サイド タエ
逃げ出した先は、暗い路地裏だった。ここは不良もいないから安心して泣くことが出来る。
私はそっとコンクリートの上にしゃがみ込んで、俯いた。
人が、怖い。どうしても信じられない。何をすれば良いのかわからない。
…………きっと、私はずっと独りぼっちなんだ。親にさえ捨てられた私は、もう人と関わることすら難しいんだと思う。そう考えると、さらに涙が止まらなくなった。
「ぅ、……ヒクッ」
「……大丈夫か?」
「??!」
いきなり声をかけられて、心臓が止まりそうになった。
いつからいたのか、赤いパーカーを着た少年が私のことを見下ろしていた。その顔がダイキに瓜二つで、さらに驚いたことを覚えている。
「……ぁ、キノ君……?」
「!もしかして、弟の友達?!」
最初はダイチのこと、ダイキと間違えたんだっけ。本当に似ているもんね。
「……お、弟?」
「そっかそっか、友達かー!」
話が全く噛み合わなくて最初は混乱した。相手のペースについていけないって、こういうことを言うのかなって。
「アイツと、上手くやれてる?……もしかして、ダイキが君になんかした?」
「!……ち、違うの……。キノ君は、私を、た、助けて、くれて……」
私は、本当に少しずつだけど、ダイチに今までのことを話した。
いじめのこと、施設のこと、親がいない捨てられた要らない子だということ……。ダイチは静かに聴いてくれた。
そして、一言。
「要らない命なんてない……はず、なのにな」
世界は、生きづらくて、不平等だと思う。このときも、今も。
「そっか。……ダイキも君と似たような感じだから、シンパシー感じたんだと思う。出来ればダイキと友達になって欲しい」
「……キノ君と、私は、そんなに似てますか……?」
私はダイチにそう尋ねた。
少しの間の後、ダイチはゆっくりと口を開いた。
「……実はダイキ、病気持ちなんだ」
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