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翌日。快晴の日曜日という絶好のお出かけ日和の中、駿と梓は探偵からの連絡を心待ちにしながら部屋の中でのんびりと過ごしていた。「ねぇ?駿?お外こんなに晴れてるのに一日中部屋の中なの?」
梓はソファに座り、駿が出したお菓子を貪りながら気だるそうに言う。
「しょうがないだろ?2人で出かけてる所を誰かに見られたらまずいし、そもそも俺たちだけで出歩かないって雛形先生とも約束したしな」
駿は掃除機をかけながら言う。
「そりゃ、そうだけどさ〜」梓はうんざりした様子で言う。
掃除機での掃除を終えた駿が梓の方に振り向き「おい梓!せめて足閉じて座れよ」梓に呆れた顔で言う。
梓はソファに股を大きく開いて座っていた。
「い〜じゃん!家の中なんだし〜!気にしない気にしない」
「いや気にしろよ!女の子が大股で座るなって!ほらほら!足を閉じる!」
駿は手を使い梓の足を無理やり閉じようとする。
「もう分かったよ!駿は細かいなぁ〜!絶対に束縛するタイプだね」梓はやれやろと言った様子で足を閉じる。
2人がそんなやりとりをしていると、インターフォンが鳴り響く。
「ん?誰だ?こんな時間に?」
駿は疑問に思いながらもドアを開けると、そこに居たのはつかさだった。
「どうも皆川先生」
「雛形先生?どうかされたんですか?」
突然現れたつかさに驚く駿。
「偵察ですよ!偵察!皆川さんが金森さんに手を出してないかのね」
「いや、だからしませんってば!」
必死に弁解する駿。
「信用されて無いね!駿!」
梓はつかさの前で駿を名前呼びしてしまう。
「バ、バカ!今はその呼び方は」
「え?駿?」つかさは目を見開き、駿のと梓を交互に見て、駿を睨みながら「ほんっっとうに何もしてないんですよね?」と圧をかける。
「本当に何もしてません!」必死に誤解を解こうとする駿。
「ごめん・・つい・・・」梓はしょんぼりとする。
「コホン!ま、まぁ、今のは聞かなかった事にしてあげますよ」
「あはは・・た、助かります・・・」
駿は冷や汗をかきながら苦笑いをする。
つかさの部屋に招き入れた駿は、 つかさが袋をふたつ持ってきている事に駿が気づく。
袋の中には何かが大量に入っているようだった。
「あの・・雛形先生?それは?」駿は袋を指さす。
「あ!そうだった!すっかり忘れてました!」
つかさは思い出したように立ち上がり、腕まくりをしながら「キッチン借りてもいいですか?」と駿に問いかける。
「キッチン?まぁ、いいですけど、何でですか?」
「料理作りに来たんですよ」つかさは袋から様々な職場を取り出す。
「わざわざ?ありがとうございます」駿が礼を言うとつかさは「いや金森さんの為ですよ?」と駿を睨む。
「ですよね・・・」駿は顔を赤くしてうつむく。
「金森さんも一人暮らしの男性の家じゃろくな物食べれて無いでしょうから」
つかさに痛い所を突かれた駿は苦汁を飲まされたような表情をする。
「言われてるね駿!」梓は肘で脇腹を突っつきながら駿 からかう。
「だから雛形先生の前で駿はやめろってば!」
「あ・・ごめん・・・」
つかさの料理の支度が完了し、テーブルには次々と人数分のおかずが運ばれてくる。
「わぁ!おいしそー!」目の前に並ぶ料理に梓は目を輝かせる。
「おぉ!さすがは家庭科教師!」駿はおかずのクオリティの高さに驚く。
「さぁ!食べましょ!」つかさがそう言うと皆は一斉に「いただきます」と発し料理を口に運ぶ。
「おいしー!!」梓は料理の美味さに両頬を手で押さえながら笑みをこぼす。
「どう?金森さんの好みに合ったかしら?」
「うん!めっちゃおいしい!こういうのを料理上手って言うんだね!」梓はつかさを大絶賛する。
「ナポリタンで料理上手って言ってくれた金森は何処行っちゃったんだよ!」とぼやく駿だが
「でも、これには敵わないな・・美味い!美味すぎる!」
駿は一心不乱に料理を貪る。
「喜んでもらえて何よりです」つかは2人が料理を褒めてくれたのが嬉しいのか、ご満悦と言った表情だった。
「金森も雛形先生に料理教えてもらったらどうだ?」駿は何の気なしに呟く。
「わー!それモラハラー!サイテー!」
梓は頬を膨らませながら、駿に人差し指を突き出す。
「あ、いや、今のはそう言う意味じゃなくて」
「いいやモラハラです!むしろセクハラとも言えますね」つかさがさらに駿に追い打ちを仕掛ける。
「セク・・ハラ・・」駿の顔は真っ青になる。
「えーん!えーん!皆川先生にいじめられたー!」 梓は見え透いた泣き真似をしながら、つかさに抱きつく。
「皆川先生はデリカシーないですね・・サイテー」
つかさは駿に蔑んだ目を向ける。
「すいませんでしたー!ごめんなさい!」駿は梓に土下座をする。
「ぜっっっったいに許さない!」梓は駿を睨む。
「うっ・・・」駿の顔は真っ青を通り越して真っ白になる。
「なんてね!冗談だよ先生」梓は満面の笑みを見せる。
「もう・・勘弁してよ・・」駿の目から洪水かと言わんばかりの涙が溢れ出る。
「でも本当に雛形先生には料理教わりたいな!皆川先生をギャフンと言わせる絶品料理作りたい!」
「もちろんいいわよ!私で良かったら、いつでも教えてあげるわ」
「やったー!これで私も料理が出来る大人な女ー!!」梓はバンザイで喜びを表現する。
「いやいや、まだ料理ができるようになるって決まったわけじゃ」
「はぁ!?」駿の言葉を梓が遮る。
「すいません」駿は食い気味に頭を下げる。
「じゃあ私はそろそろ帰りますね?」
食後のコーヒーを嗜みながら談笑していると、つかさがそう言って立ち上がる。
「雛形先生!今日はありがとう!お料理すっごく美味しかった!」
「喜んでもらえて良かったわ」つかさは安心したように微笑む。
「では、皆川先生?金森をぐれぐれもよろしくお願いしますよ?くれぐれも」
「分かってますって・・信用してくださいよ」
「大丈夫だよ!雛形先生!駿はそんな事しないから!」梓は駿を味方するように言う。
「もう名前呼びを隠す気もないわね。まぁいいわ。では失礼します」
つかさは会釈すると部屋を後にする。
すると駿が立ち上がり「ちょっと雛形先生をバス停まで送ってくる」と言ってつかさを追いかけて、外へと消えていく。
「え?雛形先生ってバスで来てたの?全然知らなかった。まぁ、いいっか」梓はソファに腰を下ろす。
「でも雛形先生の料理どれも美味しかったなぁ・・」と呟き
「私も雛形先生くらい料理出来るようになれば、駿・・喜んでくれるかな?ふふふ」
梓は自分がいずれ料理上手になって、駿に手料理を振る舞う事を想像しながら微笑む。
「雛形先生!」駿は歩くつかさ呼び止める
「皆川先生?どうかされたんですか?」
つかさは部屋にいるはずの駿が今目の前に居る事に驚きを隠せない。
「今日は金森の為にありがとうございました」
駿はつかさに深々と頭を下げる。
「皆川先生・・・」
「金森・・すごい喜んでました。やっぱ美味しいご飯っていいですね。人を笑顔にする」駿は微笑む。
「出過ぎた真似とか思われてませんかね?」つかさは不安な眼差しを駿に向ける。
「思ってないですよ。金森のあの笑顔が何よりの証拠じゃないですか!すごく喜んでましたよ」
つさかの脳裏に、満面の笑みで食事をしている梓の顔がフラッシュバックする。
「ふっ、そうですね・・・」つかさは微笑む。
「あの・・もし雛形先生が嫌じゃないなら・・ちょくちょく今日みたいに来てあげてくれませんか?
梓も同じ女性だったら色々と話しやすいと思いますし」駿は頭を下げる。
「皆川先生まで金森さんの事を名前呼びしてるんですか?」つかさは駿に蔑んだ目を向ける。
「あ!しまった!あの、これはその・・あはは」
「笑って誤魔化さないでください!まぁ、今のは聞かなかった事にしといてあげますよ」
「あはは・・助かります」駿は冷や汗を垂らす。
「まぁ、今ので心配になったんで、ちょくちょく来ますよ!心配になったんで!」
「あはは・・まいったな・・あはは」
駿は終始苦笑いでその場を乗り切ろうとする。
「でもちょっと金森さんが羨ましいですね」
「え?羨ましい?」駿は首を傾げる。
「先生に対してあんなに積極的になれる金森が羨ましいなと・・・」
「それはどういう・・・」
「いや、こっちの話です。忘れてください。では皆川先生!また明日」
つかさは会釈をして去っていく。
その後ろ姿に駿は深々と頭を下げる。