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それから日は変わり、月曜日になった。
駿と梓はそれぞれ時間差で自宅を出て学校へ向かう。
しかし駿には気がかりな事があった。
それは梓の母が現在行方知れずだと言う事が周りにバレているのではないか?という事だった。
駿は初めて梓の母が2週間帰って来ていないと言う話を聞かされた直後に、記載した番号は自分の番号だとしても、不特定多数の人間が閲覧しているSNSに、堂々と行方不明の金森こずえを実名で投稿した。
その投稿をクラスメイトが偶然見ていて、それが原因てイジメに発展したりしないだろうか?
「親が殺された」とか「親に捨てられて孤児になった」など、有る事無い事を広められたりしないだろうか?など、駿はありとあらゆる可能性を頭の中で思い描いていた。
しかし、駿の心配は一瞬のうちにに消え去った。
実際の話、梓と仲の良いクラスメイト数名に、例の投稿は見られていたか
クラスメイトはその事を無闇に広める事はせず、むしろ
「何か困った事があったら何でも言ってね?」
「私たちに協力出来る事なら何だってやるから」
など、梓の身を案ずる言葉をかける。
駿は生徒を信用できていなかった自分を、心の中で責め、同時に生徒は大人が思うほど子供ではないという事を改めて実感したのだった。
昼休みになり、梓は友達同士で学食で昼食をとる。
「てか梓ってさ、今家でひとりって事?」友達のひとり秋根聖奈が思いついたように呟く。
「ま、まぁ、うん、ひ、ひとりだよ」
梓の歯切れの悪い回答に、もうひとりの友達である椎名沙月が「え?本当に?本当にひとりきり?」と何かを期待している素振りを見せながら梓を問いただす。
「ひとりだってば!まぁ、たまに皆川先生とか雛形先生が様子見に来てくれてたりはするけど」
梓の言葉に沙月はがっかりした様子で「なんだ〜つまんない!梓の事だから、駿くんの家に転がり込んだりしてなぁ?って期待してたんだけどなぁ」と頬を膨らませる。
そんな沙月に聖奈が笑いながら「いやいや!もしそれがガチったらヤバいからね!」と沙月の肩をポンポンと叩く。
そんな2人の会話に梓が待ったをかける。
「いや待ってよ!私の事だからって何?私そんなに軽い女じゃないんですけど〜」梓は心底心外と言った様子で頬を膨らませる。
「いや、だって梓って駿くんの事好きじゃん?」
そう言う沙月にうなずく聖奈。
「い、いや、私は別に」梓は頬を赤染めながら目線を逸らす。
「いや、だってウチらとの事がきっかけで好きになったんだよね?」沙月が梓に問いかける。
一年前、聖奈と沙月は2人して、寄ってたかって梓ひとりをいじめていた。
2人は父との死別をきっかけに、周りとの関係を遠ざけていた梓に対して、お前が居るとみんなが不幸になる!などと言ってイジメていた。
そんな梓が声を殺して1人で泣いていたところに、心配そうな表情で声をかける男性教諭。それが当時新米だった駿だった。
「あの・・2組の金森さんだよね?何かあったのかな?」
「え!?」潤んだ瞳で梓が駿を見上げる。
梓は駿の顔を確認すると「す、数学の皆川先生・・ですか?」
「ああ、そうなんだけどさ、泣いてるみたいだからさ・・何かあったのかなぁ、って心配になって声をかけたんだけど・・・」
「せ、先生には関係・・ありませんから」
梓は立ち上がってその場から立ち去ろうとするが、そんな梓の腕を駿が掴む。
「ま、待って!」「離してください!」
「こういう時ってさ、1人で抱え込むより、誰かに打ち明けた方が楽になるらしいよ?」駿は優しく語りかける。
「だからさ、話してみないか?もしかしたら、先生でも力になれるかもしれないし!な?」
梓は駿の言葉に、少し考えながら「は、はい・・」とか細い声で応える。
「イジメか・・・辛かったな」梓から事の顛末を聞かされた駿は優しく語りかける。
「でも・・やっぱりいいです」
「いいって?何で?」駿は首を傾げる。
「先生に告げ口したって言われて、更にイジメられるだけですから・・」梓はそう言って立ち去ろうとする。
「俺に話をさせてもらえないかな?その金森さんをイジメているクラスメイトと!」
「でも・・それだと皆川先生が・・・」梓は駿を不安そうな眼差しで見つめる。
「俺の事は心配しなくていいよ」駿は梓の頭を優しく撫で「金森さんは優しいんだな」と呟く。
「え!?優しい?」梓は突然かけられた言葉に首を傾げる。
「自分だってイジメに遭って辛いはずなのに、俺の事を心配してくれてるだろ?
自分の事を後回しにして他人を心配するなんて、かなり忍耐がいるし、辛い事を金森さんは出来てる。」
「先生・・ぐすっ」梓は駿の言葉に涙が溢れ出る。
「俺はそんな、人を思いやれる金森さんがイジメられているのを、いち教師として、いや、ひとりの人間として見過ごせない
だから、そのクラスメイトと話をさせてほしい」
駿は梓に頭を下げる。
「わ、分かりました・・・」梓は駿の熱意に胸を打たれたのか、自分の教室に駿を案内する。