「手を出すと言うことは、相手にその感情が無いのに、好きだと勘違いして手を出してしまうこと。所謂、先生側の片思いと言うこと。」と白河先生は言った。
確かにそうだ。
世間では、先生と生徒が恋愛すること自体が悪いという人を沢山見かけるけれど、恋愛と手を出す事は全くの別事。
私が言うのも悪いけれど、みんな、恋愛と手を出すことを立派に履き間違えている。
「でも、凛さんは毎日毎日にこにこ笑顔で話しかけてくれてたから、好きだろうなって思って。」
「好きバレしてたんだ!私」
「でも、僕にとってはそれが良かったんだよね」
白河先生は、にっこりと微笑んだ。
そう色々話していると、私にはある1つの夢ができた。
何も出来っこない私だけど、この関係に対しての世間での誤解を無くし、今、この恋愛を必死に頑張っている先生と生徒達に勇気を与えたい。
そう思い、早速白河先生にその夢について伝える。
先生は優しい笑顔で、「おおっ!素敵!そんな夢を持つなんて、凛さんは本当に良い人だね!」と口に出す。
私は白河先生が認めてくれた事が嬉しく、嬉しさで自然と口角が上がってしまった。
「凛さんがすることは、僕が全力で応援してあげるからね。やりたい事はどんどんやってみて。人生は一度きりだから。」と白河先生は言いながら頷いた。
私もにっこりと笑顔で静かに頷き、「だね。」と言った。
白河先生の言うことは、とても心に響く。それに 優しい声と笑顔が加わっており、さらに素敵に思える。
4月下旬。
白河先生は学校の場所を決めたらしく、 今日はその場所へ連れて行ってもらうことにした。
車を少し走らせ、ある住宅街の中の坂を登っていく。
景色がとても良く、町並みがとても小さく見える。夜景が綺麗そうだ。
車を降り、「ここだよ。予定の場所。」と白河先生が指差す先には、青々とした草が生えた草原が広がっており、遠くに山々が見える、気持ちが晴れやかになる場所。
とても心地よい風がさっと吹いている。
「学校って言っても、平屋の小さな校舎を建てようと考えてるだけなんだけどね。」と笑いながら先生は言う。
こんなに景色が綺麗で、空気が澄んでる場所は探してもあまり無いと思う。
白河先生の頑張りが垣間見えた瞬間だった。
「もう工事は頼んでるから、7月頃には始まると思うよ」
「あとは校名を決めなきゃ。」
「うん、もうそろそろ決めないと…」と白河先生は呟いた。
家に帰ると、私は自分の和室で校名を決めることにした。
頭の中でイメージを膨らませ、言葉や文字を並べる。
その中から、最もイメージ通りの文字や言葉を取り、名前を創る。
2時間ほど考えた挙げ句、「……よし…これだ…。決まった」
私は部屋を飛び出し、夕食を作っている白河先生の元へ向かい、 「校名決めたよ」と言う。
先生は、「おっ!決めたんだ。何て名前?」
「おおっ!素敵!凄い僕のイメージ通りの名前!」と先生は満面の笑顔を浮かべ、とても喜びで満ちていた。
「夜空って…星が輝いていて、月が綺麗じゃん?だから、みんなが輝けるように。そして、月のような優しい人が居るよって意味を込めて。」
「凛さんらしいね。ちゃんと意味も素敵!」と先生は褒めてくれた。
その後に食べた夕食が普段以上に美味しく感じた。
褒められたからかな。
その1週間後、私の高校のスクーリングがあり、担任の先生から進路希望を聞かれた。
私は「進学も就職もしません。大切な人と叶えたい夢があるので。」と言う。
「叶えたい…夢?」
「詳しくは言えません。」
おかしく思われたり、他の進路を勧められるのが嫌なので、そうとしか答えることが出来なかった。
「まぁ、山水さんが叶えたい夢は分からないけど、応援してますよ。 」と担任は最終的に言ってくれたので、少し不安が和らいだ。
家に帰り、白河先生に今日の事を話す。
「確かに、彼氏と学校創ります!と言うのは恥ずかしいしね。凛さんの言葉は正解かも」と言ってくれた。
そして1ヶ月後。
白河先生が「そろそろ学校案内パンフレットを作らないとね」と言ってきた。
それはそうだ。
パンフレットが無いと、生徒が集まらないので、せっかくの学校の意味がなくなる。
「私がデザインしたいな」と言う。
絵を描くのが趣味だし、中学の頃から美術の成績が一番良かったから。
「うん。でも僕が決めても良い?」と白河先生が言ってきたので、「じゃあ…一緒に考えようよ」と私は言い、考えることにした。
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