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サイアクだ。
仕事終わりに一杯やろうと思い立って、
久々にグリルビーズへ行ったはいいものの。
連れがいないのを良いことに言い寄ってくる奴らの鬱陶しさと来たらありゃしねえ。
前までの俺とはちげえんだ。
俺が抱くのはアイツだけって決めたんだよ。
「あ゛ー…クソダリィ…」
悪態を吐きながら雪の道を歩く。
気分を害されたものの、俺のクチは酒の気分のままで。
──そうだ。
不安定な魔力をどうにか集中させて、
“ちかみち”を使った。
こちらも随分と久しぶりに見る光景だ。
俺のとこのグリルビーズに似ているが、やはり少し違う。
グリルビーの色とか、客の雰囲気とか。
一番の違いと言えば、コイツがいる事かな。
カウンター席に座る青いパーカーのスケルトンの方へと迷いなく歩いていく。
この世界じゃ珍しいイカつい格好の俺に、他の客は驚くように視線を集める。
ソイツはそんな客の様子に気付いたのか、俺の方に振り返った。
「おお、ええっと…アンタは…フェル、だっけ?
ここ、座りなよ。」
思い出すような仕草をしながら
隣の席へと俺を促す。
「…ブーブークッションとか仕掛けてねぇだろうな。」
「へへ、どうだろうな。」
ニヤニヤと笑うその骨を疑いつつも椅子に腰掛ける。
「すまんな。こうも突然おんなじ顔がいくつも現れると、名前を覚えるのにも”骨”が折れるってやつさ。」
俺が席に着いたのも束の間、お得意のジョークをかましてきやがった。
少し引いたような顔をすれば、そこは笑うところだぜ、なんてけらけら笑う。
「なに〜?サンズの知り合い?」
「めっちゃ似てんじゃん〜」
オリジナルが特に怯えず話すのを見てか、
周りの客も緊張を解いて話し始める。
まったく。平和なもんだぜ。
隣の骨はまた楽しそうに笑いながらジョークを連発してた。
誰とでも親しく話す姿はあまり気に入らない。
別にコイツは俺のじゃねえのに。
「あ、アンタもなんか頼むか?
オイラが奢ってやるぜ。」
「別にいい。お前『ツケで。』とか言うんだろ。自分の金で呑むわ」
「へへ、正解。」
ニタニタと嬉しそうに笑っているソイツを横目に、赤い炎に包まれたバーテンに酒を頼む。
差し出された淡い緑の酒に口をつければ、
爽やかなジンとライムの味が口に広がった。
舌の作り方、研究しといてよかったな、とか思いながら久々の酒の味と陶酔感に浸る。
ふと横を見れば、赤いケチャップのボトルをちゅうちゅう吸ってるオリジナル。
は?なんだその口くそかわいい。
好きだったやつとおんなじ顔なんだから少しのトキメキを感じるくらい許してほしいもんだ。
「ん?どうしたんだ?」
「や、別に。」
やっべ。見すぎたかな。
「そういや、アンタもこういうとこ来るんだな。」
「あ?」
「いや、なんかもっとガラの悪い店に通ってそうだなと思って。
ほら、アンタイカつい見た目してるし。」
「通ってねぇよ。……まあ、お前に言わせるなら”ほねやすめ”ってやつだ。
俺んとこは常に気が抜けねぇからな。」
俺のジョークがツボだったのか、オリジナルは声をあげて笑った。
「へへ…アンタ、結構面白いんだな。
もっと怖いやつだと思ってたよ。」
あー腹いたい。なんて言うもんだから、
スケルトンに腹なんてねぇだろ。とか返したらまた笑ってた。
コイツのツボは一生理解できねぇ。
その後は弟のことだとかジョークだとか、またくだらない話を続けた。
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「あ、そろそろ帰んないと。うちのリアルスターに読み聞かせしなきゃいけないんだ。」
「そういうとこは律儀だな。
そんじゃ俺もそろそろ帰るわ。」
案の定オリジナルは『ツケで。』とバーテンに言い放ち、扉の方へと向かっていった。
「楽しかったぜ。じゃあな。」
扉を開けることなく消えたソイツに続き、
金を置いて店を後にする。
酔い覚ましがてら少し歩くか。
冷たい空気が骨身に染みる。
……アイツのジョーク、移っちまったかな。
コアの光も落ち、夜を迎えるスノーフルは一段と静かだ。
風で舞い上がった雪に混じって、
雪じゃない、でもそれに似た何かが骨の肌を掠めた気がした。