テラーノベル
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匂わせ程度のいわふか要素有り
本当はあの時から、ずーっとあった違和感。
でも佐久間がグループの為にって決心したのは本心だったろうし、あの時の状況ではぶっちゃけ最善策だったのも本当。
でもずっとずっと何か違うって思ってて。
拭えない違和感を抱えながら、少しだけ距離の近い佐久間と目黒を見守ってる。
佐久間と『契約恋人』になってから、目黒は目に見えて落ち着いて。変な誘いだってちゃんとスルーしてるし、所作にも余裕が出た。
『恋人』の距離で気持ちを預けられる相手が、あいつには必要だったのかもしれない。
何より甘やかしたがりなとこもあるから、無条件でそれを向けていい相手がいるのが嬉しそうだ。
じゃあ、佐久間は?
自分を犠牲にするような提案をした、あいつはどうなんだろう。
そう思って日課のように2人の様子を見守ってたら、少しずつ違和感の正体が分かってきた。
なあ、佐久間。お前本当はさ。
「どした、深澤」
「いや、お疲れ。今日はめめは?」
「この後も撮影なんだって。あいつマジでスケジュールぱんぱんなんだよな」
心配そうに呟く姿は、本物の恋人みたいだ。
俺らも納得出来ないまま、それでも納得して始まった『契約恋人』。
でも本当は、それだけじゃないんだろ。
「じゃあさ、飯でも食いに行かね? 暇なら付き合えよ」
「おー、いいぞ。深澤とサシ飯も久し振りだな!」
にこにこしながら頷く佐久間と来たのは、完全個室の食事が美味い居酒屋。
よく利用するから、プライバシーがしっかり保たれてるのを知ってるから選んだ。
車で来てる佐久間はノンアルビール。俺は少しだけアルコールを入れながら、ある程度まで食事を楽しんだ。
違和感の正体を聞いてどうしたいのか、正直分かんねーけど。このまま佐久間が何も吐き出せないのも良くないと思うから。
だから、ごめんな。
「なあ、佐久間。ずっと聞きたかったんだけどさ」
「んー? なにぃ?」
「お前本当はさ、今もめめのこと好きだろ」
途端に凍り付く佐久間に、やっぱりなと思う。
「…なん、で」
「佐久間があの提案をした時から、ずっと違和感があったんだ。あの場では分かんなかったけど、めめと一緒にいるお前を見てるうちにそうなんだろうなって」
「お前…その観察眼、他のとこに使えよ…」
「メンバーの様子、見守るの俺の役割だと思ってるし。十分役立つとこに使ってるだろ」
「そう、だな…」
少し青褪めた佐久間が、小さく「ごめん」と呟いた。
「あの時、グループの為にって決意したのは本当。けど…嘘でも蓮を手に入れられるかもって、打算があったのも本当」
「…結構拗らせてんな、お前」
「拗らせもするだろ。だって蓮だぞ」
それには何か納得して、ちょっと笑ってしまった。そのおかげか佐久間も、少しほっとした顔になる。
「誤解しないで欲しいんだけど…責めたいわけじゃないんだ。最低だけどあの時はあれが最善策だったし、今のめめ見てると倫理的には間違ってても正解だったんだなって思ってる。それは、みんなの共通認識」
「うん…」
「でも、違和感の正体が分かった時に『佐久間の気持ちは?』って思った。これは多分、俺しか気付いてない」
「そっか。良かった…って言っていいのかな」
自嘲気味に笑う佐久間に胸が痛む。
仲間にとんでもない枷を背負わせてるんだよな、俺達。
「…気付いてから、ずっと考えてたんだ。もし佐久間が、今の状況を少しでもつらいと思うなら辞めさせた方がいいって。でも、もし」
そこで一旦、大きく息を吸う。
「もし、今の状況が佐久間にとっても幸せなんだったら…やっぱり俺は見守ってるしかないなぁって。何が幸せかを決めるのはその人自身だから」
「深澤…」
「なあ、佐久間は幸せ? こんなごっこ遊びみたいな残酷な事やらせておいて何言ってんだって感じだけど。佐久間の気持ちを知りたい」
「俺、は…」
佐久間の大きな目が戸惑ったように揺れる。
やがて一粒だけ零れ落ちた涙が、ひどく綺麗だった。
「…幸せ、なんだ…蓮と『恋人』として過ごせるこの時間が。こんな事でもないと、過ごせなかったこの時間が。偽物であることは覚悟してたから何もつらくない。幸せな記憶をたくさんもらえて、この契約が終わってもずっと抱えて生きていけるって…それが嬉しい」
「佐久間…」
「いつか終わりが来るって、それは怖いよ。でも普通の恋人にだって有り得ることだし。覚悟が出来てる分、今の幸せを噛み締められるからさ…」
俺が思ってたよりずっと、ずっとずっと佐久間の想いは深かった。ただの自己犠牲じゃない。目黒の為だけじゃない。
佐久間にとっては、この『恋人ごっこ』が救済なんだ。
「…めめに伝えるつもりは?」
「伝えたら、即契約終了だろ。『恋人ごっこ』だから安心して気持ちを預けてくれてるんだ。俺が本気だってバレた時点で終わる。俺の方から終わらせるつもりはない」
目黒からの終了宣告をいつでも受け入れるつもりで、ただ今を精一杯噛み締めて生きてるのか。
切ない気持ちになったけど、それが佐久間にとって幸せなら。
「…分かった。じゃあ俺は、余計なことはしないで引き続き見守ってる。ただ、もしつらくなったら…その時はちゃんと教えてくれよ。お前の気持ちを殺してまで、グループ存続を望んでるわけじゃない」
「ん。ありがとな、深澤」
そう言って涙を湛えた目で微笑む佐久間が、すごく儚くて綺麗で。切ない気持ちになって思わず目を伏せた。
今、無性に照に会いたくて堪らない。
なあ、照。佐久間の恋って、こんな形でしか成就させられないのかな。本物には、なれないのかな。
そう思うことすら傲慢だって。ちゃんと分かってるから何も言えなくて。
見えないように唇を噛み締めた。
コメント
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水瀬さぁ~ん さくちゃんの気持ちを思うと泣いてしまうよ(´•̥ ω •̥` ) 幸せって言われても...切ないよぉ… そして、見守るふっかさんに恋をしそうです Σ(°꒫°๑=͟͟͞)➳♡ズキュン

ふかさくの精神的な繋がり的な設定が大好きなのでめちゃくちゃ刺さりました…