとってただの敵だった。
しかし、これから向かう先にいるのは違う。
俺の上司の妻と、四歳の娘。
俺はもう一度、拳を握りしめた。
コメント
9件
はわあ…第15話読んだよ〜!✨ 青木ヶ原樹海っていう舞台選びがもう雰囲気ありすぎて鳥肌立った😭💕 音が奪われてる感覚とか、カール・ポパーの「静かすぎる」って台詞で一気に不穏な空気に引き込まれた…! そしてラストの「俺の上司の妻と、四歳の娘」って竹之内一家の正体が明かされるの、胸がグッと締め付けられる展開すぎる…! 敵の顔がちゃんと見えてるからこそ、これからの戦いにすごく感情移入しちゃうよ…!! 続き気になりすぎて寝れないかも〜😫🔥