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サイド タエ
「キノ君が、病気持ち……?」
あんなに、ハキハキして元気なキノ君が?
「発達障がいの一種で、精神的な病気なんだ。生まれつきのもので、我慢が出来なかったり、歯に絹着せない物言いだったり……あと何かを覚えることが出来なかったり、すぐ忘れたり。これが一番ひどいな」
ダイチはゆっくり指を折りながら、ダイキの病気の症状を挙げる。
ふと、私の脳裏を過ぎったのはトイレに行き、行方不明だと騒ぎになりかけた今日の騒動だった。
確かに、あの行動は“普通”とは言いがたい……。けど……。
「俺は弟の症状を“個性”として見るよう、努力してる。でも……理解してくれる人って、なかなかいないもんだな」
弟のことを慈(いつく)しむように、何かを諦めたように……何処か遠くを見るように、ダイチは目を細めた。
思えば、もうこのときからダイチが死ぬ予兆みたいなものがあったのかもしれない。
でも、私はこの表情を、“苦笑い”だと思い込んでしまった。私が、一番気付けたはずなのに。
「わ、私はっ、キノ君の“個性”に、救われました……!だっだから、キノ君と、友達になりたい、友達でいたいです……!」
思わず大きな声を出した。私が大きな声を出せることにびっくりした。
「俺も、お前と友達になりてぇ!」
「??!」
突然、ダイキの声がした。瓜二つの顔が私の前に並ぶ。
「俺もお前も、モンダイジだけど、だからこそ俺らだけの居場所を作るんだ!」
二人は、そのためだけに親を説得して子供だけの暮らしをしているのだと言った。
「…………すごいなぁ」
私はポツリと呟いた。
「何言ってんだ!お前もこいよ!」
ダイキが太陽のような笑顔で、私の手を引いてくれた。あの瞬間(とき)から、私はきっと……。
「施設の方には、俺が言っておくよ。……えーっと、」
「……ユイカ、です。名字は、施設名と同じで、殆どの人と同じ“ナカザワ”です」
「みんな同じなのか?なら、変えられるなら変えた方がいいよな。希望とかある?」
……名字って、変えられるのかな?そう思いながらも少し考えた。
「……タエ」
「タエ?漢字は?どーやって書くんだ?!」
ダイキが思いっきり体を近づける。焦った私は、「ぇっと、えと……」なんて変な返事しか出来なかった。
「……決めてねぇなら、『田江』でいいか?!書きやすそうだし!」
「う、うん……!」
「じゃあ……タエ ユイカ、か」
「これからよろしくな!ユイカ!」