「…」
俺は,動かなくなった死体を見つめる。
ここは拷問室だと言うのに,血生臭くない。
あいつが掃除をしているのか。
俺の鼻が壊れているのか。
どちらかはわからなかったが,前者の方がいいなと勝手に思った。
ゆう
あいつは俺の先輩だ。先輩だと言うのに,全然先輩っぽさがない。
どちらかと言うと後輩とか…妹?みたいな
話したことはあまりないが,たまにあぁやって
手紙を俺の部屋に残していく。
あいつは「拷問官」だと言うのに人を殺せない
直接話したことはない
だって,どこにいるかわからんから。
部屋に行ってもいないし,ご飯の時間にもいない。
「やっぱり,気になるんよなぁ」
また今日,あいつの部屋に行ってみるか。
ゾムさんがあの部屋から帰ってったことを確認して,私は部屋に入る。
白色の部屋に,お花が一輪。
壁には,色々な器具が揃っている。
それらは少し赤茶色が付着しているが
新品同様の綺麗さだ。
目の前には広がる血。
最初の頃は,それはもうすごいぐらい血が飛び散っていたのに。
最近は気を使っているのか,もう飽きたのか。
飛び散る範囲が小さくなったと思う。
ゾムさんの優しさだと思いたい。
死体を見るのは慣れた,最初の頃は全て
ゾムさんに任せっきりだったのを,このままじゃダメだと決意し,自分で頑張っている。
『…臭すぎ』
死体は袋の中に入れて,桜の木下に埋める,
とある本によると,桜というのは
人の死の養分を吸って成長するらしい。
せめて,死んでからは綺麗な花の下で眠って欲しい。
そして,桜と共に綺麗に散って行ってほしい。
そう心の底から思い,桜の木下まで運んでいく
埋めてきた。我ながら頑張った。
花を一輪添えて,手を合わせる
『安らかにお眠りください。そして,ごめんなさい』
仕事とはいえ,私は人殺し同様のことをしてしまった。
死は,感じるのが容易く。とても恐ろしいもの
今頃,私は色々な人に恨まれていることだろう
「末代まで呪ってやる」
こんなセリフ,聞き慣れた。
私は拷問室へ戻り,部屋にこびりつく血の匂いを擦った。
拷問室の掃除が終わった。
自分は綺麗好きだと思う。潔癖症だと思われるほどに
これほどまでに清潔感のある拷問室はないぞぉ
そう自画自賛してつつ,あたりに目をやる
そこには、オレンジ色の空が広がっていた。
『ご飯ッ!』
私は急いで,食堂へ向かった,
食べなくてもいい,そう思われるかも知れない
なんなら私も思ってる。
だけど違う,そこじゃないのだ。
わざわざ私のためだけに時間を割いて作ってくれたシェフの皆様にご迷惑がかかる。
人のために作ったご飯が「いらない」と言われたら,みんな悲しいでしょ?
だから,食べないと
ドンッ,という大きな音が食堂に響く。
『ごめんなさい、遅くなりました…!』
今日一番の声だっただろう。
私の中では出した方なのだ,マジで
gr「お,おぉ…遅かった,な?」
『…ぇ』
目の前にいたのはあんぐりとした幹部様
口が閉まらない者,あいつは誰だという目
怖い
反射的に私はそう思った。
『…ごめんなさ,』
zm「…ゆう,さんやろ?」
背後から背中を小突かれた。
恐る恐る後ろを振り返ると,目元が見えないほど深く緑色のパーカーを被った人がいた。
『ち,ちが…』
正常な言葉を発せないまま,私は食堂から勢いよく出て行った。
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