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#ネタ系
時は三十年前——
カンレイ全土は、終わりなき戦乱のただ中にあった。
その混沌の時代において、ひときわ強大な力を誇っていた国が二つある。
一つは、軍事と富で他国を圧倒する強国レンニー。
そしてもう一つが、近年急速に力を伸ばし、レンニーと一二を争うまでに至ったカンジュ国であった。
そのレンニー王宮の玉座の前。
冷たい石床に膝をつき、深く頭を垂れる一人の男がいた。
男の名はケイシ。
カンジュ国最強と謳われる武将——
そして後に、セイカとユイという二人の運命を生む父である。
玉座に座すレンニー王が、低く静かな声で問いかけた。
「……カンジュの最強武将が、何の用だ」
その一言に、広間の空気が張りつめる。
ケイシは顔を上げ、覚悟を宿した真っ直ぐな眼差しで王を見据えた。
「レンニー王。本日は、ひとつお願いがあり参りました」
王の視線が鋭くなる。
「申せ」
「レンニーの亡き大将軍ザッハ殿。その未亡人リーシ様に、婚姻の申し出をさせていただきたく存じます」
一瞬の静寂。
次の瞬間——
「なに…?」
レンニー王の声と同時に、広間に集う重臣たちがどよめいた。
「正気か、ケイシ!」
「リーシ様だと…!」
レンニー王は玉座から身を乗り出し、怒気を含んだ声を放つ。
「お前は、自分が何を口にしているのか分かっているのか。
リーシはレンニーの宝石、いや、カンレイ全土の宝石と称される女だ。
そのリーシを、レンニーが手放すとでも思うか!」
その威圧にも、ケイシは一歩も引かなかった。
「ザッハ大将軍の葬儀の折、初めてお姿を拝見しました。
その瞬間から……私は、リーシ様に心を奪われました」
重臣たちが息を呑む。
「私の妻は、リーシ様以外には考えられません。
どのような代償を払おうとも、私は必ずリーシ様を迎え入れたい」
「……代償、だと?」
レンニー王はしばし沈黙し、やがて低く問い返した。
「そなたの言う“犠牲”とは、何だ?」
ケイシは一瞬も迷わなかった。
「私とリーシ様が婚姻を結んだ暁には、
カンジュ国は今後一切、レンニーに刃を向けることはありません。
無論、この決断については、すでにカンジュ国王の了承も得ております」
ざわめきが、さらに大きくなる。
カンジュ国は、すでにケイシの武力と人望によって、レンニーに匹敵するほどの強国へと成長していた。
そのカンジュが永遠の不可侵を誓う——
それがどれほどの意味を持つか、誰の目にも明らかだった。
カンジュ王にとっても、ケイシの願いを退けることはできなかった。
そして何より、「カンレイの宝石」と称されるリーシを迎え入れることは、国としての誇りでもあった。
レンニー王は深く息をつき、静かに口を開いた。
「……そうか。
それはまた、随分と思い切った決断をしたものだな、ケイシ」
しばしの沈黙の後、王は言葉を続けた。
「よかろう。
だがな…たとえ夫を失った未亡人とはいえ、リーシはレンニーの姫。
我が国の誇りであり、宝だ」
王の視線が鋭くなる。
「すべては、リーシ本人の気持ち次第としよう」
ケイシは深く頭を下げた。
「はっ!
寛大なるお言葉、心より感謝いたします!」
こうして——
武将ケイシと、カンレイの宝石リーシ。
二人の見合いは、歴史の歯車に静かに組み込まれていく。
やがて生まれる二人の子が、
愛と死と運命に翻弄されることを——
この時、誰一人として知る由もなかった。