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#TL
瀬名 紫陽花
14,533
#BL
多 動 症 .
30
佐藤くんの唇から零れ落ちた
あまりにも予想外すぎる言葉に、私の頭の中は一瞬にして真っ白になった。
「ん?え?」
完全に聞き間違いかと思った。
だって、佐藤くんは会社ではいつも私をからかって遊ぶだけの生意気で可愛い後輩のはずだ。
私に好意を寄せてくれているなんて素振り
これまでに一度だって見せたことがないはずだった。
大混乱に陥って何も言葉を返せずにいる私を見て、佐藤くんは観念したように
ふっと肩を落として小さく首を振った。
「そりゃ、これまで会社で色々とイジったりして遊んでたのは認めます。だけど……先輩との距離の縮め方、俺、それしか思い浮かばなかったんですよ」
「!?しょ、小学生みたいなこと言わないでよ……っ!」
「まあ……だから、先輩が黒崎さんのことを本気で好きなら、余計に応援できません」
「…そっ、そう言われても……」
「だから俺、これから先輩にアタックするんで。覚悟、しといてくださいね」
佐藤くんが、冗談やからかいではなく
芯から本気で言っているのが嫌というほど伝わってくる。
だからこそ、尚更どう答えれば良いのかが全く分からなかった。
それに何より、私自身の気持ちが1ミリも整理できていないのだ。
今朝まで、私はずっと叶人くんだけを好きで
これからもずっと彼の背中を追いかけていくものだとばかり思っていたのに。
いま私の目の前にいる佐藤くんに、こんなにも特別な熱量で真剣に告白されている。
その現状を受け止めること自体が、今の私にはまだ到底出来ていなかった。
「…ちょ、ちょっと待って……!一回頭を整理させて欲しい…さ、佐藤くんが…私を好き……??」
「そうですよ?何度も言わせないでください」
「えっと、からかいとか冗談ではなく…なんか、ドッキリとかじゃなくて……!?」
あり得そうな可能性に必死で縋ろうと、私は辺りをキョロキョロと不自然に見渡した。
けれど、個室のどこかに誰かが隠れている様子も、隠しカメラが向けられている様子も一切ない。
「そんなわけないでしょ?ドッキリでもないし、からかいでもない。俺は、大真面目に先輩に告白してるんです!」
彼は少しだけ照れくさそうに視線を泳がせて笑ったけれど
私を捉え直したその瞳の奥には、濁りのないまっすぐな熱情が宿っていた。
「な、なんで……私なの?私なんて社内で勝手に噂されてるだけで、全然モテないし…今まで一度も、そんな素振り見せなかったじゃない……?」
「なんでって…最初は、先輩のこと『すごいきれいなお姉さん』って感じで、ぶっちゃけ近寄りがたい存在だと思ってたんですよ」
佐藤くんはグラスを傾け、中の氷をカランとくるり回しながら言葉を続ける。