テラーノベル
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「お、お目覚めだ」
ガサツで、神経質な声。お姉さんです。ひょい、と青空に割り込んで来た顔には、どこも腫れていませんでした。
「君、また倒れたでしょ、トラウマ?いい加減教えてよ」
冷たい手が、おでこに乗って気持ちがいいです。竜胆のように笑うお姉さんは、手がいつも冷たくて夏場には重宝されます。潮の匂いがして、遠くに桔梗がまだ、咲いていました。
雨は、嫌いではないです。拍手のようで、平手打ちのような音。濁ったような湿った香りも。民宿の窓から覗くと、海が深い藍色になっていました。ふと、見た海辺のベンチには、傘も持たずに濡れているその子がいました。濡れて重たく傾いた桔梗と、黒髪から滴る水滴は、夕方の海のように輝いていました。
ぱっ、と僕の足は飛び出していました。
身体中に打ち付けられる水たちは、途端に僕の火照った体を冷やしました。傘を握る手の内は、水滴よりも火照っていました。
「…っこ、これ!おせっかいだたら申し訳ないですが!捨て置いて構わないですので…。」
なぜだか近づけなくて、ぐ、と思いっきり腕を伸ばして傘を差しました。
何倍にも膨れ上がったように、なぜだか僕の心音が大きく聞こえました。
その子の手へ直接は渡せなくて、ベンチに置くように開いたままの傘を残しました。指先が震えたままで、手にもう一本の傘を持っていたはずなのに、そのまま帰ってきてしまいました。
『化け物』
なぜだか、頭の中であの声が鳴りました。それは玄関で湿った髪を拭いても執拗に僕を責め続けます。頭の奥が締まるような自己嫌悪で、空気が薄くなりました。
しょうがないのでしょう。
しょうがないのです。
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いちごバナナスムージー
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試作品X号
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コメント
1件
雨の音と藍色の海、夕方の海のように輝く黒髪からの水滴…その情景描写がすごく綺麗で、目に浮かぶようでした。お姉さんとの何気ない会話から一転して、「化け物」と自分を責める主人公の心の内が胸に刺さります。傘を直接渡せなくてベンチに置いてくる距離感と、震える指先に切なさが溢れすぎて……。何があったんだろう、この子の過去を知りたくて仕方ないです。続きが気になりすぎます〜!