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私
の名前はレイネシア。
名門貴族アカツキ家の長女にして〈円卓会議〉評議員の一人でもある。
私の所属する〈円卓会議〉とは、アキバの街の自治組織の一つだ。様々な問題を抱えて閉鎖的な状況にあった街やギルドの間に入り、その問題を解決することで信頼を勝ち取ってゆくという方法で発展してきた組織である。
もちろん私は〈円卓会議〉の議員として日々活動してはいたのだが、最近は別の仕事が増えてきていて忙しくなっていたのだ。
それは……私が領主を務める領地──シロエの領地の開発事業であった。
◆
「シロ先輩っ! 見てくださぁいっ!」
「ん? どうしたんですか?」
「じゃーん♪」
「おおおっ!? これは凄いですねえ」
「ね、すごいでしょう? これ、私たちが作ったんですよぉ~」
「そういえばミノリさんたちはどうしてこの街に来たんです?」
「えっと……ちょっと探し物をしていてね。もう見つかったんだけど」
「そうなんです? よかったですね!」
「うん。それでこれから帰ろうと思ってたんだけど、そろそろ暗くなりそうだし今日はこの宿に泊まっていこうかなって思ってさ」
「わかりました! じゃあ私が案内しますよっ!」
「ありがとう。お願いできるかな?」
「任せてください! 私に任せてくだされば安心ですよ!!」
「あはは……よろしく頼むよ」
◆
「はい。到着しましたー」
「いやぁ、すごい立派なところだねぇ」
そこは宿屋というよりはホテルといった雰囲気の場所だった。白を基調とした建物で、清潔感がありながらも落ち着いた高級感のある内装をしている。
「ここは『月光』っていうんですよ。昔はもっと賑やかだったんですけどね……」
そう言って彼女は少し寂しげに笑った。
その日はいつも通りの仕事を終えて帰路についていたのだが、なんとも運の悪いことに雨に降られてしまったのだ。
幸いにも近くに洞窟があり、そこでしばらく雨宿りすることにしたのだが、外から見たときは気がつかなかったものの、中はかなり広くて奥行きがあった。
しかし、奥に行くにつれて次第に天井が低くなり、ついには人が二人並んで歩けるかどうかといったところまで来てしまっていた。
さらに言えば、先天的に視覚障害を患っており、そのため普段は白杖を使っている(これは孤児として施設に預けられた際に取り上げられたもので、現在は彼女にとって唯一の宝物)。そのせいもあって、視力に頼ることのない聴覚や嗅覚に優れているが、同時にそれが災いして危機察知能力が低下しているという弱点もある。ただし本人はそのことをあまり気にしていないらしく、むしろ音を聞くことや匂いを感じることに喜びを覚えているため、それを活かした戦術を好む。
彼女は、人間ではない。
それは、彼女が持つ特殊な性質のためだった。
そもそもの出自は不明。物心ついた時からすでに孤児として一人で生きていた模様。
その特殊な能力ゆえ、幼少期から多くの大人や子供達に狙われてきた過去を持つ。それ故に人間不信気味になっており、他人との関わりを避ける傾向にあった。そのためか、人見知りをする上に内向的で、他者との交流に消極的。しかし一方で好奇心が強く、自分の興味のあることは積極的に調べようとするタイプでもある。
その一方で、非常に仲間思いでもあり、仲間のピンチを見過ごすことができず助けに行くことが多い。また、一度信じたものに対してはどこまでも一途になる性質も持つ。そうした人間性ゆえに、彼女を信頼して共に行動するものも多い。
幼少期の体験により、「自分が誰かを守ること」に強いこだわりを持っている節があり、それがレグへの執着にも繋がっていると思われる。ただそれは強迫観念に近いところがあるため、何かしらのきっかけがあれば簡単に崩れてしまいそうな脆さも持っている。
ちなみに、彼女は本来ロボットであるため飲食は基本的に不要だが、なぜか食べ物に関しては異常なまでに好きという不思議な特性を持っており、特に甘いものが大好き。ただし味覚そのものはないため、美味しく食べることはできない。
「……ふぅん?」
「あーっ! ちょっとぉ!」
「……もうっ。そんな顔しないでよ、仕方ないじゃない」
「だってぇ~。ねぇ、わたしたち友達だよ? なのになんで教えてくれないの!?」
「い、今はまだダメって言ったでしょう? それに、まだあなただけじゃないもの。他の子達にも言わなくちゃいけないのよ」
「でもぉ~」
「ほら、早く寝ないとダメだよ?」
「えへへ~♪ありがとね!あーちゃん!」
(^ω^)
「わぁい!やったー!!」
「……(なんですか?これ)」
「……(本当なのかしら?)」
「……(私達と同じ機械人形なのに……本当に人間みたい)」
「……(でも、彼女は危険よ)」
「……(どうして?こんなにも優しくて良い子じゃない)」
「……(わからないけど、嫌な予感しかしないのよ……それに、もしそうだったとしても、私たちには何も出来ないもの……彼女を止めることなんて出来るわけがないわ……だから、もう放っておきましょう……私たちはただの機械人形なんだから……)」
「……(それもそうよね……」