テラーノベル
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今すぐにでも辞めさせたい所だが、彼女の事情も知らずただ頭ごなしに「身体を売るなんて良くないことだから止めなさい。」などと、無責任な事を言うわけにはいかない。
彼女と俺は、コンカフェのキャストと客という関係性である。彼女にお金を払う代わりに彼女にサービスをして貰っていという点で、俺とマイのパパに違いはない。”コミュニケーションを楽しんでいる”のか”性的サービスを受けている”のか……その程度の違いしかないのだ。そんな俺に、彼女を注意する資格があるのだろうか?
俺は彼女の言葉を聞いて、ただ彼女の事を眺めることしか出来なかった。
◆◆◆◆
目を腫らせながら手を振る彼女を見送った。その後、どこかに寄ろうかと考えたが、とてもそんな気にはなれず素直に自宅へと帰宅した。
PCを開き頭を悩ませるが、全く集中が出来ず小説の執筆は全然進まない。頭の整理は散歩をする前よりも酷くなったようだ。それにWEBブラウザを立ち上げて、何度もマイの事を検索してしまう。
SNSはアイさんとミィに見せられた時から変化はなく相変わらず酷い書き込みばかりだ。しかし、それを見る俺の心境は前よりも複雑である。マイがパパと密会している姿をこの目で見てしまった。それどころか彼女自身の口から、パパの話を聞いてしまったのだから……。きっとマイは、見ず知らずの男性と行為に及ぶことをなんとも思わず、仕事だと割り切れるタイプの女性なのだろう。
いや、本当にそうか? 考えてみれば、彼女は俺に触れたことがほとんど無い。俺が彼女の涙を拭こうとしたときすら手を払われた。まあ「金も払わずに、私に触れるな!」というタイプなのかもしれないが、ミィの方が余程ボディタッチが激しいだろう。
何か我慢をしてでもパパ活を行わなければならない事情があるのだろうか……。と、色々と考えてはみたが思い当たる節は無い。考えられることとすればお金関連のトラブルなのだろうが、お金に困っている分けではないと、本人が言っていたし……。
小説の執筆は進まないし……マイのことは考えても分からないし……観念してベッドへと飛び込んだ。いくら考えても、分からないことは分からない。進まないものは進まない。であればもう、今日は諦めてもう眠ってしまおう。そう考えて毛布にくるまり身体を丸める。まだ眠くはないが、身体の力を抜いて目をつむる。暫くすると、いつ眠ったのか分からないが、いつの間にかカーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいた。
◆◆◆◆
「BOX席の飲み放題で、あと、マイちゃんと話せますか?」
俺は19:00ぴったりにメルラブへと足を運んだ。マイと話をしたいからだ。マイのことを気になり過ぎるため、小説の執筆が全然進まない。無理に書いたとしても小説のキャラ造形にブレが生じてしまう。執筆した文章を読み返した時に、毎回「このキャラってこんなことを言うやつだったっけ?」と疑問が出てくるのだ。
アイさんやミィに相談することも出来たのだが、彼女達に話す場合、どのような伝え方をしてもパパ活の話題を切り出す必要があるだろう。もし、マイがパパ活をしている事を、アイさんが知ってしまったらアイさんはマイのことをどうするのだろうか。クビにするしかないだろう……。そんなこと俺の本意ではない。
だから、どうしてパパ活なんてしているのか、マイの口から直接聞くしかないのだ。
座席に案内される途中で客足を見ると、お店の中はガラガラだった。今日のメルラブは特にイベントも無く開店直後という事もあるためだろう。客はカウンター席に2人席を開けて座っているのみであり、カウンター席の奥でミィがボトルの整理をしている。
そんなミィに手を振ると、ミィは頬を膨らませ不満そうな表情を浮かべながらそっぽを向きやがった。あいつ、まかりなりにも俺は客としてやって来たのに……。
まあ、何にせよ客が少ない事は丁度良い。他の客に聞かれると厄介な話題だ。アイさんは何かを察したように、お店の一番奥――入り口からはカウンターが影になり見えないBOX席へと俺を案内した。そして席に着いてから3分もしない内に、マイが俺の隣に座った。彼女はいつも通りのニヤニヤとした笑顔を浮かべる。
「昨日ぶりだね~。ユウトくん、もしかして毎日私に会いたくなっちゃった?」
「マイちゃんに会いたくて仕方が無かったよ。マイちゃんのことばかりを考えて、何も手に付かなかったからね。」
冗談交じりに言うと、マイは吹き出すように笑う。
「何それ~。私のこと好き過ぎじゃん。」
マイの様子は普段と変わらない。昨日パパとの密会をしていた時の彼女が嘘のようだ。もし昨日の出来事が全て夢で、マイはパパ活を行っておらず、SNSで拡散されているマイの枕営業も全嘘ならどれだけ良いか……。
俺は少し間をおいてから真剣な目でマイを見る。そしてスマホで枕の件が書かれたSNSの画面をマイに見せながら慎重に口を開いた。
「これ、本当?」
コメント
1件
第61話、めっちゃ気になる展開だった…! ユウトが「俺に彼女を注意する資格なんてあるのか」って自問するところ、重すぎてグッときた。自分も客である立場と向き合ってて、ちゃんと考えてるんだなって。マイの普段と変わらなさそうな笑顔の裏側が気になって仕方ない。SNSの話を切り出すラスト、次の話が待ちきれんわ🔥
#高校生
猫塚ルイ

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泉屋乃苺
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