昼休み。
いつも一緒に食べてる二人に、昨日あった出来事を話した。
「少女マンガかよ」
「今時そんな人いるんだねぇ」
「俺だったらはっ倒すね」
「物騒だな…」
この口の悪いのはうっしー。頭の回転が速く、成績も優秀だ。今日の昼は焼きそばパンらしい。ヤンキーみたいだな。もう一人の穏やかな喋りの人はガッチさん。ちょっと変態なところがあって、変わった人だ。お昼はいつも弁当を食べている。
「でさ、名前も知らんわけよ」
「顔の特徴とか、何かないのかよ?」
「あるある!」
昨日のシーンを思い出して、二人に話す。
「背がすごく高くて、多分180くらいありそうかな」
「他は?」
「声は低くて…あ…襟足が赤かったかも」
「そんな奴いたっけな…」
二人とも首を傾げて考えている。そんな目立つ髪なら皆が知ってそうなんだけど。でもオタクで陰キャの俺等は知らないやつなのかもしれない。
…言ってて悲しくなってきた。
「そいつチャリ通なんだろ?」
「うん…あ…!」
「駐輪場で待ってみるのはどう?」
「会えるかな…?」
「HR終わったらダッシュで行けば間に合うよ」
そうか、その手があった!
出待ちってやつですね。
「そうしてみるわ!」
「しかし乙女な展開だな」
「どんなやつか見てみたいもんだよね」
「絶対陽キャだこえーよぉ…」
「はい、では以上でHRを終わりにします」
その言葉と同時に俺は急いで教室を出た。後ろからうっしーとガッチさんの笑い声が聞こえてきたけど、そんなことは気にしない。
だって早くしないと―
「っはぁ…はぁ…」
教室から駐輪場までは遠い。上がった息を整えながら辺りを見回すと、それらしい生徒はまだ来ていなかった。床に座って何となくスマホをいじる。どうせそのうち来るだろう。
数分経ったときだった。
ガチャン
近くの自転車を取ろうとする生徒。
「あっ、すいませ―」
退こうとその顔を見上げると、
「あ!!!」
長身に赤い襟足。俺の探していた生徒だった。俺の声にびっくりしたのか、目を見開いて俺を見る。でもその後は思い出したようで
「ども」
と軽く挨拶をしてくれた。
「あっあの!傘!」
「傘?あー…いいのに」
「返そうと思って待ってたんだけど…」
「出待ち?ファンじゃん」
そう言ってふわっと笑う。本当に少女マンガに出てくるキャラクターみたいだ。
俺は持ってきた傘を返した。
「少女マンガみたいな展開で焦ったわ」
「困ってたしょ?だから当然だよ」
「ありがと。俺はレトルト。名前教えてよ」
「じゃあレトさんね。俺はキヨ」
「キヨくん…ほんまありがとうな!」
感謝もできて、帰ろうと歩き始めたときだ。
「レトさんさ、一緒に帰ろうぜ」
普段一人で帰ることが多いから、嬉しかったけれど、少し緊張もした。
To Be Continued…