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走り書きの筆跡に、瑠衣に胸騒ぎと嫌な予感が渦巻いていく。
自宅の電話には、留守電が入っている事を知らせる赤いランプが点滅し、留守電を再生しようとボタンに触れる直前、電話が鳴った。
見知らぬ電話番号。
だが、ナンバーディスプレイの下三桁の数字を見た瞬間、彼女の鼓動はうるさくなるほどにバクバクし、平常心を装いながら電話応対した。
『…………もしもし。九條でございます』
『九條さんのご家族の方でしょうか。こちらは山梨県警察の——』
瑠衣の予想通り、警察からの電話だった。
『あなたのご両親と思われる方が、富士山の樹海で首吊り自殺を——』
『…………え……?』
瑠衣は頭の中が真っ白に霞んでいくのを感じ、受話器を持つ手が震え出し、止まらない。
(何で……? どうして……? 今朝…………卒業式に行く前に……泣きながらも見送ってくれたのに……! あの涙は……)
警察の方が受話器越しに経緯を説明してくれるが、現実味がなく、どこかフワフワと浮遊していたものが一気に奈落の底に突き落とされたような、何とも言えない感覚が瑠衣を襲う。
『——身元の確認をしていただきたいので、署までお越し下さい』
『……わ…………わかり……まし……た……』
動揺しつつも、震え続ける手で電話の傍にあった筆記具で警察署の住所のメモを取り、瑠衣は両親の遺体が安置されている警察署へと向かった。
カーナビで警察署の住所を入力し、慣れない車の運転と高速道路を使って何とか車を走らせて到着した。
九條の家族の者だと名乗ると、署員に促され、今朝まで玄関先で見送りしてくれた両親と、遺体安置所で無言の対面。
顔に被された白い布を、警察の方がそっと取り去ると、父と母の顔は蒼白だったが、呼びかけたらすぐにでも起き上がりそうだった。