「植物!?」
「…飛んで。」
地面を突き破って出てきたのは巨大なツルだった。
「ぐっ……!!」
巨大なツルだが、よく見ると細いツルが何百、何千と絡まって意志を持った集合体として襲いかかってきた。
ドラゴンメイドたちを狙って襲いかかっているらしい。普段、襲撃訓練を受けているメイドたちはなぜかあっさりとツルに捕獲され次々と上部に持ち上がっていった。
「アビリティか!?」
「…その可能性は十分。」
併せて、ボコボコ音を立てながらものすごいスピードで蔓延る大量のツルと根は地面からも滑走するよう張っていっていってる。
俺とカグヤは瞬時にその場を飛び立ち、ムイも合わせて飛び立つが一歩遅く触手に取り込まれてしまった。
「くそ!」
「ムイ!」
「ぐっ……」
そのまま伸びたツルに天井近くまで運ばれ、次から次へと下から触手が伸びてはムイの体に絡まっていった。
「……ひぅっ!」
ムイのメイド服を突き破り、胸や脇やスカートの中へ、容赦なく次々と伸びていくツル。
「なっ…スケベな植物ですね…!」
胸部に入った触手は膨らみ、太くなったそれは強弱をつけながら谷間を這っていく。
先端から白濁液をドロドロと放出し、体に塗り込むようにツルが馴染ませていた。
「な、なんだありゃ?!」
「……(この液あつっ!)…」
ムイの太ももを固定するように沢山のツルが絡んでいく。そろそろと下半身に伸びた極細のツルはパンツを引っかけ、素材は伸びてパンツの中が…
「みるな。」
「…ぐえ!!」
カグヤから目潰しを食らった。
食堂を利用していたメイドたちはほとんど捕まってしまったが、ムイ以外は皆気を失っている。
「皆…何かされたのか?」
潰された目をゴシゴシ擦っていると、カグヤは俊敏にムイを捕らえているツタを駆け上がり、天井近くまで飛躍すると太ももにつけている小道具から細い透明の線のようなものを出し高速で植物に巻きつけ体重をかけて地面へ降りた。
「ブシュァァァァァ!!!!」
そこらじゅうに青い体液が大量に散らばった。植物が切れたのだ。
返り血のように俺はその青い体液を浴びた。
…グロテスク。
絡んだ植物は全て切れ、ボトボトと音を鳴らして切れた箇所から次々と地面に落ち、無防備なムイも一緒に落ちてくる。
「…大事な後輩がお嫁に行けない…。」
カグヤはムイを素早く抱き上げ、植物を利用して地面に下ろした。
「カグヤ先輩…」
赤らめてカグヤを見上げているムイ。
「…気が抜けてる。」
「……はい…。」
「捕まった人数が多すぎる。助けている間に上に被害が拡大するかもしれない。」
ツルはジワジワと食堂から出て行こうとしている。
「かといって見殺しにはできません。」
ツルは尚も俺たちを狙ってはいるが、スピードは激減した。
「…強い攻撃性があるかといえばソレを感じない。こいつの目的は何か…。」
「そうだな、取って食うとかそう言う感じではないな。」
「リユージ様…お顔が真っ青です。」
「ーヴァイオレッタは?」
「あっ忘れてた。」
そうだった、最強の冥龍族って先入観でヴァイオレッタのことは二の次にしてしまっていた。
「おーい、ヴァイオレッター!」
三人でキョロキョロと見渡すと、すぐそこの足元で泣き崩れたヴァイオレッタの姿があった。
「わ、、わたくしの…」
ーヴァイオレッタにツルは全く通用していなかった。
何やらプスプスと焦げた臭いがしたのでよく見るとヴァイオレッタの体から灰色の煙が上がり、黒く紫色の炎がゆらゆらと本人を囲んで円を描くように燃え盛っていた。
「わぁー。オコですね。」
「…オコだね。」
カグヤはヴァイオレッタの前にしゃがみ込むと、どこからともなく持ってきた木の枝を使ってツンツンとつついている。
ヴァイオレッタは昼食をぶち撒けたショックでその場から動けずいたようで、その上にカグヤが倒した巨大な植物の破片が落ちてしまい木っ端微塵に昼食粉砕。
「…私の分あげる。(ごめん)」
「カグヤちゃん…そう言う問題じゃないのです!!もらいますけど!」
「もらうのかよ。」
「ヴァイオレッタ落ち着け。後で俺のも食わせてやる。今はそれどころじゃなさそうだぞ。」
「今これを食べたかったのですのー!その時だったのですの…!ないと余計に食べたくなるん!ですの!」
まるで駄々をこねる子供だな。ただ、とてつもない絶望感は伝わってくる。
周りはもうぐちゃぐちゃで触手は四角に囲うような動きで食堂全体に根を張ろうとしていた。
…と、封鎖寸前の食堂の入り口で誰かが、声を張って手招きしている。
「リユージ様!!皆さまもこっちです!」
「リリス!」
「…リリス、危ない。逃げて。」
「あっちに怪しい人影を見たのです!」