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そよ風に吹かれ、妄想をしていた私 ――紅葉はふと我に返った。
「はぁ… 雷くん、どこ行っちゃったんだろ?」
「知らねーよ……。」
「うちも知らない…。」
「この中に裏切り者が居るんだよね?」
「信じられないよ…。」
そう、仲間である雷くんは、昨日から行方不明になっているんだ。
何の言葉も残さず、忍者里(にんじゃざと)から去ってしまった。
忍者里は、私達忍者が住んでいる里の名前で、この6人の仲間と過ごしている。
――だけど、その6人の中に一人“裏切り者”が居るらしい…
本物の仲間はどこかに連れ去られていて、偽物を探し当てることが出来れば 本物は開放されるらしい。
だから私達は、雷くんと誰かを連れ去った偽物を、今すぐに探さなければならない。
そこで、あっちゃんこと亜衣奈ちゃんが 話を切り出した。
「じゃあさ、皆が好きな物を言い合う事にしない?」
「なんで?」
「そうすればさ、偽物は本物が好きな物を知らない訳じゃん?だから見抜けるんじゃ無いかなーって。」
「その案めっちゃ良い!」
「良いね!!」
皆この意見に賛成したから、それで探そうとする事にした。
―――まずこの案を出したあっちゃんが偽物とは考えにくいから、あっちゃんが皆の大好物を表にまとめ、皆に質問していった。
「じゃあ… みぃちゃん!みぃちゃんは何が好き??」
「翠ちゃんの好きな物は独特だからねー!」
そう言ったのは、蘭ちゃんだ。
「えっと…… 私が好きなのは……、 ジンジャーエール―― 、かな。」
「おっ、本物と同じだね! じゃあ偽物では無いか…。」
あっちゃんは、次々と指名していく。
「いつきくん!」
「―――!」
「もみちゃん!」
「―――!」
そうして、全員が言い終わった。
「うーん… 全員本物と大好物は同じだったね…。」
「偽物もちゃんと理解してるんだね――?」
「そうっぽいね―――。」
「___じゃあ、どうやって見抜くの―――?」
翠ちゃんは 丸眼鏡をクイッと上げてから、そう質問した。
「そうだなぁ―――。 偽物は絶対ミスを一つはするはずだから、ちょっと様子を見てみるかぁ。」
「うん、それが一番良いと思う。 今情報が少ない中で見つけるのは、たぶん不可能だから―――。」
「だね! じゃ、朝ご飯食べよっか!」
「うん!」
そして私達は、朝ご飯の支度を始めた。
―――まず、いつも朝ご飯を作るのは 料理好きな私。
だから、私はいつも通り準備を始めた。
「今日は何が良い?」
「卵焼きー!」
「オッケー!(ここもいつも通り、か…。)」
毎回ご飯は何が良いかと聞くと、大体はあっちゃんから返事が返ってくる。
あっちゃんは可能性が低いから、あんまり見なくて良さそう。
そんな事を考えている間に、オムライスが出来た。
ケチャップも添えて、完成だ!
「じゃあ、いっただっきまーす!!」
「う〜ん!美味しい〜〜!」
「―――美味しいね。」
「ね!」
「(ん……?)」
私はここで、ピンと来た気がした。
それは、翠ちゃんの言葉だ。
――翠ちゃんはいつも、本当に無言でご飯を食べている。
だけど、今日は少し発言が多い気がする。
―――そこまで隠しきれなかった偽物か……?
まぁ、ここで怪しむのは少し早いか。
そう思い、他の人の観察をした。
―――昼
あの後 特に何も怪しい言動は無く、普通に過ごしていた。
今疑いをかけているのは、翠ちゃんだ。
そして昼、私達は会議をする。
___私達はこの会議を、地獄の時間だと思っていた。
その恐怖心の元は、偽物からの手紙からだった。
“昼の会議では、怪しい人を話し合うこと。 そして誰かに投票して、その人を偽物と皆で断言する。”
“その偽物が外れた場合、メンバー全員が処刑される。 ただし、絶対に投票を行わなければならない。”
“一人に4票以上入らなかった場合、会議は終了だ。”
と記載されていたんだ。
一歩間違えれば、すぐに死ぬ………。
その恐怖から、皆は本当に入念に観察していた。
―――そして今、その時間がやって来た____。
進行を行うのは、頼もしい存在の蘭ちゃんだ。
「えぇ、今から昼の会議を始めます…。」
「お願いします―――。」
暗い雰囲気の中、私達は早速その話に移った。
「怪しい言動を取った人が居れば、誰か挙手してくれる?」
「…(ここで挙げるのは リスクがありすぎる…)」
それは皆同じで、誰も挙手はしなかった。
「それじゃあ、私から良い?」
「――どうぞ。」
蘭ちゃんは、一人を無言で指さした。
それは―――
「紅葉ちゃん、怪しい。」
「!(私…!?)」
まさか私とは思わず、緊張感が増す。
「朝食を作ってる時、いつもは自分の得意料理を振る舞うでしょ? なのに今日は、誰かに選ばせた。」
「つまりは、自分の好物を作ったら怪しまれるリスクが高まると思い、選ばせる行為を取った―――」
「って読み取れるかな、と。」
「(ちゃんと観察してる―――、、)」
もちろん私では無いけれど、ここで目立てば余計怪しまれる。
私は何も発さなかった。
―――すると、無言の中に いつきくんの声が響いた。
「逆に言うと、誰が何を選ぶかを手がかりに、怪しい人を探すために選ばせた―― というだけかも知れないよ?」
「……。」
その反論に、蘭ちゃんは口を開かない。
「(私の味方をするって事は――― いつきくんは、違うのかな…?)」
そんな中、あっちゃんがまた口を開いた。
「―――もう、投票に移らない?これ以上うちらがどうこう言った所で、怪しい言動は見れないと思うんだ。」
「そう、だね。移ろうか。」
「じゃあ、うちが紙配るから、この紙に投票する人の名前を書いて。」
「…分かった。」
―――しばらくが経ち、全員が投票箱に紙を入れ終わった。
「じゃあ、確認するね……?」
「せーの……っ」
『一川紅葉』 2票
『二十里蘭』1票
『四ヶ浦いつき』0票
『五宮翠』1票
『六倉亜衣奈』1票
「(私、あと二票で終わってた……)」
少し安心していると、蘭ちゃんが口を開いた。
「じゃあ、夕食食べよっか。」
「うん。」
私達は 気まずい空気のまま夕食を食べ、眠りについた―――。