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「怪しい人影?」
「はい!この城内では見かけない女性を見ました。」
「ーーってうおおおっ!」
ボフボフ!!!ボフボフボブ!!!
「あちち!あちい!」
「ヴァイオレッタさん!?」
リリスとの会話を遮るよう、ヴァイオレッタのアビリティと思われる、この紫の焔の玉は更に数を増やして空間に揺らめきだした。
怪しく光るその妖艶な炎は見るだけで吸い込まれそうになる。
それに触れたツルは真っ黒に焦げ落ちて塵になり、植物の大部分が動きを止めるほどに枯れ落ちはじめた。
「ーなんつうか…。」
さっきよりマズい状況になってしまった。
俺もまだ知り得ないアビリティのため、下手に動けない。どうする?侵入者の追跡はカグヤに任せたいが、カグヤはこの時間にもツルを攻撃し、メイドたちを一人一人保護していた。
保護されたメイドたちはすうすうと眠っているようだ。食べ物に眠り薬を混ぜられたのだろうか…?とにかく無事そうではある。
ムイはカグヤの補助をしている。ツルを焦がしてくれたおかげで大勢のメイドを保護するも、もうヴァイオレッタがアビリティバーストしそうな勢いだ。時間が足りない。
俺の作る結界がどこまで俺たちを守ってくれるか未知数だ。
国防結界すらヴァルヴレッドに一撃で破壊されてしまうのだから、その血を受け継ぐ娘が俺個人が魔術で張る結界を壊しても不思議ではない。
「はぁ〜。なんだかわたくし、悲しくて悲しくてたまらないですわ〜…」
体からモクモクと湧き出る煙は次第に苦い臭いとなり、ピリピリと体が痺れを起こすような感覚に一番にカグヤが感じ取っていた。
更に煙を吸うと頭がぼやぼやとすることに気がつく。
「…っ…この煙、毒の可能性あり。」
「そういえば…さっきからクラクラ…しま…す。」
カグヤやムイはすぐに口元を抑えるが、毒はすでに2人の体を回り始めていた。
「これ…バケカブトの毒か……!」
一度取り込んだ何気ない毒花すらアビリティで持ち出せるってことか?最強だろ冥龍さん!
「カグヤさん、ムイさん!」
2人はその場で崩れてしまい、リリスがかけより肩を抱くように2人の間に入った。
「リリスは平気なのか?」
「あのっ、私は精霊龍の混血なので多少の毒は…」
「……俺は…。」
バケカブトの花の蜜は龍神族の神経に効くとされる猛毒がある。この毒が回らないのは、俺が龍神族ではないことを明白にしているようだった。
取り囲む焔の円は次第に倍、その倍と変化してきている。
「ヴァイオレッタ、変なこと考えるなよ!」
「…みんなを……巻き込ん…じゃう。」
「どう…しましょう…大変で……す。」
「ヴァイオレッタさん!」
「よせ、ここで使っちゃダメだ!」
ヴァイオレッタの頭がドロドロと溶け出し、錨のようなツノを有した龍の頭蓋骨のフォルムが、まるで被り物のように剥き出しになった。
「はぁーー……。」
顔はかろうじて半分残っているが、これはかなりの怒りを表している。
(ちなみにこのフォルム、一説によると自身で制御できないほどの怒りや混乱が脳内で起きた時、ヒューマノイドの形を保てなくなるかららしい。
ただしこの形状になることは龍神族でも滅多になることがないというが…。)
※食べ物の恨み、恐ろしいな!おい!
「こんな理不尽、わたくし到底受け入れられませんですのよーーーー!!!!」
ーもう俺の体はとっさに動いていた。
「ヴァイオレッタ!!」
真っ黒の焼け野原の世界の中心にいるヴァイオレッタめがけて俺は飛び立った。
「?!なんですの!?」
「んふぅ…!?」
「んっ…」
「おひつけ!ゔぁいおれっら…」
俺はヴァイオレッタを押し倒し、キスをしていた。
「「「ーーー??!??!!」」」
「ちゅ……」
「っぷゎ、な、なんですの!?これ……は…」
みるみる紅潮するヴァイオレッタ。
「リユージ様!!?」
リリスが顔面蒼白で俺を見ている…。仕方なかった。これしかない。
俺の唾液には催淫効果がある。純血種とは相性が良い上に簡単な命令も行うことも可能だ。
俺はしっかり舌を絡ませ、唾液を流し込んだ。
「んっ……リュージ…さ…。」
露出した頭蓋骨は元に戻っていく。
腰が抜けたヴァイオレッタはそのまま地面に仰向けに崩れ落ちるが、俺は上から覆いかぶさる。
「これ、は……?」
「……落ち着け。」
「……わたくしは…」
「んっ…ちゅっ…ちゅぷっ…」
続けて唇を貪るように舌を食い込ませていく。
ヴァイオレッタは俺の行動にあっけにとられていた。
ーぷはっと口を離す。
「わかったか?落ち着け。」
「………はい…ですの…。」
「アビリティをしばらく禁止する。できるな?」
「………はい……ですの……。」
「…………。」
カグヤもこちらをじっと見ていたが、その視線は俺からゆっくり肩を抱いてくれているリリスの方へ向かっていった。
「………りえ…い……」
リリスは肩を震わせだした。
「あ……りえない……。」
ブツブツと下を向いて何かを言うリリス。
「…リリス。やはり貴方だったのね。」
「……先輩…それどういう…」
「…もう許せない!!大っ嫌いなの!冥龍アルテマ一族の!ヴァイオレッタ!貴方が!!!」