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#恋愛
#長編
《聖夜の鐘祭》。
ペルニーア小国の中央広場には時計塔がそびえ立ち、その最上階には七つの鐘が設置されている。毎日朝と昼と夜に鐘を鳴らすのだが、年の終わりには七つの鐘を同時に鳴らして、年の始まりに同じく七つの鐘を鳴らして空に花火を打ち明けるという。
花火はどれも芸術品で美しい。その光景を眺めつつ、天馬の馬車で私たちはペルニーア小国に訪れた。
(わあ。天馬の馬車なんてすごい!)
馬車内は空間魔法で拡張しているのかかなり広く、客室のように広い。窓の外を眺めつつ、決着を付けるためベルニーア小国に乗り込んだ。
祭り騒ぎで街灯だけではなく、家の明かりも多くとても綺麗だった。
「ルティ。見てください。とっても素敵ですよ」
「馬車の外を見て楽しそうなシズクが可愛い」
「私ではなく」
「シズクが可愛い」
私を膝の上に乗せて上機嫌のルティは通常通りだ。なんだか新婚旅行とか婚前旅行とか浮かれているルティとは対象的に、エディ様たちは少し緊張した面持ちだった。
(ルティがいれば何とかなる……はず)
***
突然の天狐族の来訪に、ペルニーア小国の王ディアス様は驚きながらも出迎えた。くすんだ金髪に、ふっくらとした中年の男性で、身綺麗ではあるが淀んだ瞳に、権力者にはペコペコする姿はなんというか器の程度が知れた。エディ様たちは私たちの従者として神官風の服装で変装して付いて来ている。
「これは、これは! 天狐人様とお会いできて光栄でございます!」
「近くまで寄ったので、妻と挨拶に寄っただけだ」
「それは、それは! なんと素晴らしいことでしょう!」
(妻って設定だけれど、慣れないから恥ずかしい! 照れちゃう)
私はルティにエスコートされて、Aラインのドレスに身を包んでいる。髪も結って貰い、ルティと並んでも見劣りしないぐらいには化けたと思う。たぶん。もっともブリジットよりも胸や色気はないけれど。悲しい。
そんなルティは片方の角が折れてしまっていても、正装した姿は目が潰れそうな程美しくて、素敵だった。私もルティに負けないように天馬の馬車で移動中は褒めちぎったので、ルティはいつになくご機嫌だった。
王家主催のパーティー会場に突如現れた天狐族を見て、貴族たちは目を見開き歓喜の声を上げた。この時代でも天狐族に対する羨望は変わっていないようだ。
「みな、新たな年を迎えた今日この日に、またとない高貴なる方々をお招きすることができた! 天狐様とその奥方に拍手を!」
盛大な拍手に対して、ルティは口を開いた。ディアス様を含めた王国貴族たちは祝福の言葉を期待していただろう。
けれど──。
「今日、ここに私が訪れたのは、この国の何者かが私の《片翼》である愛しい妻に危害を加えようとしたからだ。よくも《片翼》を狙うなどと愚行を思いついたものだ」
「……ぇ?」
沈黙。
声を荒げたわけでもないが、一瞬でその場を凍り付かせる空気にパーティー会場が静まりかえった。隣に立っていても、ルティがもの凄く怒っているのが肌で感じる。
(すぐ傍に居ると余計に圧を肌で感じる……っ)
その殺意は夢で見た──私が死んだ日に似ていた。私を失うかもしれない、損なうかもしれない。それだけでルティ様は簡単に小国を滅ぼすと決断してしまう。
苛烈で深い愛情を持つ四大種族を、人族も侮っていたのだろう。人族の《片翼》は人身御供で、贄だから、と利用した末路が、これだ。
「──っ」
ふわっ、とモフモフの白銀の尻尾が私の身体を包む。「怖くないよ」とか「シズクを傷つけない」という思いが伝わってきて、泣きそうになる。私は咄嗟にルティの腕に引っ付いて身を預けた。尻尾が逆立ったけれどすぐによりぎゅうぎゅうに私を包んでくる。
少しだけ殺気が抑えられた気がした。
「人族にとって《片翼》の重要さを理解していないようだったので、これを機に自分たちがどれほど愚かなことをしたのか、身をもっていると良い」
「な、ま、お待ちください! 何のことを」
「叔父上、全て天は見ているのです。そして私を殺そうとして簒奪した玉座を、天は認めなかった。そういうことです」
神官の一人に扮していたカシミロ殿下は認識阻害の魔導具を取り外して、その姿を現す。それと同時にエディ様とジーナ王女も本来の姿を見せた。突然の王子と次期宰相、そして鳥竜族の姿に困惑と動揺が走る。
「なっ、カシミロ!?」
「王子が健在だった?」
「事故死というのは嘘だったのか?」
ざわつく貴族たちにカシミロ殿下は、堂々と今回のことを語った。鳥竜族の第八王女ジーナがエディを《片翼》と選んだことを知って、王子諸共事故に見せかけて殺す算段だったこと、わざと騎士団と分断したこと、《片翼》の一途さを利用して王子に呪いを掛けていたことも淡々と説明し、ディアス様の顔色は真っ青から土色に変わっていた。
「この小国を滅ぼしても、私の怒りは収まらない」
「ルティ」
シナリオでは私がルティに抱きつくあるいは接触することで止める手はずなのだが、既にくっ付いている。
ここはアドリブで行くしかない、と背伸びをして頬にキスをしてみた。
「え」
ぼん、と顔を真っ赤にするルティにキュンとしてしまい、そのまま抱きついた。ルティはぎゅうぎゅうに私を抱きしめる。尻尾も機嫌がよいのか揺らいでる。
コメント
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第45話、拝読しました! 天馬の馬車でのほのぼのしたやり取りから一転、ルティ様の怒りが会場を凍らせる緊迫感、すごかったです。でも「既にくっついてるからアドリブで頬にキス」っていうシズクさんの機転、可愛すぎます。尻尾が機嫌よく揺れてる描写にほっこりしました。怒りと愛情の両方が同じ人から出てくる、その温度差がとても魅力的でした✨