テラーノベル
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カツン、カツン、と静まり返った廊下に、頼りない足音が響く。
「……はぁ、……っ、」
イギリスは自分の胸元を強く掴み、浅い呼吸を繰り返していた。額には嫌な汗が滲み、視界が酷く歪んでいる。
暗い。どこを見渡しても、ただただ暗い。
目を閉じれば、あの忌まわしい過去の記憶が、濁流のように押し寄せてきて脳裏を侵食していく。痛い。胸の奥が、引き裂かれるように痛かった。
普段なら、持ち前のプライドと冷静さで心の奥底に鍵をかけ、見ないふりができるはずのトラウマ。それが、悪夢という最悪の形で牙を剥いた。
いつもなら完璧にこなしているはずの「親」としての自分も、指示のうまい「優等生」としての自分も、今はどこかへ消え去ってしまったかのように自信が持てない。ただただ、冷たい闇に呑まれそうで、震えが止まらなかった。
「……あまり見たくない夢……でした、」
掠れた声で、ぽつりと呟く。
その時、ふと自身の左耳に触れた。ひんやりとした金属の感触。それは、いつだって喧嘩ばかりしている、けれど自分の人生の最初期からずっと隣にいる、あの男の国の三色旗。
「フランス……起きて、いるのでしょうか?」
すがるような、けれどどこか確信めいたものを求めて、イギリスは重い足取りを進めた。
自分の部屋を出て、長い廊下を歩く。夜の静寂が、今のイギリスには酷く恐ろしいものに感じられた。右目のモノクルは外したままだ。ただでさえ近視でぼやける視界が、涙と冷や汗のせいで余計に曖昧になる。壁に細い手を突き、冷たい感触を頼りに一歩、また一歩と進んでいく。
いつもなら絶対に他人に見せない、ひどく無様で、弱りきった姿。
けれど、あの男の前でだけは、不思議とこれを見せることができた。向こうが弱って机の下に隠れた時、自分が無言で手を差し伸べるのと同じように。
ようやく、目的の扉の前にたどり着く。
イギリスは震える指先を伸ばし、フランスの部屋のドアノブに、そっと手をかけた。……
紳士たるものノックぐらいしろ、お前はこの国の跡継ぎだ
イギリス「っ……ええしなくては……私は……大英帝国の
末裔ですから」
こん、こん、……こん
頼りない非常に頼りない3回のノック
向こうからは返事がない寝ているのだろう
イギリス「……」
ガチャ
イギリス(フランス……は)
フランス「すぅーすぅー」
寝ているこの部屋の家主は
それもそのはず今は3時夜はまだあけない
イギリス「……」
すっ
イギリスはフランスが寝ているベットに身を委ねた
……
イギリス「っ、ふっ、うっ」
なぜ涙が出るのでしょうか
何故こんなにも泣いているのでしょうか?
教えて、ください
フランス。
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コメント
1件
読み終わりました。第1話からもう、胸がぎゅっとなる描写ですね……。 「親」や「優等生」としての仮面を剥がされたイギリスが、無意識にフランスの元へ足を向ける——プライドの高い彼が「ノックすらままならない」弱さを見せる相手がフランスだけ、という関係性の描き方がとても好きです。3回のノックの間の取り方にも、迷いと切実さがにじんでいました。 続きでフランスがどう反応するのか、気になって仕方ないです。