テラーノベル
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治視点
「なぁ治君、今日一緒に帰らへん?」
帰り際、教室で荷物をまとめていたところにあの子が訪ねてきた。
「-、」
一瞬断ろうかと思ったが、その言葉は呑み込んだ。
ことが早く済んであの鬱陶しい関係から逃れることができると思ったからだ。
上手くいけばいいのだが。
「おん、ええよ」
そう返事をすると彼女は頬を赤らめてみせる。
「そういや侑とはどうなったん?」
彼女は少しちょとんとして
「侑君?まだなんも言ってへんよ、早く振った方がええ?そんなら今夜にでも─」
「いや、まだ降らんでええ。逆にもっと仲良うしたって。」
彼女は理解が出来なかったのか、突拍子もないと言いたげな顔をしてみせた。
「わ、わかった、でもなんでなん?」
「まあそこは聞かん事にしたって」
つくり笑顔を見せれば再度顔が熱真っ赤になる。
そろそろ夏だろうか。
学校を出てみれば季節はまだ春なのにじりじりと太陽が顔を出していた。サンサンと照りつける真っ赤な太陽を睨んでみるが無意味だった。
彼女はというと暑いはずなのにニコニコ笑顔でずっと喋っている。
俺は暑さにやられそうなのに。
「なあなあ、写真撮らん?」
彼女はSNSに上げたいと続けた。
「写真?..まぁ顔映さんならええよ」
「じゃあこれは?」
彼女はスマホの写真ホルダーの中から参考画像を見せてくれた。
それはカップルが恋人繋ぎをしている、手だけを映した写真だった。
これなら身バレもしないし計画も上手くいきそうだ。
写真を撮り終わって、家に着いた頃にはもうSNSにあの写真がアップされていた。
すると、バタバタと2階の部屋から騒がしい音が聞こえてきた。
そして侑がドタドタと階段を降りてきて俺にスマホの画面を見せてきた。
「さむぅ、見てやぁ..浮気されたぁ」
泣きながら見せてくるスマホの画面にはやっぱりあの写真が写っていた。
計画が上手くいきすぎて内心ニヤニヤが治まらなかった。
泣きながら俺に引っ付いてくる侑。全てが計画通りだった。
でもまだ終わっていない。完全に侑を俺のものにするまで。
それから俺は侑に甘い言葉をかけ続けた。侑が聞きたくない言葉も一緒に─
泣き止んできた頃、侑が突然口を開いた。
「…やっぱりサムが言った通りやった」
なんのことかと思ったら結構昔の話だった。
「そうなんなぁ。付き合うなら男にしとき。」
ここで告白したい気持ちもあったが、今の侑は俺のことを全くと言っていいほど意識していない。
告白したとしても振られるのがオチだ。
だからせめて俺も恋愛対象内に入れるように誘導した。
例え侑が他の男と付き合うとしても絶対上手くいかない。いくはずがない。
だって侑のなかにはバレーと俺しかいないから。
俺もまた同じ。
だから俺はいつまでも待ってるで。
早く気づいて。
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コメント
7件
最高🫶💕ほんまもう優勝🏆✨
ほんと最高!! 好k((殴‥尊敬しか無いっす(´;ω;`)
今回も最高すぎる…ほんっともう天才ですか??天才ですよね?? なんでこんな尊いものが作れるのか…まじ尊敬します😳