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【第二部】
どうして僕は今、ネットカフェにいるんだろう……。今日ってクリスマスだよね? 合ってるよね? いるのかな、クリスマスにネットカフェに来る人なんて。
で、なんでこんな流れになったのかというと、まあこんな感じ。
* * *
待ち合わせ場所だった駅前の時計台の下、僕は改めて小出さんにお礼の言葉を伝えた。クリスマスを一緒に過ごしてくれることに対して。僕の気持ちに応えてくれたことに対して。
そして、僕に勇気をくれたことに対して。
「小出さん、今日は付き合ってくれて本当にありがとうね」
「ううん、こちらこそ誘ってくれてありがとう。私、クリスマスを誰かと一緒に過ごしたことなかったの。家族とは一緒にパーティーをしたりはしてたんだけど」
そうだったんだ。小出さんも僕と同じだったんだ。って、少し考えてみたら当たり前だよね。高校生の小出さんしか僕は知らないわけだけど、でも、たぶんずっと一人ぼっちだったんだろうなあ。僕も友達が多いわけじゃないけどね。
「それでね、一応僕なりに今日のプランを考えてきたんだけど――」
と、言ったところで小出さん、突然の挙手。はて? どうしたんだろう? 小出さんにしては珍しい。
「あ、あのね、園川くん。私、行ってみたい所があって……。い、言ってもいい、かな……?」
「そうなんだ。うん、もちろん! だからぜひ教えてよ! できるだけ小出さんの希望に添いたいし。それで、どこに行きたいの?」
「ありがとう園川くん。えっと……あ、あのね――」
* * *
という、こんな感じのやり取りだった。で、小出さんが言ってた『行ってみたい所』というのがネットカフェ、というわけ。
なので、僕はちょうど受け付けを済ませてる最中ではあるんだけど、本当は最初、小出さんが『受け付けしてみたい』と自分から率先して言ってくれたからお任せしてたんだ。
どうも小出さん、ネットカフェに来たことがなかったらしくて。それで受け付けをしてみたかったみたいなんだけど……。
『あ、あああ、あ、あの……で、ですね……ああ、あの、その……あ、あああ……』
小出さんのコミュ症、見事に発動。店員さんもめちゃくちゃ困惑。で、小出さんは『無理、でした……』と、肩を落としながら、後ろのソファーに腰掛けてた僕の元へとすごすご帰ってきたわけで。見事なまでの敗北だね、小出さん。
……ネットカフェで敗北って、何さ。
ということで、選手交代。僕が代わりに受け付けを担当、というわけ。
とりあえず三時間パックを選択したんだけど、でも、ブースの話になった途端、隣にいた小出さんはメニュー表に載ってるブースを指差した。え!? で、でもこれって……。
「こ、小出さん? え? ほ、本当にいいの? このブースで」
「はい。だってこれにしないと別々になっちゃうじゃないですか」
あ、やっぱり僕とは普通に話せるのね。って、いやいや! 今はそれどころじゃない! だって、小出さんが指差したブースって。
「か、カップルシート、だよ?」
「そうですけど、何か問題が?」
小出さん、平然。僕、めちゃくちゃ動揺。
でも、よくよく考えてみたら、確かにそうだよね。せっかく一緒に来てるのに別々のブースになったら意味ないし。
とはいえ。
心の準備が全くできてないんですけど!