「こんな感じが良いかな?」と私はデザインした紙を見せた。
「おっ!これは良いね!凛さんさすがです!」と白河先生は予想通りの良い反応を見せてきた。
私達は早速作り始めた。
広告会社に頼まずに、完全に2人で手作りする。
デザインした紙を清書し、2人で撮った写真を貼り、カラーコピーをした。
出来上がったパンフレットには、「優しさが集まる小さな学校」と書いてあり、青空の下、笑顔で写る私たち2人の姿があった。
「これは、とりあえず僕がいた学校に何部か郵送してみるからね」と先生は言い、一緒に近くのポストに入れに行った。
その3日後。私の誕生日が来た。
自分でもあり得ないけど18歳。成人した。
「おめでとうございます!凛さん、成人したね」
「自分でもまだ自覚してないよ。」と私は爆笑しながら返事した。
白河先生からのプレゼントは、可愛いヘアゴムとヘアピン、茶色と白のチェック柄のトートバッグだった。
「めっちゃ可愛い!ありがとね!」
「そんなに喜んでくれて嬉しいよ!こちらこそ」
白河先生はにこにこと優しさが滲み出る顔をしていた。
私の反応が相当嬉しいのだろう。
その後、先生がケーキ屋に特注で頼んでいたという誕生日ケーキを取りに行き、広い公園で食べた。
ケーキはチーズケーキで、上に、happy barthday Rin とホワイトチョコの丸い板にいちごチョコのペンで書いてあった。
「こんな所でケーキを食べる人って居るのかな?」
「う〜ん…居るっちゃ居るんじゃない?」などと言いながら食べた。
人目は凄く気になるけれど、爽やかな初夏の風が私と先生の髪を優しく揺らしており、とても良かった。
夏休み前。
白河先生に久しぶりに中学校から電話が掛かってきたらしい。
「なんか、二学期の10月にある3年生の進路説明会に来てもらいたいらしくてね」と白河先生は言ってきた。
「早速パンフレットのお陰なのかな?」
「うん、多分ね。僕もそうだろうなって思ってる」
早々とパンフレットの結果が出て来ていて嬉しい。
「でも久々の人前での発表か…。緊張する…。でも、今すぐじゃないのが唯一の報いかな?」
約1年ぶりに生徒を前にしての発表。
元々緊張しいの白河先生なら不安になるのも当然のこと。
私がなにかしてあげられると良いんだけど…。
夏休みに入ると、私たちは毎年の如く、旅行に出かけた。
温泉に入ったり、登山したり、色んな場所を観光したりと、白河先生と共に笑顔で過ごせた楽しい2日間だった。
二学期になり、10月。
進路説明会の前日の夜。
白河先生は気を紛らわせるためなのか、私に沢山話しかけてくる。
ここの山に今度登山したい。だとか、凛さんが夢に出て来て嬉しかった!とか色々話してきた。
私は、白河先生の事が好きなので、特に気にならなかった。
というより、逆に嬉しかった。
そして当日。
私は白河先生と共に、中学校へ向かった。
説明会は体育館であるらしく、そこに入ると、校長先生らしき人が私たちに話しかけてきた。
「白河先生、最近どうですか?なんか凄いことしてるみたいだけど…?」
「最近は…良い感じです。凄いこと…なのでしょうか…?」
「この方は…?」と校長先生らしき人が私を見た。
「私の…大切な人です。」と白河先生は伝えたので、私は密かに嬉しくなった。
しかし、校長先生らしき人は意味が分からなそうな態度を見せていた。
説明会は、近隣の高校などから7校程度来ており、私たちは最後に紹介することになっている。
待っている間は、白河先生と他の学校のパンフレットを見たりしていた。
約1時間経った頃、私たちの番が来た。
白河先生が説明担当で、私はパソコン操作(スクリーンに映す)担当。
白河先生と2人、そっと生徒たちの列の前に行く。
「皆さん、こんにちは。始めまして。」と言う白河先生の言葉と共に始まった。
「始めましてと今申し上げましたが、私、昨年の二学期前半までは、ここの中学校で先生をしておりました。」
生徒たちは「この先生、1年生の担任してたらしいよ」とか「なんか午前中だけ来てたの見たことある」などと様々な言葉が飛び交っている。
白河先生は案の定、何も言えなくなってしまった。
しかし、「皆さん、高校となると、とても厳しいイメージがあると思います。ですが、この’夜空の学校’は、みんなが笑顔で優しく過ごせる小さな学校です。」と言った。
白河先生は凄く 頑張っている。
私だったらすぐにへこたれてそうだな…。
私が画面を変えると、「夜空の学校は、このように景観が良く、自然もあり、とても過ごしやすい学校となっています。」と白河先生は伝えた。
その後も、夜空の学校の良いところを沢山紹介した。
生徒たちも自然と聞き入っているようで、とても良かった。
説明会が終わり、学校を出ると、「お疲れさま」と私はすぐに白河先生に言った。
先生は何も言わずに、優しい笑顔で頷いてくれた。