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CASE 四郎
椿の傷が治り、緑頭の男は傷を負った。
どうなってるんだ?
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!!」
ビチャッ!!
佐助の口から、大量の血が吐き出された。
「佐助!?大丈夫か!?」
伊助が慌てて佐助に近寄ろうとしたが、椿が止めた。
「おい、伊助。お前の仕事は、何だ?佐助を心配する事じゃないだろ?」
「で、ですがっ…!!」
「はぁ、お前を佐助と居させ過ぎた。」
椿はそう言って、自分の太ももの傷に触れた。
ブシャッ!!
太ももの傷が治り、伊助の太ももから血が噴き出す。
「ガハッ!!」
ビチャッ!!
再び、佐助の口から血が吐き出される。
予想だが、椿は自分が負った傷を反射しているのか?
だとしたら、佐助が血を吐いたのはJewelry Wordsの反動…。
「ッチ。まだ、Jewelry Wordsの使い方が、分からないな。」
緑頭はそう言って、血が出ている肩に触れた。
コイツ、Jewelry Wordsって言ったか?
「つ、椿様?」
「伊助、お前は邪魔だ。」
ドンッ!!
「ヴッ!!」
椿は伊助の腹を蹴り上げ、佐助から引き剥がしていた。
プップー!!!
車のクラクション音が、新宿御苑の中に響き渡る。
椿の背後から一台の車が近付き、俺達と椿の間に停車した。
「車に乗り込む気か。」
カチャッ。
俺はトカレフTT-33を構え、車に向かって引き金を引く。
パシュッ、パシュッ、パシュッ、パシュッ!!
キンキンッ!!
防弾仕様の車か、弾が弾くな。
「それじゃあね、七海君は頂いて行くよ。」
七海を抱き上げた椿が、車に乗り込もうとした時だった。
プップー!!!
再び、クラクション音が響き渡る。
飛び出して来た車は見慣れた車で、運転席には一郎がいた。
どうやら、一郎が車で新宿御苑の中に入って来たようだ。
椿と佐助はそそくさに車に乗り込み、伊助も車に乗り込んだ。
「一郎、ナイスタイミングだねー。」
「乗れ!!椿達を追う。」
一郎はそう言って、後部座席のドアを開けた。
「あ、お兄さん達も乗る?七海の知り合いみたいだし。」
「当たり前だ、マスターを助ける事が最優先事項だ。」
「だよね。君達は、七海の大事な人みたいだしね。」
三郎はそれだけ言って、後部座席に乗り込んだ。
俺は助手席に座り、後の2人は三郎と同じく後部座
席に座った。
ドアが閉まった事を確認した一郎は、パーキングからドイラブに変え、アクセルを強く踏んだ。
ブンッ!!!
キキキッー!!!
車体が大きく揺れながら、椿の乗った車を追い掛ける。
ドゴーンッ、ドゴーンッ!!
カチャッ!!
前の車の座席の窓が空き、椿会の組員の男が銃を構えながら、こちらを向いた。
俺は助手席の窓を開け、体を少し乗り出し、トカレフTT-33を構え引き金を引く。
パシュッ、パシュッ。
頭の中に、組員の男がどのような行動を取って来るのか、映像として流れて来る。
三郎のJewelry Wordsを使えるようなったのか?
ブシャッ!!
ヘッドショット、確実に当てて行く。
「アンタ、射撃が上手いんだな。」
金髪の男が俺を見て、言葉を投げ掛けた。
「当たり前でしょ?四郎は腕が良いんだから。」
ツゥッ…。
「おい、鼻血出てんぞ。」
緑頭の男は、三郎の鼻を見ながら言葉を投げ掛けた。
多分、俺が三郎のJewelry Wordsを使ったからだろう。
「悪い、三郎。俺が使ったからだ、まだ耐えるか。」
キキキッ!!!
新宿御苑を抜けると、俺達の車を挟むように、黒い塗りの車が飛び出して来た。
「俺なら平気だよ、四郎。四郎の為に、手に入れた力なんだから。」
「加勢する。」
カチャッ。
金髪の男は窓を開け、体を乗り出し、LCT PP1901 VITYAZを構えた。
「腕は良いんだろうな、金髪。」
「金髪って…。俺にはちゃんと名前があるんだけどっ!!」
パシュッ、パシュッ、パシュッ!!
ブシャッ、ブシャッ!!
「ぐあっ!!?」
ドゴンッ!!
左側の車の窓から体を乗り出していた男が、頭を撃たれ、道路に転がり落ちる。
「興味無い。目の前の敵を殺す事だけに集中しろ。」
頭の中に再び、男達が次に起こす行動が映像として流れて来る。
狙いを定め、銃口を固定してから弾き金を引く。
パシュッ、パシュッ、パシュッ!!
ブシャッ、ブシャッ、ブシャッ!!
「ぐはっ!!」
「あがっ!?」
ドゴンッ!!
男達が次々と道路に転がり落ちる。
「ゴフッ!!」
「おい!?大丈夫か!?」
一郎の大声が聞こえ、車に戻り座席に視線を向けた。
すると、三郎の口から血が吐き出されていた。
「大…、丈夫。」
「悪い、使い過ぎた。」
「怪我は?してない?」
「あぁ、悪い。三郎、お前の力を使い過ぎた。」
三郎の体を壊す訳にはいかない。
「そんなに謝らないでよ。おかげで、数をかなり減らせたじゃん?」
「しっかり掴まれ、揺れるぞ!!」
キュインッ!!
一郎はそう言って、ハンドルを大きく回す。
グラッと車内が揺れる変わりに、車は次々と他の車線を走る車を追い抜かす。
前の車は車線を変更しまくり、俺達を近寄らせないように距離を引き離そうとしている。
だが、一郎は負けじとアクセルを踏み、スピードを上げながら距離を詰める。
キュインッ、キュインッ!!!
道路にタイヤの擦れる音、一郎はハンドルをただ回し続けた。
耳に嵌めたインカムに指を当て、一郎は話し出した。
ボスに今の状況を報告しているようだった。
その時、伊助が窓から体を乗り出して、何かを投げて来た。
カコンッ。
俺の脳裏に映像が流れ込む。
「一郎、避け…っ。」
その瞬間、俺達の目の前が真っ白に光り、物凄い衝撃がした。
ドゴォォォーン!!!
CASE 兵頭雪哉
白い雪が積もる中、今でも鮮明に覚えている。
9歳だった四郎がナイフを持って、ボロボロの姿のまま、敵対していた組の玄関の前に立っていた。
顔には殴られた後、左足は本来向かない方向に向いており、立っているのが奇跡のような状態だった。
俺と伊織は四郎を見て、驚いた。
「お前…、1人で殺ったのか。」
「ボス、俺…。後は、誰を殺せば良い?どうしたら、ボスの役に立てる?」
「っ…。」
ガバッ!!
俺の問いに答える四郎を抱き締めた。
この子はただ、俺に褒められようとしてやった行動だ。
まだ9歳の子供が、どうしたら喜ぶのか考え、出た答えがこれだ。
こうさせたのは、俺だ。
俺の命令を忠実に聞くようにしたのも、俺だ。
無知な子供を裏の世界に連れて来たのも、俺だ。
全ては自分の復讐を達成する為。
だが、四郎の顔を見たら抱き締めずにはいられなかった。
この子は、俺の息子とリンクする部分がある。
四郎と息子を重ねて見てしまう時がある。
何て、健気なんだ。
どうして、優しくしない俺に健気になってくれるんだ。
「ボス?どうしたの?」
四郎の声を聞き、ハッと我に戻る。
ジッと見つめる四郎は、俺からの言葉を待っていた。
「良くやった。」
そう言うと、四郎はフニャッと笑った。
俺にはこの子に、危ない事をするなと言う資格は無い。
四郎を拾ったのは、必然的だったと思う。
ボロい団地の一室で、母親に首を絞められていた姿が目に焼き付いた。
死ぬ事を怖がった瞳では無く、死を受け入れた顔だった。
四郎は、俺の言う事を聞き、俺の予想を超えて来た。
今、目の前にいる四郎は、1人で大人数人を殺した。
俺は、この子を悪魔に育ててしまったと…。
もう、後戻りは出来ないのだと悟った。
「頭。」
伊織の声を聞き、閉じていた瞳を開けた。
車で移動中の所、少し眠ってしまったようだった。
「どれくらい寝ていた。」
「15分程です。」
「そうか。」
俺は煙草を取り出し、口に咥える。
「あの時の夢を見た。四郎が、雪の日に初めて人を殺した日の事を。」
「頭、あまりご自分を責めないで下さい。」
「責めるさ。子供達の未来を奪い、悪魔に育ててしまったからな。」
「…。頭、貴方がしている事は世間からしたら、責められる事をしてる。だけど、四郎達からしたら…。貴方は救世主だ。あの子達は、頭の為に良く動いてくれています。悪魔に育てたなら、俺にも責任があります。殺しを教えたのは、俺ですから。」
伊織は静かに車を走らせながら、言葉を吐く。
「頭、先程の事を気にしておられますか?」
「まぁな、モモちゃんを怒らせてしまったからな。」
先程と言うのは、ほんの数分前の事だ。
兵頭会本家ー
六郎を呼び出し、話しを始めようとした時だった。
ガシャーンッ!!!
廊下から大きな物音と騒ぎ声がした。
「お、お嬢!?お、落ち着いて…、グァァァ
ア!!!」
「モモちゃんに何かあったのかも…。ボス、すみません!!」
バンッ!!
六郎はそう言って、襖を乱暴に開け部屋を出て行った。
「頭、様子を見に行った方が宜しいかと。」
伊織はそう言って、俺のジャケットを持った。
「あぁ、行くぞ。」
俺と伊織は部屋を出て、モモちゃんの様子を見に行った。
部屋に向かうと、目を疑う光景が広がった。
床や壁、廊下に飛び散った血の量は異常なものだった。
脱ぎ散らかされたスーツがちらほらあり、スーツの下には血溜まりが出来ていた。
血溜まりをよく見ると、肉片の様な物が落ちていた。
これは…、組員達なのか?
「うわぁぁぁぁぁああん!!!」
「モモちゃん、大丈夫だよ。大丈夫、大丈夫。」
六郎は大声で泣くモモちゃんを抱き締め、宥めていた。
部屋に目を向けると、アルバムを隠していた箱が出されており、アルバムの数冊広げられている。
それから、ぐちゃぐちゃに壊れた玩具達。
モモちゃんはこれを見て、様子がおかしくなってしまったのか?
だとしら、俺が何か言わなきゃければ。
「モモちゃん、アルバムを見たんだね。それは…。」
部屋の中に足を踏み入れ、モモちゃんに近寄ろうとした時だった。
ドンッ!!!
誰かに体を押された様に、体が後ろに吹っ飛んだ。
ドサッ!!
部屋から追い出され、膝を床に着けた。
「頭!?大丈夫ですか!?お怪我は…、頬に擦り傷が…。」
伊織は俺の頬を見て、驚いていた。
「大丈夫だ、心配ない。」
「来ないで、来たら殺す。」
キッと、俺を睨み付けるモモちゃんの瞳には憎悪があった。
「モモちゃん…、どうしたの?」
「私を売り飛ばしたのは、おじさんでしょ。」
その言葉を聞いて、心臓が強く脈を打った。
ドクンッ!!
「え、え?ど、どう言う事…ですか?ボ、ス。」
六郎は顔を真っ青にしながら、俺に尋ねる。
「おじさんは、私を何で売ったの。」
「それは…、君を守る方法がそれしかなかったんだ。」
「何で?何で…、それしかなかったの?私が、私が…、どんな思いをしたか分かる?」
「モモちゃん…。」
「ボス、モモちゃんの言ってる事が本当なら…。ちゃんと、理由があるんですよね?ボスは、そんな事をする人じゃないですから…。」
六郎は力強く、モモちゃんの体を抱き締める。
「椿から守る為には、君の行方を不明にする必要があったんだ。手荒な真似だとは、重々承知だった。だが、必ず迎えに行くと…。」
「大人の言う事なんて、信じない。」
歩み寄ろうとしても、大きな壁が次々と立ちはだかる。
モモちゃんは、俺を拒絶した。
そうされても当然の事をしてしまった。
玩具を沢山買って、与えても、この子は喜ばない。
心の傷を癒す事なんて、出来ない。
「本当は、いらなかっんだ。私の事、だから売ったんだ。」
「それは、違う。モモちゃんは、俺は君の事をいらないなんて、思ってないよ。君には、幸せになって欲しいと願っている。」
「四郎はどこ。」
モモちゃんはそう言って、俺を再び睨み付ける。
「一郎達と一緒に、七海の所に向かっている。」
「また、四郎に危ない事をさせるの?」
「そんな事はさせないようにする。」
「確証が無いから、曖昧な言葉しか言えないんだ。四郎に何かあったら許さない。椿がどうとか、どうでも良い!!私は、四郎と六郎達が居れば良い!!!他には何も要らない。だから…、四郎を連れて来てよ…。」
モモちゃんはポロポロと、瞳から涙を落とした。
「モモちゃん…、大丈夫。四郎はちゃんと、帰って来るから…。七海も皆んなも、モモちゃんの所に帰
って来るから。泣かないで、モモちゃん。」
「うぅぅ…。」
六郎が頭を撫でるとモモちゃんは泣き出した。
こうさせたのも、俺の責任だ。
俺の復讐は、止まる訳には行かないんだ。
「伊織さん、実は…。」
組員の1人が伊織の耳元で、何かを囁いていた。
「分かった。頭、星影が死にました。」
「…、そうか。」
「それから、一郎達が椿の車を追跡しているそうです。どうしますか?」
「行くぞ、伊織。六郎、モモちゃんを頼む。」
俺はそう言って、モモちゃん背を向けた。
そして、俺と伊織は一郎達と合流すべく、車で向かっていた。
プルルッ、プルルッ、プルルッ。
スマホの画面を見て、着信相手を確認すると一郎からだった。
通話ボタンを押し、スマホを耳に当てた。
「ボス、お疲れ様です。今、椿の車を追跡してい…。」
「一郎、避けっ…!!」
一郎の声を四郎が遮った瞬間、爆発音が聞こえた。
嫌な予感がした。
「伊織、急いで向かってくれ!!」
「分かりました。」
伊織は一郎のインカムのGPSをマップに移し、猛スピードで車を走らせた。
俺達のいる場所から、一郎達のいる場所はそれ程、遠くはなかった。
数分が経った頃、一郎達のいる場所に到着した。
周りには爆破に巻き込まれた車から、火が噴き出し
ておいり、灰色の煙が立ち込めていた。
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ。
俺の頭に四郎と息子の顔が過った。
「四郎…、拓坊…。」
「頭!?」
急いで車から降りて、俺は煙の中に入った。