マンションの郵便受けに鍵を入れ、横長の投入口を見つめながら、ほう、と一息吐いた。
表札に書かれた彼女の姓を、つ、となぞるように指を這わす。
「その本気に見合うだけのものが私にないなら、許されはしないわ」
ふ、と緩んだ口角を、誰に見られるわけでもないのに、握り込んだ拳で隠す。
しかし隠し切れない笑みが、微かな音とともに漏れ出ていく。
「……ふ」
一目見れば、どういう扱いをされているのかわかった。
埃ひとつないテーブルの上に、誤って手が触れないよう計算された紙袋の位置。
俺の覚悟の象徴と呼んでも相違ない。
彼女はその指輪を、至極大切に部屋に置いてくれていた。
打ち震えるような歓喜に身震いして、過ぎた悦を逃がすように頭を振った。
人が聞いたら「そんなことで」と笑われてしまいそうだ。
それくらい何て小さな一歩だろうか。
けれど、
その小さな一歩**************************
*********************
***********
*****************
*****************
**********
**********************
*****************************
コメント
1件