テラーノベル
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耳朶に響きわたる空気の振動。
まるで安心感のある大きな手で頭を優しく撫でられているかのように、不安や悩みの全てが消し去るような音が部屋中にこだまする。 窓から差し込む日がカーテンを透かして、彼女の横顔をライトアップする。鍵盤が彼女の体と一体化して、迷いなく滑らかに指を遊ばせる。スケートリングで踊っているかのように、 まるで大自然の風や海、鳥の囀り、草木が風に吹かれる音のように、心地の良い旋律。部屋に響く鍵盤一つ一つのメロディーは、彼女の心のように温かく繊細に僕たちの心と繋がる。
彼女の演奏が終わると、部屋にいた子供と大人は余韻に浸っていた。一瞬遅れて力強い拍手をした。彼女はにこやかに笑いながら、椅子から降り、みんなにお辞儀をした。
演奏を聴いた小学2年生ぐらいの少女が興奮気味に立って、彼女の元へ行き尋ねた。
「おねちゃんってすごいね!!もう一回だけ弾いてー。おねがぁーい。 」
彼女は少し困った様子で、また今度ね、と屈んで優しく少女に言った。
「美玖の演奏はやっぱすげぇな」
僕は美玖に言った。
「それだけ?笑 」
しかし美玖は嬉しそうに目元を和らげる。
美玖は昔とはずいぶん変わった。彼女の顔をみながら、僕もそんな彼女と一歩前に進むことができたと思う。彼女にはまだまだ及ばないけど、横にいられるぐらい成長した。
僕は彼女の手を握り、ドアを開ける。
一歩踏み出し、燦々と輝く太陽が僕たちを照らす。
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