コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
多幸感(逝ってる感じ)から復活してきたバストロと嫁のフランチェスカが交互に聞く。
「あ、アーテ、なんだ? それに、シンセイギン? 一度も聞いた事が無いぞヴノ! ちゃんと説明して貰わにゃならんぞ! 説明求むっ!」
「魔獣と竜種を消滅させる? ですってぇ! そんなの…… 人の営みを継続不可能にしてしまう…… さ、最終兵器じゃないのよっ! ヴノっ! 説明して貰うわよぉ!」
夫婦らしい二人に問い質されてしまったヴノは、やや遠い目をしながら答える。
『うむ、歳若いお前らが知らぬのも無理無い事じゃったのぉ、そう、あれはワシがまだ幼猪(ようちょ)、今のペトラ位の事じゃったわい…… 当時のワシはなぁ、ハタンガの守護獣、アリス様の元で修行中だったんじゃよ、毎日毎日繰り返される辛い修行の日々でのう~、まあ、いつも思い描いていた事と言えばたった一つじゃったよ、『なんとしても、どうにかしてこの地獄から逃げ出してやるっ!』、それだけじゃったんじゃよぉ』
「「「『『『『………………』』』』」」」
何と無く重過ぎる話の方向性に、一同が黙りこくる中、無神経な感じで言葉を返したのはペトラ、只一者だけである。
『へぇ~、そんな風に思っていたんだね~、そうなんだ~、そっかそっかぁ~…… ふんっ、それでぇ? そんな不敬な気持ちで居続けた時にさっ、一体何があったって言うのよぉっ! ふんっ!』
言葉の端々にペトラが不快感を感じている事がビシバシ伝わって来ている。
その理由が皆目理解不能な状態ではあったが、首を傾げながらもヴノは話を続ける。
『? ん、おお、その頃にだな、ハタンガを訪ねて来た一行が居ってのう~、他ならぬ『森王』一行、ダソス・ダロスとその随行員達じゃったんじゃよぉ』
言葉を返すのはまたしてもペトラである。
『ああ、そんな事もあったわね、アタシ、グフングフン、アリスはダソス・ダロスとの折衝(せっしょう)でつまらない日々を重ねていた筈(はず)だけど…… ヴノは何をしていたのよ、随行員の内の誰かと何かあった、そう言う事なのかしら?』
ニヤリ、そんな擬音を感じさせる表情で微笑みを浮かべたヴノは言葉を続ける。
『そう、その通りじゃぞい! あの百日を越える訪問の間に、ワシは随行員の面々とな、お互いの知見を交換し合っていたのじゃよ! 次代の『聖王』候補筆頭じゃったペジオちゃん、既に『鍛治王』っぽかったブラックスミスのお兄ちゃん、それに『鬼王』を目指して日々鍛錬に勤(いそ)しむ、それはそれは美しいズィナミちゃん、ズィナミ・ヴァーズと言う娘…… 彼らと友誼(ゆうぎ)を結んだんじゃよぉ~、懐かしいのぉ~』
そう言うと両の眼を天に向け、全身を小刻みに震わせながら目尻に涙を湛え始めたではないか。