テラーノベル
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#恋愛
#長編
「コホン。……幸いなことに私の妻は寛大で慈悲深い。主犯だけに罰を与えるべきだと懇々と諭した。妻が……可愛すぎる。このまま部屋に連れ去って──」
「ルティ……!」
「──っ、あー。だから簒奪王、お前と《片翼》を害する術式を作り上げた──そこの魔女、そして裏で糸を引いていた現皇帝のみ。滅ぼすだけで済ませてやる」
「お、お許しを、どうか──ああああああああああ!」
瞬時にディアス様の体が石化して崩れていく。あまりにもあっけなく人の命が途絶えたことに驚き、ルティにしがみつく。モフモフな九つの尾が私を労るようにすり寄る。モフモフ最高。
「次は魔女だな」
「わ、私は依頼されただけですわ!」
突然気が狂ったかのように叫んだのは、漆黒の服に身を包んだ魔女だった。とても美しい月の女神のような女性の傍には、幾人もの騎士が控えていた。
「どのような結末を迎えるのか、魔女が知らないとでも?」
「わ、私を殺すのなら、貴方様の《片翼》に死よりも恐ろしい呪いを掛けて差し上げますわ! 呪いであれば、私のほうが一日の長がありますもの!」
何もないところから巨大な杖を取り出して術式を編み込む。悍ましくも黒々とした光の魔法円が幾重にも展開する。
それに対してルティが本気で怒っているのが分かった。
「ルティ、この国を滅ぼすのはダメですわ!」
「シズク」
「そもそも呪いごときに、私が屈するとでもお思いですか!?」
正直、呪いなんてちっとも怖くないが、万が一にも私が害されれば、今度こそルティは狂ってしまうかもしれない。すでにいろいろ拗らせているのだ、これ以上は絶対に不味い。というかそんなゴタゴタや面倒には巻き込まれたくない。
今世はルティとほのぼのライフを満喫するのだ。呪いだとかにかまけている時間は一秒だってない。
「今世で私はルティと幸せになるのですから! 呪いごときが邪魔をなさらないで!」
「シズク、……惚れ直しました。愛している、結婚しましょう」
「んんっ、(こんな時にキス!?)……ッ」
啄むようなキスを重ねて、深いキスに変わっていく。公衆の面前での濃厚なキスに頭がクラクラしそうだ。なんとかルティを押しやって、唇を離す。
「ルティ、……っ、空気を読んでください! それとすでに結婚していますから(設定上は!)」
「仕方が無いだろう。さきほどシズクからキスをされてすごく、すごく我慢したのですよ? 今だってもっと触れたいのに我慢しているのです」
(これで我慢!?)
「そこまで言うのなら、私の呪いを受け──」
パチン、とルティが指を鳴らしただけで、複雑な幾何学模様と魔法円がガラス細工のように砕け散った。
「へ?」
「お前はもう黙れ」
「あ、あああっ……」
(びっくりするぐらい心配する必要なかった! そしてキスの邪魔をされたことでものすごく怒っているルティによく話しかけたわね……)
「その程度でよく私に挑んだな。私からお前に呪いを返しておいてやる。お前の魂が滅びるまで何度でも絶望するがいい」
「あ、あああああああああああああああ……」
ディアス様と同じく肉体が石化してあっという間に砕けてしまった。魂と思われる光も石化して塵芥となって消え去る。
「次は皇帝だな。アレは百年前の約定も守れなかったのだ、毒が全身に回って数時間後には死ぬだろう」
(容赦ない! 知っていたけれど!)
静寂。
ガチの報復に人々は慄いた。そして身をもって《片翼》に害をすることが何を意味するのか、人族が魂に刻んだ瞬間でもあった。
これ以降、《片翼》を政治的に利用することすら危ういという話が大いに広がった。恋愛小説、劇場、吟遊詩人による歌で知れ渡ることになるのだが、それはまた別の話。
「簒奪王と魔女、そして黒幕だった皇帝は天の捌きを受けた。以後は私がこの王としてこの国を支える。私には次期宰相となるエディ、そしてその片翼となるジーナ王女。彼女の鳥竜族からの支持も得た」
「私がカシミロ・ペルニーアを次の王と認める。異論がある者は前に出ろ。今、出てこずにこの男を害する者は皇帝と同じように毒で死ぬ。そして新たな王よ、お前も良き王でなければ──分かっているな」
カシミロ殿下は片膝を突いて深々と頭を下げた。貴族たちもそれになって頭を下げる。
「委細承知しました。此度は我が国の問題に尽力して頂き、感謝の言葉もありません」
この辺りはシナリオ通りで、その後パーティーも継続して続ける形で幕を下ろした。簒奪王と新たな王の即位というニュースは瞬く間に国に広がり、帝国も届いた。
同時刻、皇帝が突如毒に犯され数時間後に死亡。場は騒然となったが、天狐族の怒りに触れたとルティの眷族──四足獣の登場で、混乱は最低限で済んだらしい。
コメント
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あさぎかなさん、第46話読み終えました。ルティの「妻が可愛すぎる」からの一転、冷酷な報復のギャップが凄まじかったです。シズクが「呪いごときに屈しない」と啖呵を切る場面、胸が熱くなりました。公衆の面前でのキスに照れる二人のやりとりもほっこり。ルティの「惚れ直しました」は笑った。世界観の整合性もバッチリで、次が楽しみです!