テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
都内の一等地に聳え立つ、大きな高級タワーマンション。
その8階には、それぞれ仲の良い三兄弟が住んでいました。
実は家庭ごとに事情があり、両親は部屋にほとんど帰って来ることはありません。
ですが、9人はそんな大人の事情など露知らず、仲良く暮らしているのでした。
それでは、そんな日常を少し覗いてみましょうか。
💚side
僕の名前は亮平。僕には2人のお兄ちゃんがいる。
名前は、辰哉と大介。
普段は、にぃにって呼んでる(呼ばされてる)
まあ、変わり者なんだよね。ふたりとも。
僕はそんな2人の愛情をたっぷり受けて、おかげですっかり大きくなった。
なのでそんな呼び方は最近自分でもすごく気にくわなくなってきたんだ。思春期ってやつだね。
ということで、今日はにぃにって呼び方を捨てる決意をした。
僕は決めたことはやりとげるタイプ。
ふたりにどんなことを言われたって、揺らがない自信が、今の僕にはある。
🩷たっだいまー!!りょーへー!
そんなことを考えていたら、大介にぃ…まちがえた。大介が帰ってきた。
今日もうるさ…じゃなくて。面白い人だ。
🩷亮平?どしたぁ?具合でも悪い?
💚ううん。にぃに、じゃなくて。だ…
🩷だ?
💚だっ、大介…!
🩷おお!?どした!?!
💚今日は僕、にぃにって言わないもん!
🩷side
🩷えぇ!?!
兄ちゃんに内緒で行っていたアニメイトから帰ってくると、大好きな弟が突然、反抗期になっていた。
💚僕、もう10歳だし。にぃ…大介より勉強とくいだし。なめられたくない。
🩷いや誰も舐めてはないと思うけどな…
💚僕はいやなの!
🩷えー?もうにぃにって言ってくれないのー?
💚うん!!
🩷えーーにぃに寂しいなぁ…
💚うっ…
「にぃに」以外の呼び方を生まれてはじめてしたからか、亮平の仕草から慣れていないことかわかる。
それに、俺に対してどこか後ろめたそうだ。
頑張って俺に冷たくしようとする姿も、可愛いと思っちゃう。
🩷(これって俺けっこう重傷なブラコンだよな~)
💚もう!なんでニヤニヤしてるの!
🩷今日も亮平がかわいいな~と思って!
💚…/////
🩷ご飯食べよっか!辰哉まだ来ないみたいだし。
💚うん…
辰哉と一緒に夜ごはん食べられない、って知った亮平はちょっと寂しそう。
なんだ。やっぱ俺たちのこと大好きなんじゃん。
🩷LINEしてみるな。お皿並べて待っててくれる?
💚うん!大介は手伝わなくていいからね!
🩷おう笑
スマホを操作して、辰哉へメッセージを送る。
すると、秒で既読がついた。
<辰哉とのトーク画面>
🩷「おい辰哉」
💜「なに?」
🩷「亮平が反抗期突入」「早く帰ってこい」
💜「え!!?!マジすか」
🩷「マジ!正直めっちゃかわいい」
💜「うわ早く見たい」
🩷「あと10分で帰ってこないと亮平のさみしがり屋発動するぞ」
💜「あと1秒で帰宅します!隊長!」
🩷「よろしい」
🩷りょーへー!辰哉もうちょいで帰ってくるってよ。
💚ほんと!!
🩷おう!ご飯つくって、待ってよっか。
💚うん!
その5分後ぐらいに、辰哉の声が玄関から聴こえてきた。
💜ただいまー!!あ”ー疲れたー。
💚お帰り!辰にぃ!
💜(あれ?反抗期は??)
亮平は、身に染みついてしまったのか、会えなかった時間が寂しかったのか、いつも通りのキラキラスマイルで長男と接している。
そんな末っ子を見て、長男もいつも通りのデレデレ振りを発揮してる。
💜あれ亮平、今日いつもより素直だね。
💚はっ!!!
💜とりあえず可愛いからぎゅーさせて~
💚その手には乗らないぞ!子供扱いしないで!!
💜エッ 俺の癒し…
ほっぺをぷくーっと膨らませた亮平は、逃げるようにキッチンに駆けこんだ。
💚辰哉!イチャイチャしてるひまがあるなら、ごはんつくるの!!
💜…はーい。
見事にフラれた辰哉は、がっくりと肩を落とした。
💜side
今年受験生の俺は、塾に3時間も監禁され、やっと夜7時過ぎに帰ってきた。
今日は金曜日だし、弟たちとご飯食べて寝るだけ…と思っていたが、そんな弟の一人が反抗期になっていた。
大介から連絡が来て内心楽しみにしていたものの、いざそっけない態度をとられると、慣れていなくてちょっと傷ついた。
でもそんなツンツンした態度もかわいいと思う、新しい扉を開きそうな自分がいた。
自分の部屋に荷物を置いて、手を洗う。
今日のメニューは、亮平の大好きなカレーライス。
俺たちはそこまで料理はできないが、協力して簡単なものなら作れるようになった。
昨日のうちに下ごしらえはしてあるけど、カレーは時間がかかるから、作るのはちょっと苦手だ。
でも弟たちの笑顔が見られるなら、俺はなんだってできる。
当の本人はニッコニコでカレーを混ぜている。
煮込まれているカレーもきっと大喜びだろう。というか、俺がその中のじゃがいもになりたい。
その横で俺を引き気味に見ている大介も、(俺にだけ)反抗期の真っ只中だ。
💜いやー。亮平も反抗期なんて寂しいなぁ~
💚う…
💜俺のこと嫌いになっちゃったの?
💚〰〰もん
🩷ん?なんて?
💚だって、ふたりとも僕のこといやになったんでしょ…
泣きそうな顔をして、亮平は走って自分の部屋へ行ってしまった。
🩷亮平…
遠ざかっていく小さな背中を見つめる大介は、少し瞳が潤んでいる。
そりゃそうだよな。たったひとりの弟に冷たくされたら不安になる。
🩷辰哉ぁ、おれ亮平になんかしたっけ。ずっとこのままなんて、俺やだよぉ…
安心させようと、泣き出してしまった大介を腕の中に引き寄せる。
💜…心配だよな。でも大丈夫。2人は優しい子だからきっと仲直りできるよ。
🩷うん…俺、亮平にカレー持ってく。
💜そうだな。俺も何が嫌だったのかちゃんと聞かないと。
大介は、トレイにカレーの盛られた大皿を載せて、亮平の部屋のドアを開いた。
俺もその後ろについていく。
🩷亮平、カレー食べよう。
💜さっきはごめんな。大丈夫?
部屋の中で、クッションに顔を埋めていた亮平が顔を上げた。
短時間の中でも号泣したのか、目が真っ赤だ。
俺はそっと近づいて、その小さな肩を腕の中に収める。
💜亮平。何が嫌だったのか、教えてくれないかな。俺も大介も、亮平がいないとすごく寂しいんだ。
大介もトレイを置いて、俺たちに駆け寄った。
鼻をすすりながら、ぽつぽつと亮平は話し始める。
💚…グスン。ぼくね、今日、ひとりでお留守番さみしかったの。
💜うん。
💚最近、にぃにたち忙しそうで、僕ひとりでさみしかったの。お留守番すごくやだったの…
💜そうだったんだね。
💚うん。だから、ひとりの時、にぃにたち僕のこと嫌いになったのかなって、思ったの…
俺の胸に顔を擦り寄せて、亮平はまたぽろぽろと涙を溢した。大介は、その隣で亮平の頭を優しく撫でている。
💜嫌いになんて、なるわけないよ。
🩷そうだよ!俺たち、何よりも亮平が大好きなんだよ!!
💚そぅなの…?
💜🩷もちろん!!
💚うぅぅ~にぃに…
🩷寂しくさせてごめんなぁ。
💜これからは、絶対亮平がひとりにならないようにするから。それでもさみしかったらいつでも言えよ!
💚うん…。僕のほうこそごめんなさい。
🩷いいんだよ~良かった。亮平に嫌われてなくて。
💜うん!ちゃんと仲直りできて偉い!
俺がふたりの頭を撫で回すと、くすぐったそうに笑った。
やっと、いつもの雰囲気が戻ってきた気がする。
💚あのね。にぃにたち。
💜🩷?
💚ぼく、ふたりが大好き!!
大介と2人で顔を見合わせる。
今まで見てきた中でトップクラスの笑顔の亮平を、2人は全力で抱き締める。
💚ちょっとぉ…苦しいよぉ笑
🩷俺もだーい好きだぁー!!
💜もーかっっわいいなぁ!ふたりとも、今日は久しぶりに一緒に寝るか!
🩷おぉ!いいね!
💚ぼく真ん中でねたい。
💜よし、まずはカレー食べるか!!
💚🩷わーい!!
3人でたっぷり盛られたカレーを平らげ、お風呂に入って、俺の部屋へ布団を運ぶ。
亮平を真ん中にして、川の字になって寝転ぶ。最近は別々の部屋で寝ていたから、3人で眠るのは数年振りだ。
🩷なんか、懐かしいね。
ねー、と薄暗い部屋の中で微笑みあう。
💚ね、にぃに。おやすみのちゅーして。
🩷へっ?
💜え”!?
💚だめ、かなぁ?
唐突なお願いと共に、こてん、と亮平が首を傾げる。
🩷もー!!あざとい警察!逮捕ー!!
💚きゃーっ!笑
2人はくすぐりあって大爆笑。
俺は亮平の言葉をうまく飲み込めずにひとり戸惑った。
💜ちゅーしてなんて、どうして急に?
💚だって、久しぶりにしてほしいなーって思ったの。
眠いからか、亮平の言葉はふわふわしている。
🩷じゃー俺がちゅーしちゃうぞ!
💚ん!
🩷亮平、おやすみ。大好きだよ。
可愛らしいリップ音が隣で響く。
💚ふふっ♡俺も大にぃがだーい好き。
🩷えへへぇ♡
2人はまだ幼いし、仲の良い兄弟だから何のためらいもないのだろう。
でも、俺はもう中学生だ。当たり前に思春期でもある。
愛する弟であれど、キスという行為はどうしても意識してしまう。
そりゃ昔は毎晩2人にしたけど、今とは違う、軽い気持ちだった。
💚辰にぃはしないの?
🩷してやれよぉ。昔はしてたじゃん?
💜い、いまやるよ。もちろん嫌とかじゃない。全然ない。
💚じゃーおいでっ!
亮平が俺に抱きついてくる。
近づけられたその顔は、俺が思ったよりもずっと成長していて、大人に近かった。
長いまつげが伏せられて、亮平は目を閉じる。
さくらんぼみたいな赤くてぷっくりした唇が、暗い室内でもわかる。
思わず唾を飲み込み、顔を引き寄せて小さな唇にそっと唇を重ねる。
💜おやすみ、亮平。
顔が離れて、亮平はにこっと笑った。
💚じゃあにぃにたち、おやすみぃ。
🩷うんおやすみ!
💜良い夢見ろよ~
しばらくして、ふたりの寝息が聴こえてくる。
俺はまだ寝付けずにいた。
そういえば、大介には「お休みのキス」をしていない。
でも、ちゃんと2人にしないと平等じゃないよな。
寝てるけどいっか、と起き上がって大介に顔を近づける。
すやすやと寝息をたてる大介も、小さかった頃に比べて随分と大人になった。
寝相が悪いせいでパジャマがはだけて、胸元にあるハート形のほくろが見えている。
それを直して掛け布団をかけ直してやると、ちょっとだけ大介の目蓋が動いたので焦った。
綺麗なピンク色の唇にキスを落とす。
💜おやすみ、大介。
自分の枕にダイブして、目を閉じる。
ふたりとも大人になってきたよな、と笑うと、ようやく俺にも眠気が訪れた。
きっと、今日は良い夢が見られる気がする。
夢の中にも、ふたりが出てきたらいいなと思いながら、俺はゆっくりと意識を手放していった。
End 💜🩷💚
Next・803号室 ❤️💙🧡