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#Paycheck
ゆゆゆゆ
ゆゆゆゆ
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ソファの上で、ようやくキスが途切れた。
エリオットの呼吸はまだ乱れている。
胸が上下して、息がうまく整わない。
さっきまで頭の中が真っ白だった。
でも――
少しずつ。
少しだけ。
意識が戻ってくる。
「……は……」
息を吸う。
チャンスの顔がすぐ近くにある。
視線が合う。
その目。
さっきまでの強い視線。
それを見た瞬間、エリオットの胸がぎゅっと締めつけられた。
ドクン。
今度はさっきとは違う鼓動。
頭がはっきりしてきたのに、胸の奥が妙に熱い。
「……チャンス」
小さく名前を呼ぶ。
声が少し掠れている。
チャンスはまだエリオットを見ている。
何か言いかけたみたいに口を開きかける。
でもその前に――
エリオットの手が動いた。
そっと。
チャンスの背中に回る。
服越しに触れる背中の感触。
温かい。
その瞬間。
胸の奥で何かがはっきりした。
(……あ)
自分でも分からない感情。
でも。
とにかく。
離れたくない。
そんな気持ちだけははっきりしている。
エリオットはそのまま腕に力を込めた。
ぎゅっと。
チャンスを抱き締める。
少し強く。
まるで逃げないように。
チャンスが一瞬止まる。
完全に予想外だった顔。
「……エリオット?」
でもエリオットは何も言わない。
ただ抱き締めている。
顔はチャンスの肩の近く。
呼吸が少し落ち着いてきた。
それでも胸はまだ速い。
でも今は。
さっきみたいな混乱じゃない。
ただ。
安心みたいなもの。
エリオットが小さく呟く。
「……なんか」
少し笑う。
「変な感じ」
チャンスはまだ動かない。
抱き締められたまま。
「……何が」
低く聞く。
エリオットは少しだけ顔を上げる。
目が合う。
さっきまで煽っていた顔じゃない。
少し柔らかい目。
そして、正直に言った。
「離れたくない」
チャンスの表情が止まる。
エリオットはまた少しだけ腕に力を込める。
「なんでか分かんないけど」
少し照れたみたいに笑う。
「今」
小さく息を吐く。
「チャンスのこと……」
少しだけ言葉を探す。
それから。
ぽつりと。
「すごく愛しい」
静かな部屋。
チャンスは完全に黙っている。
エリオットは気づいていない。
さっきまで理性と戦っていた男に、
今とんでもない言葉を投げたことを。
ただ。
まだ腕は離さない。
むしろ。
少しだけ顔を近づけて言う。
「……もう少し」
小さな声。
「このままでいい?」