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「ここはいったい……?」
7月23日
目が覚めると知らない場所に居た。
夏真っ只中のはずなのに異様に涼しくて気味が悪い。
目の前には屋敷のような建物があり、周りには森しかないようだ。
私は、その屋敷に吸い寄せられるように足を進めた。
気がつくと、私は屋敷に入っていた。
屋敷の中は暗く、外よりも寒いからか更に気味悪く感じる。
ふと、視線を横に向けると、そこにはカウンターがあり、 卓上の看板が目に着いた。
そこには掠れた字で ”返却口”と書かれていた。
『いらっしゃいませ』
と、突然背後から女性に話しかけられた。
「うぉあああぁぁぁ?!?!」
『おや?驚かせてしまったようですね。申し訳ありません。』
『ここは記憶図書館。ありとあらゆる瞬間の記憶と感情を本として取り揃えております。』
『ぜひ1度、手に取り開いてみてください。』
記憶と感情の本……? 聞いたことがない。
そもそもそんな本、現実にあるのか?
私は疑問に思った。
「……1度本を見てみよう。」
私は近くの《幸せ》というコーナーの本を1冊手に取り、読んでみた。
その瞬間、脳内に記憶と感情が溢れ出す。
「これは……」
この本の記憶は友達との誕生日パーティーの 記憶だった。
それと同時に〖楽しい〗や〖嬉しい〗といったポジティブな感情が流れ込んで来る。
記憶の再生が終わり、その記憶の余韻を楽しんだ後、少し焦燥感に駆られてしまう。
……〖寂しい〗と思ってしまった
とても不思議な体験だった。
『いかがでしたか?その子の記憶は』
「とても……懐かしくて……何より、その……た、楽し……かった」
『それなら良かったです。』
その女性は、少し、微笑んだ気がした。