「幸せ、ってなんだと思う?」
真理的な、あるいは哲学的な、そんな質問を彼女は僕に投げかけた
「それは、真理テストかなんかですか?」
「いーや?そんなんじゃない。ただの純粋な疑問」
随分と答えに困る質問だ
とても高校生にするものではない
「まぁ…明日にでも考えてきますよ。今日はもう遅いので」
少しずつ、しかし早く、日がもう傾き始めている
冬の日は短い
「分かった、答え楽しみにしてるよ」
本当に楽しそうな顔をして、彼女は背を向けた
ウェーブのかかった茶色の髪が、沈みゆく夕日に照らされて光を帯びる
僕は地平線に消えるまで、その後ろ姿を眺めていた
朝起きると、少し雪が降っていた
布団から起き上がると凍えるほどの寒さで息を吐けば白い
カーテンを開けると視界に飛び込んでくる粉雪
今日は一段と寒くなりそうだ
「ゔぅ……さっむ」
さっさと服を着替えて、下に降りる
暖房をつけ、人気のないリビングに一人、適当にパンを取り出して齧る
テレビをつければ代わり映えのしないニュース番組
両親はまだ帰っていないようだ
相変わらず、ここにも僕の居場所はない
登校しながら、昨日の答えを探す
放課後にあの神社に向かうと、大抵あの人がいる
名前は知らない。聞いても答えてくれないからだ
だからいつも呼び方に困る
「まぁ適当に呼んでよ」と言われているが、相手は大人だ。そういうわけにはいかない
あの神社に行くと決まってあの人がいて。いろいろな雑談をするのが日課になっている
今回は「幸せとは何か」という話題らしい
そもそも幸せに定義があるものなのか
いつまでも答えを見つけられないまま、校舎が見えてくる
教室に向かう間も考え続けたが、結局納得のいくものは見つからなかった
代わり映えのしない騒がしい教室に足を踏み入れ、窓際の自分の席に座る
窓の外をぼーっと眺め、いつものように思う
ここに僕の居場所はないのだと
今日も賑やかな校庭を後に、帰路とは反対に足を向ける
喧騒とは程遠い静かな道をただ黙々と歩く
授業の合間を縫って考えた、「幸せ」とは何か
それなりに自分の答えは見つけた。あの人が納得するかは分からないけど
少し坂を登り、見えてきた鳥居
その下で、笑って待つ彼女が居た
顔に笑顔を広げて
その笑顔に応えるように、僕は歩みをはやめる
太陽が、彼女を照らしている
「やぁ、少年。答えは見つかったかい?」






