テラーノベル
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いちごバナナスムージー
51
試作品X号
31
雨の中、窓の外には遠くに大きな傘が花開いておりました。僕は、なぜだか真っ直ぐ見れなくて、心臓がばくばくしていました。
窓を開けると少しだけ、雨が弱くなっていました。水を含んだ土の、湿った雨の香りのはずでした。ツンとする潮の匂いと、甘い蜜の香りがした気がしました。
雨で空気が洗われた夜は、お月様と星がよくよく見えました。
遠くに見える東京の光は、江ノ島の星よりずっと眩しくみえました。江ノ島の星には東京の光にはない優しさがありました。
テーブルを囲むお姉さん、おばあさん、おじいさん、僕たちには、東京でこの関係に名前はつきません。いっそ誰かと血縁関係だったら、よかったのでしょうか?
江ノ島の桔梗は、雨にも負けないで咲きます。
「唐揚げも〜らっい‼︎」
目の前を横切るはしには大きな唐揚げが。ぐいっと口角を持ち上げたお姉さんの口に吸い込まれていきます。
「ちょ、お姉さん…じゃあ僕は卵焼きもらいますからね。」
「はぁ?それ私がとっておいたんだけど‼︎」
おばあさんが作る卵焼きはしょっぱくて少し甘いです。それがなんとも美味しく、ここに泊まりにきた人はみんなレシピを知りたがります。でも、決まっておばあさんは教えないのでした。
テーブルにはたくさんの傷があって、木の目がとても馴染んでいました。
これでいいのです。
このままでいいのでした。
コメント
1件
雨の質感と潮の匂い、東京の灯りと江ノ島の星の対比……一瞬でその夜の空気に引き込まれました。特に「この関係に名前はつきません」という一文に、胸がぎゅっとしましたね。でも最後の「これでいいのです」に、ああ、この人たちはちゃんとそこにいるんだなと安心しました。温かい食卓の情景が、その決意を優しく包んでいて、とても好きです。