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リクエストありがとうございます…!!
今回少し長いです、お時間ある時にどうぞ。
改めてさのじんっていいなぁ、と思いました。
1週間前のことだった。
救急外来の廊下で、大きな車輪のついた重量のある医療器具カートを搬入していた際、固定が外れて急斜面を勢いよく暴走し始めた。
その直線上にいたのは、カルテを確認していた無防備な舜太だった。
「舜太、危ない……っ!」
叫ぶと同時に、仁人の身体は思考より先に動いていた。
寸前のところで舜太の身体を強く弾き飛ばして突き飛ばしたものの、代わりのように仁人自身の膝へ、数キロの鉄製カートが逃げ場のない勢いで激しく激突する。
鈍い衝撃音と共に、右膝の奥で、ゴリッと嫌な異音が弾けた。
「じんちゃん!? 大丈夫……!?」
「……かすり傷。何ともない」
駆け寄る舜太に、仁人は平然を装う。
だが、その夜から右膝はじんじんと猛烈な熱を持ち始め、一歩踏み出すたびに激痛が奔るようになった。
「…勝手に庇って、勝手に怪我しただけ。別に平気でしょ、寝れば治る」
みんなに余計な負担や心配をかけるわけにはいかない。
人手不足で手一杯な現場で、自分で迷惑をかけたくない。
その一心で、仁人は痛みを隠すことを選んだ。
大丈夫、ただの打撲。
……薬で抑え込めば、みんなに心配させずに治せる。
それからの1週間、仁人の日常は過酷な忍耐との戦いだった。
病棟の巡回中、一歩踏み出すごとに右膝の奥を削られるような痛みが襲う。
眉間にシワが寄りそうになるのを必死で耐え、手すりや壁にさりげなく体重を預けながら歩く。
「……よっしー、顔色悪くない?」
「ん? 別に普通だよ。少し寝不足だからかな、」
周囲に心配をかけまいと、仁人はいつもの冷静な顔で話をそらした。
そして誰もいない処置室やトイレに駆け込むと、壁に背中を預けて深く息を吐き出し、荒い息を整える。
「……はぁ、っ」
冷や汗で額に張り付いた前髪を払い、ポケットから取り出した鎮痛剤のシートを震える指で破る。
水もなしで錠剤をそのまま飲み込み、苦い薬を強引に喉の奥へ押し込んだ。
びび
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#山中柔太朗
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最初は1日3回だった薬も、ここ数日は痛みに耐えかねて飲む回数がどんどん増えていた。
「効いてくれ…、頼むから…。みんなの前で倒れるわけにはいかない、」
膝をさすりながら薬が効くのを待つが、無理を重ねた膝が限界を迎えるのを、医者である仁人自身が気付かない訳がない。
日に日に右膝は腫れ上がり、曲げることすら激痛を伴うようになっていった。
そして、1週間後の夕方。限界は突然、そしてあっけなく訪れた。
「仁人。今日のデータ、ここに置いておくな?」
「あぁ、はやと……。助かる、」
ナースステーションでデスクに手をつき、立ち上がろうとした、その瞬間だった。
右膝の奥で嫌な音が響き、まるで灼熱の鉄板を直接押し当てられたかのような激痛が脳天を突き抜けた。
薬の効果なんて一瞬で吹き飛ぶほどの衝撃。
「つ……っ!? あ゙……っ!!」
「仁人!!」
膝の力が完全に抜け、視界がぐにゃりと歪む。
仁人の身体がバランスを崩し、そのまま前に倒れ込んできた。
「おい、仁人っ!?」
すぐ横にいた勇斗は、咄嗟に両腕を伸ばして崩れ落ちる仁人の身体を正面からガバッと抱き留めた。
床に叩きつけられることなく、仁人の頭と体が勇斗の胸元にしっかりと収まる。
「っ……あ、つ……っ」
「おい! 大丈夫か仁人!? しっかりしろ!」
床への衝突は免れたものの、膝にかかった急激な負担に激痛が奔る。
勇斗の腕の中で、仁人は痛みのあまり息を詰まらせ、力なくぐったりと体重を預けることしかできない。
「……だい、じょっ、だから……っ」
「大丈夫なわけねぇだろ!!」
これ以上心配をかけまいと勇斗の白衣を掴んで強がる仁人を制し、勇斗はすぐさま仁人の膝裏と背中に腕を通すと、そのまま身体を横抱きに包み込むようにガバッと持ち上げた。
「くあっ……っ!?」
足が宙に浮き、膝がわずかに揺れただけで、激痛の電流が全身を駆け抜ける。
「おい……っ、お前、足に全然力入ってない、!」
抱き上げた勇斗の腕の中で、仁人の右足は完全に脱力し、ダラリと力なく垂れ下がっていた。
足先をピクリとも動かすことができず、ただ激痛と麻痺に耐えるように勇斗の肩に顔を埋めることしかできない。
「う……うご、かない……っ」
「当たり前だよ!膝めちゃくちゃ腫れてるから!」
「っ、そ、なに……?」
「……いつから、!」
怒気を含んだ声で問い詰める勇斗。
だが、抱え上げられた仁人の顔を見上げた瞬間、勇斗の息が詰まった。
激痛と無力感で瞳にはうっすらと涙が溜まりかけているのに、仁人は唇を紫になるほど強く噛みしめ、みんなに心配をかけたくない一心で必死に涙を引っ込めようと目元を震わせていた。
「……1しゅ、うかん、まえから……っ。ごめん……っ」
涙を必死に耐えながら、申し訳なさそうに絞り出された言葉。
本当なら「なんで1週間も黙ってたんだバカ野郎!」と怒鳴りつけたいはずだった。
けれど、心配をかけまいとギリギリまで一人で痛みを抱え込み、今も必死に涙を堪えて強がる仁人の姿を見たら、怒りなんて全部吹き飛んでしまった。
「……っ……クッソ……!!」
勇斗は感情のやり場を失い、悔しさと愛おしさと自分への情けなさで低く毒づいた。
怒ることすらできず、ただ仁人の身体をこれ以上痛まないよう一層強く、抱きしめるように腕に力を込める。
「頼むから、そんな顔すんな……。動くな?とりあえず整形外科いくぞ!」
検査の結果は、右膝の重度捻挫および靭帯損傷。
痛みを我慢して1週間歩き回ったことで炎症が悪化し、全治2週間。
しばらくは足をつくことすら厳禁で、完全に自力移動は不可能な状態だった。
個室のベッド。右足をガチガチに固定された仁人は、ベッドの上で悔しそうにそっぽを向いていた。
泣きはしないものの、心配をかけないつもりが、一番迷惑をかけてしまった、という情けなさと、自力で動けない屈辱感で固くなっている。
「……2週間か、書類仕事ならベッドの上でもできるかな……」
「……お前なぁ」
パイプ椅子を引き寄せて座った勇斗は、深く溜め息をつくと、乱暴に自分の頭を掻きむしった。
そして、不貞腐れる仁人の頭にポンと手を乗せ、乱暴に、でも溢れるほどの愛おしさを込めて髪を撫で回した。
「心配かけたくないからって一人で抱え込まないで」
「……はやと」
「自力で1歩も動けねぇんだから、大人しく俺たちを頼れ」
「勇斗さんだけやないで!」と太智が笑いながら顔を出す。
「吉田さんが動かれへん分、僕が美味しいご飯毎日作ってベッドまで運ぶからな!」
「病院食は栄養士の方と病院調理師の方に作ってもらいます」
「車椅子の移動なら任せてよ」
「それは自分できるわ」
「今度は俺がじんちゃんの足になるから!」
「じゃあコーヒー買ってこい!」
それぞれ一蹴していく仁人に目線を合わせる勇斗。
「心配なんていくらでもかけなよ。仲間なんだから」
「……」
自分ひとりで抱え込もうとしていた仁人を包み込む、四人の温かい手と愛。
仁人は鼻を鳴らしてそっぽを向いたが、その耳の先端は真っ赤に染まっていた。
「……ありがと……」
「はいはい、じんちゃんはツンデレだもんねぇ、」
「ぶっ飛ばすぞ」
口では吐き捨てつつも、握られた手を決して振りほどかないツンデレな仁人。
病室には、頼もしい仲間たちの温かい笑い声が響き渡るのだった。
コメント
4件
今回もとても素敵な作品をありがとうございます✨️ 仁ちゃんの心配をメンバーに掛けたくなくて意地を張る仁ちゃんとってもメンバー愛に溢れて居ますね😊 次の投稿も楽しみにしています😊 体調にはお気おつけてくださいね☺️
ええええええええー!!!!! リクエスト答えていただきほんとにありがとうございます!!! これからも作品を楽しみに読ませて頂きます!!! ほんとにありがとうございます!!!
ああもう、仁人……!! ちゃんと心配してほしいのに、一人で抱え込む姿が痛々しくて、読んでるこっちまで膝が痛くなりました。勇斗が「そんな顔すんな」って言いながら抱きしめるシーン、じんわり来ました。仲間に頼るのが仁人なりの愛情表現だって気付いてほしいなあ。ツンデレな仁人が可愛くて、でも不器用で……ああもう、尊いです💛