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3人で屋台を周り遊んだ。度々視線を感じてその度に振り返るがこちらを見ている人は居ない。
気のせいだと思う事にし、祭りを楽しんだ。
家に帰り着いたのは23時近くだった。
朝いつものように目が覚め朝食の準備をする。
銀次さんと朝食を済ませ団子屋に仕事に行く。
ここまではいつも通りだった。
私が団子屋で仕事をしていると店に複数人の男性が入ってきた。着物の裾には菊の紋が刺繍されている 。
御家人「我らは都にある才川城から使いで来た者だ。」
佳代「栞、 頭を下げなさい!いいから!」
佳代は小さな声で私にそう言った。とても怖がっているように見えたので私もそれに従った。
御家人「今は仕事中か。ならば手が空くまで待ってやろう」
おじちゃん「有り難き幸せ。どうぞごゆっくりなされて下さいな。」
おじちゃんの顔も佳代と同様とても怯えていた。接客の間佳代に才川家の話を聞いたがあまりにも酷い話だった。
才川家は代々、大都市にある都で活動していたが才川家の殿様はその権力を振りかざし多くの平民を苦しめてきた。
気に入らない店は難癖をつけ潰して行き、気に入った町娘は皆強制的に連れて行かれたと言う。
佳代「あいつらは自分の利益と欲の為ならどんな手を使っても手に入れるの。そのせいで都で働きに出た知り合いが職を失い借金も背負わされて挙句の果てには自ら喉をかき切ったんだ。許せない…」
佳代は今にも殺しに掛かりそうなほど才川家に強い恨みを持っていた。だが、一度抗えば何をされるか分からない。それをこの町の皆は知っている。だからもてなす事しか出来ない。
佳代「どうする事も出来ないのが悔しい…」
佳代の話を聞いていく内に私も悔しくなってきた。とてもやるせない気分だ。
皆この御家人達の事を知っているからか菊の紋を見た瞬間逃げる様に帰っていく。客が1人も居なくなると家来の1人が口を開いた。
御家人「皆帰って行くではないか。ここの団子屋は素人が作っているのか?(笑)」
佳代「バカにっっっ!!」
佳代が発言しようとした瞬間後ろから銀次さんが口を塞いだ。
銀次「申し訳ございません。ですが、うちは素人ではなく立派な職人が作っておりますゆえ、どうかご理解いただけないでしょうか」
御家人「フン!平民の分際で口答えとは生意気な!まあいい。話があるのはこんな店では無くそこの娘だ」
そう言うと御家人は私を指さす。
御家人「お前の事は昨日から監視をつけていた。何せ偶然ここを訪れた際、我らのうちの1人が竹藪で妙な成りをした女が倒れていたと聞いてな。」
(銀次さんと出会う前にあそこに誰か居たのか。それに昨日感じた視線はこの人達だったのか)
御家人「旗本の1人に報告したら瞬く間に城中で噂になってしまった。その噂が殿様の耳にも入り、連れてこいとの事だ。殿様の命は絶対だ。我らと共に来い」
栞「もし断ったら…どうなるんですか…」
御家人「さぁな、ただ痛い目を見ることは確かだ。」
本心を言えば【行きたくない】が、ここで断わってしまうと後に痛い目に会うことは確かだ。
ならば従うしかない。
栞「わかりました。行きます 」
御家人「良い判断だと思うぞ」
栞「銀次さん、佳代、おじちゃん、おばちゃん。私、行ってきます!」
佳代「栞…ぅ…行かないで…。行かないでよ……っ…」
佳代は泣きながら振り絞った声でそう言った。
栞「ごめんね佳代。必ずまた戻ってくるから。だから 泣かないで」
銀次「必ず戻ってこい。俺たちはここで栞を待ってるからな。」
銀次さんはそう言いながら私を強く抱き締めた。
店を出て馬車に乗る。後ろを振り返ると佳代は泣き崩れておりそれをおばちゃん達が支えていた。
銀次「しおりーーー!!!必ず、必ず無事で帰って来ーーーーい!!!!」
後ろから銀次さんの叫び声がした。その声を背中で感じながら1人声を押し殺して泣いた。