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「お…. て! ….き..て..!起きて!!!夜だよ!!」
「んん….っ…!(眠っ…)」
私は、亜梨沙に何度も呼ばれて やっと起き上がった。
――そういえば私、夕方からずっと寝てたんだけな….?
猫たちに命名してから、すぐに寝ちゃったんだった… そして、夜まで寝過ごしてしまったというわけだ。
「本当にもー、お姉ちゃんったら。」
「ふふっ!そういう亜梨沙も、ついさっきまで寝てたんじゃなーいの?」
「うっ…、」
「寝ぐせ、めちゃくちゃ酷いけどw」
亜梨沙には、明らかにさっきまで寝ていたとしか思えないような寝ぐせがついていた。
たぶん、私の後に続いて眠ってしまったんだろう。
「あ、本当だ!寝ぐせヤバっ!直さなきゃ…」
「あははっ!」
「もう!笑わないでよ!」
「ごめんごめん! ……って、あれ?爽ともく は?」
部屋に入る前に水も入れてたけど、その水さえ一滴も飲んでいないみたいだ。
餌も全然減っていない。
「亜梨沙、知らないの?」
「えっ、知らないよ?私が起きた時から居なかったもん。」
「えぇ?じゃあ、リビングとかに居るのかな?」
「んー、そうじゃない?」
夜だから、昼と比べてまあまあ涼しいものの、まだ蒸し暑い空気は残っている。
猫は暑さを敏感に感じるから、蒸し暑いのには耐えられないのかも…
だから、クーラーが効いてるリビングに移動したのかな。
「それじゃ、私達も下行こう。」
「そうだね!水と餌も下持って行く?」
「うん。」
水と餌を持って、私達はリビングに向かった。
――リビングで
「あ、お母さん!爽ともく、見た?」
私は、スマホをいじっていたお母さんに聞いてみる。
「爽ともく?何それ、聞いたこと無いわね。」
「そっか、言ってなかったか!」
お母さん、まだ猫の名前知らないんだった!
私はその事を急いで説明し、もう一度質問する。
「そうなのね! でも…… 見てないわね。上には居ないの?」
「居ないからここに来たんだよ。」
「そう… だけど、他に行く場所あるかしら?猫だしねぇ….」
「うん…」
「とりあえず探してみましょ。」
「そう、だね….(居なくなっちゃったらどうしよ…?)」
そんな不安が頭をよぎるけど、すぐに自分で消し去った。
嫌な予感が…. した。
――十分後
「いない、いないっ…!!どこにも居ないよ….!」
お風呂も、お母さんとお父さんの寝室も….
全ての部屋を見たけど、2匹は未だ見つからない。
動いている可能性もあるかも、と思ったけど… そんな音もしないし、様子も無い。
――本当にどこいっちゃったんだろ….
またそんな不安が蘇ってきた。
考えたくないけど… 外に行ってしまった、という事もあるかも…..
__この可能性を考えたのは、お母さんも亜梨沙もだった。
__みんなに緊張感が走る中、耳を澄ますと… とある“音”が聞こえてきた。
『ぐぅ、ぐぅ…. 』
「ん?今なんか聞こえなかった?」
「聞こえた!寝息みたいな….」
『あ〜っ!!』
私達3人の声がシンクロし、いっせいに階段を駆け上がった。
「爽、もくっ…!」
私は、2匹の名前を呼びながら、自分の部屋の扉を開けた。
そして、もう一度耳をよく澄ましてみた。
『ふぅ、ひぃ….. ぐぐぐ….』
「やっぱり….!」
「ここだったのー!!」
そう、猫たちはまさかの自分の部屋にいたのだ。
押し入れの戸のほんの隙間から中に入り、ふかふかのタオル3枚の上で幸せそうに眠っていた。
2匹とも手を横に広げ、何かに抱きつこうとしているようにも見える。
お母さんに抱きつく夢でも見てるのかな……?
私達は、まばたきを忘れてその様子を見守る。
――しばらくし、2匹はお互いを向き合うように寝返りを打った。
そして、お互いを抱きしめ合った…!! その後、体勢はそのままでうつ伏せになった。
__2匹は、大きくお腹を揺らしながら、優しく微笑んでいるようだった。
「しあ、わせ…..」
思わずそんな声が漏れてしまうような、夢の空間だ。
まるで天国にいるかのような心地にもなった。
まさか、猫を拾うとこんなにも幸福が増えるなんて….
「これが、恩返しってやつかな?」
「恩返しにはまだ早いと思うけどね〜!」
「それにしても、可っ愛いな〜〜!!」
「ねっ!」
妹は、過去史上最高に目をキラキラさせていた。
その瞳には、猫2匹しか映っていなかった。
「(本当、可愛いものには目が無いなぁ、亜梨沙は…)」
そんな事を思っていると、妹がこんな事を言いだした。
「そう言えばさ、なんで押し入れに入ったんだろう?」
「確かに….」
押し入れの中は余計暑いはずなのに、何故入ったんだろう?
しかも気持ち良そうにしてるし….
「……もしかして、“夏猫”だからかも知れないわね。」
「夏、猫…?」
夏猫……?聞いたこと無いな。
「夏猫って言うのは、夏に産まれた猫のこと。」
「よく風邪をひくから、あんまり良くないと言われてるらしいわ。」
「ふーん….」
でも、この猫たちが夏猫だったとしても、どうして押し入れの中に居たんだろう?
すると、それを察したかのようにお母さんが話し出した。
「たぶん、夜の風に当たってて寒かったんじゃないかしら?」
「だから、こんな押し入れの中に居るのかも知れないわよ。」
「!(暑いんじゃなくて、寒かったのか….!!)」
確かにさっき、音がリビングまで聞こえるぐらいの風が吹いていた。
その風を真に受け、寒くてこの中に入ったのかも…
「じゃあ、しっかり看病してあげないといけないね!」
「確かにそうね。これからは温かい所で寝かせてあげなさい。」
「はーい!」
妹は、そう元気よく返事した。私も返事したけど、少し気になっていることがあった。
それは….
“よく風邪をひくから、あんまり良くないと言われてるらしいわ。”
と言っていたことだった。
この猫たちも、そのせいで捨てられたのかな….?
私は、夏猫について詳しく調べてみることにした。