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戻ってきたら、好きって言って

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戻ってきたら、好きって言って

3 - 第3話 傷と信じる心

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2025年08月21日

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まず読む前に、下の説明を頭に入れてからお願いします!🙏

《この世界では、大体の傷は医者が治すことが出来る。銃痕や切り傷も跡残すことなく治すことが出来る。だが稀に、治さないまままた犯罪を犯し、傷を作ると傷が重なり、治しても残ってしまう事がある。だが傷を治さずそのままにする人は中々居ない。》



無茶をしていると自覚はあった。

客船も、アーティファクトも、パシフィックも。

成功するたびに周囲は歓声を上げたが、その裏で俺は、もうどうでもいいように動いていた。


痛みは、気持ちを麻痺させてくれる。

傷は、先輩を考えないようにするための口実みたいだった。


けど、その代償は大きかった。


――銃弾が掠めた背中の痛みが、呼吸をするたびに焼け付くように走る。

崩れ落ちた時にはもう意識も途切れていた。



病院。

真っ白な部屋のベッドに横たわる俺を、868のみんなが囲んでいた。


「……マーくん、大丈夫かなぁ」


紫水が椅子の背に腕を乗せて、弱々しく呟いた。


音鳴が額を押さえて、低い声で言う。


「すっげぇ顔色悪いぞ……こんなん、笑えねぇわ」


レダーは窓際に立ったまま、黙り込んでいた。

長い沈黙の後、ぽつりと吐き出す。


「……やっぱ、ケインのこと、伝えたのが悪かったかもしれねぇな」


その言葉に二人が顔を上げる。

音鳴が眉を寄せた。


「なぁ、結局さ。ケインが彼女できたって……ホントなん?」


レダーは視線を逸らし、腕を組んだ。


「いや、噂だよ。確かなもんじゃねぇ。でも……俺ら、あの二人の関係、知っちまってるだろ。隠せねぇよ、ジョアに」


そう――みんなは知っていた。

ケインがジョアを特別に想ってることも。

ジョアがずっとケインに惹かれてることも。


レダーがケインと電話した夜。


「ジョアさんのこと、ちゃんと見ててください。無理をしてないか……お願いします」


あの静かな声を、レダーは今も覚えている。


だからこそ、余計に苦しかった。


紫水が小さく唇を噛む。


「……ケインさん、なんで……“付き合おう”って言わなかったんすかね。関係も曖昧なまま、1年も離れ離れなんて……辛くないですか?」


音鳴が、少し考えるようにしてから答えた。


「……そうやなぁ。でも、ケインは“直接会って言いたい”んちゃうか。電話や手紙で済ませる人じゃないやろ」


紫水はうつむいて、ベッドのシーツを握った。


「……この背中の傷、ずっと残るんすよね」


重たい沈黙が、部屋を包む。

その言葉に、レダーが苦しげに息を吐いた。


「……ケインに、謝んねぇとな」


ベッドの上で眠るジョアの背中には、白い包帯が巻かれていた。

その下に、決して消えない傷が刻まれている。



ジョアは病室のベッドで、まだ深い眠りについていた。

夢の中では、ケインが街を去る前の光景が映し出されている。今までの思い出が、まるでジョアの心の奥を汲み取るかのように鮮明に蘇る。


夢の中でジョアは、必死にケインの傍に近づこうとする。しかし、近づくたびに離れてしまう。どれだけ手を伸ばしても届かず、初めて自分の中で抑えてきた気持ちが溢れそうになる。


口を開けようとするが声は出ず、涙だけが止めどなく流れる。


視点が急に変わり、病室の自分自身の姿が見える。ベッドの周りには、心配そうに見守る868のメンバーたちの顔があった。

その光景を見た瞬間、ジョアは胸の奥で何かが締め付けられるように感じた。


(――俺、今まで何をしてたんだろう……)


不意に、ジョアは目を覚ます。汗と涙でびっしょりになった顔を手でぬぐい、背中の痛みを感じながらベッドに座る。


『……あの、おはようございます』


小さな声で無線に入り、か細く挨拶する。


「ジョア!!!起きた!!?」


音鳴の声が大きく飛び込む。


「ジョア、おはよう」


レダーも安心した声で続けた。

「とりあえず迎えに行くから、待ってて」


ジョアはベッドから立ち上がり、病院のシャワー室で汗を流す。熱と涙でぐっしょりになった体を洗い流したあと、レダーの迎えを待つ。


やがてレダーの車が到着し、ジョアを乗せる。


「調子はどうだ?」


助手席に座るジョアに、レダーが声をかける。


ジョアは少し迷いながらも口を開く。


『……寝てる間、夢を見たんすよね。俺、何を信じればいいか分からなかったんです。でも、ちゃんと信じ合える仲間は居るって分かりました』


「そうか」


レダーは静かに頷く。


しばらく沈黙の後、急にレダーが口を開いた。


「そういや、俺ら二人の関係、知ってるんだよね」


ジョアは驚いて目を見開く。


『え、知ってたんですか?!』


レダーは少し微笑みながら説明する。


「ケインが街を去った日、電話でお前のこと、ちゃんと見てて欲しいって頼まれたんだ。あの日から、俺らもちゃんとお前のこと気にしてる」


『そ、そうっすね……』


ジョアは小さく頷きながら、胸の奥のもやもやが少しずつ解けていくのを感じた。


レダーは続ける。


「彼女の件は、俺らも真実かどうかは分からない。でも、ケインはちゃんとお前のこと想ってると思う。信じてみるのも、ありだと思うよ」


ジョアは、深く息を吐き出す。


『……はい。分かりました』


その日から、ジョアはもう無茶をせず、仲間と自分を信じて前に進む決意を固めた。


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