ー注意事項ー
・wrwrd様の二次創作です。
・本人様とは関係ありません。
・検索避けに協力してください。
・軍パロ、死ネタ等を含みます。
・山なし落ちなし意味なし。
◇◇◇
最近、少し気にかかることがある。
書斎で書類をまとめていた俺は、また気づけば窓の外を見ていた。
訓練所にいるshpとut、zm。
手合わせをしていたらしい。
shpはutにわしゃわしゃと頭を撫でられていて、zmは満足気に笑っていた。
だが、俺が見ていたのはそこじゃない。
訓練場の端で、ただ遠くから3人が笑っているのを眺めている、小さな人影があった。
ciである。
空気に溶けていってしまうのではないかと不安になるほど、静かに彼らを眺めていた。
俺は、ciが人懐っこい子であることを知っている。
特に、tnにはそれを見せていた。
最初の頃、出来たことを嬉しそうに報告しているのは日常茶飯事であったし、今でもよく雑談や相談をしている。
それこそ、俺なんかはいつもひとりで過ごしていたものだから、ciが来てからは賑やかになった。
書斎には週に1回以上来てくれる。
外交先の国に対する質問や、紅茶の種類など重要な質問から他愛のない話までもする。
彼の人懐っこさが、emの無意識下の糸を解いていたであろう。
だからこそ、そんな彼がひとりでいるのを見ると、なにか嫌な予感がするのだ。
◇◇◇
その日の夕方、廊下でciとすれ違った。
「ciくん!」
「…?あッ、emさん!!」
声をかければ、ぱたぱたとスリッパの音を響かせて駆け寄ってくる。
emは母性をも感じながら、笑った。
「ciくん、明日書斎来る?新しい本が入ったんや。世界の名物料理を集めた本なんやけど」
「…あー、すみません。俺、明日は訓練しようと思ってて…」
「そうなんか、じゃあええよ。無理せんで」
「明後日いきます!それ読みたい!」
ciの背後にぶんぶんと揺れるしっぽが見えたような気さえする。
emはciの頭に手を乗せて、ゆっくり左右に動かした。
「ciくん。訓練でなにか困ったことがあるなら言ってな」
力になれるはずだと思った。
皆に比べれば力の劣る俺だけれど、それでも彼のためなら力を全て貸してやりたいと思った。
「……たすかり、ます」
「うんうん!!俺なぁ、人を観察するのは得意やで。ciくんの」
「それより!!その書類提出するやつやろ?代わりに運びますよ」
ciは、emの片腕に抱えられた書類を指した。
「ああ…これは大丈夫やで、ありがとう。じゃなくて、俺は」
「俺。自分でやれますから」
へにゃと笑って、彼は俺の懸念をごまかす。
触れないでとでも言うように。
けれど、その笑顔がどこか強ばっていた。
そんな顔、これまで見たことがなかった。
◇◇◇
別の日のことである。
食堂の隅でciが1人、パンにいちごジャムを塗っていた。
中央ではknとshoが大声で褒められている。
「いやぁほんま今日のkn良かったわ!!動きにキレがあった!!」
「shoも怪我治ったばっかやのにめっちゃ動けてたもんなー!」
tnとrbが顔を見合わせながら頷いている。
knは最近やらかすことが多かったのだが、今日は訓練でいい成績を残したらしい。
shoは怪我からの復帰1日目で、rbと手合わせをしたらしい。
2人の周りには、tnとrbだけでなく皆が集まっていた。
emも最初はそこにいた。
控えめに手を叩きながら、2人ともすごいなんて言っていた。
けれど、そこにciがいないことに気がついた。
振り返って辺りを見渡せば、ciは隅にいて、こちらをジッと見ていた。
目が合うと、そっぽを向いて、静かに席に座った。
ciは膝の上で手をぎゅっと握るだけだった。
皿の上に置かれたジャムを塗るために使っていたスプーンは放置されたままである。
俺はいてもたってもいられず、横に座った。
「ciくん、今日の記録見たよ。君も」
「俺は褒められるほど動いてないですよ」
「…?そうじゃなくて、」
「2人とも、すごいですね」
「…うん、すごい。俺には真似でけへんわあ」
「できてますよ。emさんの書類の量、俺のとは全然ちゃうかった」
そうして、また笑った。
胸が痛くなった。
でもそれ以上、何も言えなかった。
◇◇◇
訓練場を歩いていたら、耳に入った。
「shp昨日出来てなかったやつできるようになってたわ。アイツ、覚醒状態やで今」
tnが遠くでzmと手合わせをしているshpを見ながら言っていた。
「嗚呼、若手なのにな。よくやってると思う」
grもいるらしい。
grにしては珍しい柔らかい声が聞こえた。
「あと、emとutもや。書類提出が早くて助かる」
「emは通常運転として、utもか。珍しいな」
「そうやねん…あッ、zm今の動き良い」
tnは顎に手をやってzmの動きをジッと観察する。
「rbも最近ずっとセキュリティ強化してるよな。それに、tn。お前も仕事量半端ないのによく倒れずにやってる」
「…どこぞの総統さんが仕事放るからな」
「悪かったぞ」
ははは、と笑いながらgrがtnの背中を叩いた。
tnはzmから目線を外さないまま、小さく舌打ちをする。
彼らの話に、自分の名は一切出なかった。
訓練所には、zmの楽しげな笑い声と、shpの挑発、それからtnとgrの応援で盛り上がっていた。
自分が訓練所にいる時には、聞こえることの無いそれ。
俺は、訓練所を出たところで立ち止まり、ほんの小さく息を吸った。
チリチリと肺が痛む。
頬を指先で解し、笑顔を作ってみせる。
きっと、いつかは俺を見てくれる。
誰も追わない。
追うほど深刻ではない俺を、きっといつか。
頑張った俺を褒めてくれる人は、現れてくれるだろうか。
◇◇◇
突然の敵の急襲だった。
夜中、皆が寝ようとした時に警報は鳴り響く。
戦闘員がバタバタと廊下を走り、rbの指示がインカムから鋭く行き渡る。
emは書斎にある重要書類を抱えて後方支援の部屋に避難することにした。
これもこれも、ともたつきながら書類を抱えていると、扉がバンッと開かれる。
冷や汗をかいてて、腰が抜けそうになったがそこにいたのはshpであった。
shpはヘルメットをemに被せると、書類を抱えて手を引く。
「こっちです早くッ!!!!」
「う、うんッ、ありがとう、!!」
敵がどこまで来てるか分からない。
そのため、裏口から外に出ることにした。
shpはemが転けないようにスピードを抑えめに走る。
その間にも、敵が現れればshpは素早く対処した。
流石としか言いようが無い。
恐らく、いや確実に、先輩であるemよりも圧倒的な戦力であった。
「は、はッ…みんなはッ、」
「もう避難済みですッ、それで、準備ができた人次第戦線に」
「shpくんも、もどるんか」
「はい。俺は、前線部隊なので」
「悪いな、おれが遅いばかりに、!」
「そういうの、関係ないんで」
階段を駆け下りて、外へ飛び出す。
強い風に視界が邪魔されてしまうのが鬱陶しい。
テントに入ると、utが嬉しそうに駆け寄ってきて、shpをわしゃわしゃと撫で回した。
「よぅやったッ!!えらいぞshpぃ!!」
「う"う…、うざい、」
shpは唸りながらutの腕を振り払った。
「…shpくん、ほんま凄いなあ。俺完全に置いてかれると思っとったわ」
「……まあ。テントにおらんかったんで。emさんのことやし、モタついとるんやろなと」
「お前だけやぞ。ここにおらんかったの」
utが嫌がるshpの頭に顎を乗せて、そう言った。
書類をファイルに入れ、カバンに詰め込む。
それから、emは周りを見渡した。
「…ciくんも行ったんか」
utに問いかけたつもりだったが、2人は喋って気が付かなかった。
独り言ではないのだが。
emはどうも、嫌な予感が途絶えなかった。
そんなemの隣をズカズカ横切って、shpはテントを出ていった。
また、戦線に出るのだろう。
utも文句を吐き捨てながら、shpの後を追う。
1人残されたemは、テントを見渡した。
皆の貴重品が並べられている。
書類を入れたカバンをそこに並べて、不思議に思った。
ciの私物がひとつも見当たらない。
けれど、utはem以外テントに来たと言っていた。
1度、昔ciの自室に招かれた時に聞かされた思い出の品々。
ciが幸せそうに、これは誰に貰ったやら、何時貰ったやらを説明していたのを、覚えている。
そんな品々を全て置いてきたのか。
彼は本当に戦いに行ったのか。
emはテントから慌てて飛び出して、基地へと戻った。
◇◇◇
瓦礫と、砂埃で視界が邪魔される。
それでも、emは引き返さなかった。
瓦礫を無理矢理退けて、階段を駆け上がる。
普段こんなことをしない指先は真っ赤に腫れてしまった。
emの革靴がカツカツと音を立てる。
ciの自室がある三階へようやくたどり着いた。
息を飲んで、ゆっくりと廊下を覗き込む。
敵の姿は数人あったが、どれも倒された後であった。
床に寝転んで気絶する敵の真横を恐る恐る通り過ぎる。
戦場というのはこれほど恐ろしいのか。
emは吐き気をグッと堪えた。
嗚呼。
ciの自室の扉は瓦礫が食い込み、とてもじゃないが開けれるようには見えなかった。
いや、そこではなく。
扉のすぐそばで、彼は倒れていた。
ドアノブに伸ばしていたであろう手が、力なく床に落ちている。
emは喉奥から漏れ出す声を無視して、彼に近寄る。
彼のポケットには拳銃が入れられている。
敵は彼が倒したのだろう。
けれど、彼の身体は真っ赤であった。
それが返り血ではないことくらい、彼の顔色を見れば分かりたくなくても分かってしまった。
「…っ、ッ。c、ci、くん。」
彼の肩に手を置く。
ズル、と顔を床に擦りながら上を向いた。
ciの顔は酷く苦しそうであった。
目にかかる前髪も、砂埃で黒くなっている。
「…た"。れ」
「emや。ciくん、em。俺、emやで。」
「……」
たら、と耳から血が流れる。
鼓膜が破れている。
emは唇を噛みながら、優しく目にかかる前髪を流した。
ciの目は、しっかりとemを捉えた。
すれば、ciは一気に柔らかな表情になった。
「em…さ」
「喋ったらだめや。お願い、傷口が」
「…emさ、あのね」
「だめや。やめて、お願い…ciくん」
ボロボロと崩壊した涙が落ちる。
それでもciは笑顔でいた。
「ぉれ…がん。ばった"んや…で。お、れ。ぁ…みん、な。ぶじ?」
「うんッ、うん。皆無事や。やから、ciくんも早く帰ろう?な、」
インカムからはまだrbの声が飛んでいた。
その声は活気があった。
「ぉれ…な、やっぱり、ここが…好きや」
「ciくん…、ciく」
「みんなの、おもい。で…捨てられ、へんかった"ぁ」
だから彼は、ここへ戻ってきた。
emはciを抱きしめる。
熱が飛んでいかないように、ぎゅうと抱きしめた。
「ぁぁ…あ、ぉれ。おれ。まだ…ここ、にいれる、かな」
「いれるよ、いる。ずっと、おるやろ」
「emさ…ぉれ、ひとりは。いや…やぁ"」
「うん。うんッ、分かってるわかってるよ」
「…emさんッ、」
「さびしかった」
「くるしかった」
「いたかった」
「つらかった」
「いやだった」
「ほめてほしかった」
「よんでほしかった」
「いれてほしかった」
彼を見てあげれるのは、もはやemしかいなかった。
emは扉を開けて、ciの思い出を抱える。
ciはそれを見て、嬉しそうに微笑んだ。
emの胸に顔を埋めると、ぐずっと鼻をすする。
「帰ろう。絶対に一緒に行こう」
emの声は届いただろうか。
◇◇◇
「em様!!負傷者ですか!!こちらへ!」
医療部隊は忙しなかった。
emを見つけて、その中の1人が駆け寄ってくる。
emの腕の中には、1人の男がいた。
身体も顔も、ブランケットで包まれていて見えないが、emが連れてきたということはw国の人間である。
「…納体袋を。お願いします」
「えっ?」
「…」
「わ、かりました」
袋を持っていくと、emは静かに男を袋の中へと入れた。
「……ッ、ぇ」
彼のことを知っている。
幹部に入って、新人外交官であった。
人懐っこく、誰もから愛されていた彼のことを知らない人はいないだろう。
彼を優しく撫でるemを見る。
emは微笑んで彼を撫で続けていた。
「……ッ、、」
思わず顔を下げる。
これは、見てはいけないものだと思った。
「…あちらの対応をしてきます。何かあれば、呼んでください」
「うん」
「失礼します、」
足早にそこを離れる。
事情を知らない皆はまだ忙しなく動き回る。
医療テントの中では、grがぶーぶー文句を言っていた。
tnはどこだ。俺も行きたい。
インカムでわざわざ言うものだから、tnが怒って返事をする。
そうして、インカムからrbの声が響く。
『相手が降参した!!俺らの勝ちや!!!』
ワッとテント内が盛り上がる。
インカムからも、幹部の皆の叫び声が響いた。
grは満足気に頷く。
気になって、振り返ってみた。
emとciは、まだそこにいた。
さむいね
コメント
14件
みんなとの思い出を捨てられなくて部屋の近くで敵を相手したciくんが勇敢すぎました...emさんともciくんを気にかけていて最高のお話でした😭😭 最近すごく寒くなりましたね、インフルや風邪が増えているので体調には十分気をつけてください!
あまり見たことなかったのですが、emさんとciさんの話もめっちゃいいですね! emさんのciさんに対する優しさのイメージがめっちゃドストライクでした!
戦闘向けじゃないふたりだからこその面白さがあるっていうか儚さがあるんていうかね!!!!!!!!!! 自分の話題出ないのがいっちばん辛いですよね!?!? なんか若干「ねえいるんだろう?」に似ててらぶです💘💘 え?似てないって???気にすんな👍️👍️ あったかい服装してお布団の中で寝ててください!!!!!!!