テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
煙が上がる村の空に、十数体の魔族が飛翔していた。
頭には厳しい二本角、青白い肌にボンデージみたいな格好をした女たち。
黒い羽を広げ、空中で旋回しながら、赤々とした魔力の炎を両手に溜めている。
「ナハト、お前に似てるけど友達か?」
「違うよ、あれはデーモン族。サキュバスとはまた別。知能が高くて攻撃的。レベルが高い奴は上位魔法だって使うよ」
ナハトの説明を聞いた直後、デーモンたちは攻撃を開始。
火球が空から降り注ぎ、風車やブドウ畑に命中。熱風とともに火の手が上がる。
「やめろぉぉぉぉ!!」
俺は聖剣をぶんぶん振り回しながら、地上で吠えた。
「お前らゾルデムか! 我が愛しき国民をやらせはせんぞ!」
だが、やつらは空に浮かび、余裕綽々に俺達を見下ろしてくる。
「にゃろう、目にものみせてくれる!」
俺はナハトを誘導して、一番低空を飛行しているデーモンに狙いを付ける。
そして脚力にエネルギーを集中する。
「カロリーバースト! エリアルジャンプ!!」
ナハトの背中から、重力を無視したような大ジャンプを見せる。
風を切り、空を裂き、打ち上がる弾道ミサイルのようにまっすぐデーモンの懐へ翔ぶ。
さすがにデーモンもこれには驚いたようで、慌てて迎撃で火球魔法を使用する。
しかし俺は、新たなる力であるドラゴンヘッドカリバーを左腕に構える。
竜頭を模した金属盾は、口の部分が開き敵の火球をパクリと食べてしまう。
火球は口の中で噛み潰されるようにして消滅した。
「!?」
「ぉんどりゃあああああッ!! 王子スラッシュ!!」
勢いそのままに、聖剣フリューゲルカリバーを縦一閃。
漆黒のコウモリ翼を斬り裂き、デーモンが悲鳴と共に空から墜ちていく。
そして俺は、そのままナハトのモフモフの背中へと着地。
「我ながらエレガンスな攻撃だ」
「ラウルいっぱい集まってきたよ!」
一体やられて驚いたデーモンたちは、すぐに集まってきて俺達に向かって火球の連打を浴びせてくる。
空が紅蓮に染まり、灼熱の炎の雨が襲いかかる。
「うぉぉっあつつつつつ!!」
「あちちちち! ラウル自分だけ盾で守ってずるい!」
集中砲火を浴びてピンチになる。
だが次の瞬間――地面が爆ぜるように盛り上がり、巨腕が天を衝いた。
「ウチの子に攻撃しないで!!」
空飛ぶ箒に乗った魔女のママ上が、岩石のゴーレム、ギガントロックを召喚。岩の巨人がデーモンの攻撃を完璧に阻む。
更に、追いついてきたフリーデとバルト将軍が暗黒魔法デスブリンガーを展開。
漆黒の魔剣が何本も空中に浮かぶ。
「討て!!」
バルト将軍の号令。鋭い風切り音とともに、対空魔剣の嵐が空を裂いた。
100
144
1,679
宮毘羅
20
デーモンたちが次々に射抜かれ、バッタバッタと撃ち落とされていく。空を制圧していた魔族はいなくなり、なんとか鎮圧は完了した。
「いやーなんとかなったな」
墜落したデーモンを集め、縄で縛っているフリーデに声をかける。
すると彼女は俺に向き直ると、両手を腰にあててプンスカと怒る。
「王子、敵がいる場所に我先に駆けていかないで下さい。我々騎士の立場がありません」
「でも、バルト将軍が、国民を見捨てるのは指導者としてありえないって」
「父上! あなたの教育が、王子を無謀にさせているのですよ!」
「む、むぅ、すまぬフリーデ」
バルト将軍も、娘にはタジタジのようだ。
なんとかデーモン族を全員縛り上げると、わりと美女揃いで驚かされる。
「なんだ? 魔族娼館から逃げてきたんじゃないかって思うくらい、美女ばっかりだな」
一番リーダーっぽい、青髪金目のデーモンに質問してみる。
「お前たち、なんでこの村を襲ったんだ? ゾルデムの命令か?」
「違う…………コロセ、貴様らケダモノの血肉にはならん」
「ケダモノて……。殺しはしない、俺達はそんな蛮族じゃないんだ」
「ペッ」
女デーモンは憎しみに満ちた目で、俺の顔につばを吐きかける。
「貴様、殿下になんと無礼なことを!」
バルト将軍が太腕を伸ばそうとするが、俺はそれを止める。
「構わん」
俺は吐きかけられたつばを手で拭うと、それをレロンと舐めた。
「余は美女ならば、吐きかけられたつばも舐めれる男だ。覚えておけ」
キメ顔で言うと、デーモンたちは「ヒェッ変態王子!」と恐れ慄いている。
暴力を行うよりも、よっぽど効いている。
「王子、変な病気にかかったりするので本当におやめ下さい」
呆れ顔のフリーデ。
すると、村の建物から隠れていた村人が数人駆けてくる。
その中でモスグリーンの貴族服に身を包んだ細身の男性が、ひときわ大きく手を振る。
「皆さん、本当にありがとうございます! わたくし、この村を治めております、エロモンド子爵と申します!」
真っ白で立派なヒゲを蓄えており、音楽の教科書に載ってそうな横髪がクルンとしたヘアスタイル。今日、宿を取る予定だった村の領主だ。
「うむ。余はリガルド帝国第三王子、ラウル・グランツだ」
名乗ると、エロモンドは目を丸くし、両手をばたばたと振って慌てた。
「えっ、王子ご本人!? わたくし、てっきり帝国の騎士団の方が救援に来られたのかと……!」
「元々この村に立ち寄る予定だった。たまたま襲撃に遭遇したまでだ」
「なんと……これはまさに奇跡! 王子は我々の命の恩人です!!」
ひれ伏すように頭を下げるエロモンドに、俺は軽く頷いた。
うんうん、たまにはこういうわかりやすい人助けも悪くない。
「それにしても、なぜこの村が襲われていたのだ? 辺境の村を襲うにしてはやけに数が多かった」
「恐らくですが……この村には、帝国でも指折りのワイン蔵がありまして。もしかすると、そこを狙ったのかもしれません」
魔族がワイン目当てで襲撃を? にしては、村を全焼させる勢いで攻撃していたが。
「こ奴らを捕まえておく場所はあるか?」
バルト将軍が、拘束されたデーモンたちを見ながら問う。
「使われていない古いワイン蔵があります。厚い石壁で囲まれておりますし、鉄扉も健在です。そちらへ閉じ込めておきましょう」
「うむ。それで構わん。明朝、騎士団に引き渡す」
騎士たちが拘束したデーモンたちを引き連れて、村の広場を奥へと進む。
彼女たちは皆、詠唱ができないよう猿轡を噛まされた状態で、古びた石造りのワイン蔵へと押し込まれた。
コメント
1件
わあ、最新話読ませていただきました! 空中のデーモン相手にエリアルジャンプで飛びかかるラウル王子、めちゃくちゃカッコよかったです🔥 変態王子のキメ顔も相変わらず安定してますね(笑) それにしてもエロモンド子爵…名前からして既に笑わせてもらいました。音楽の教科書みたいな髪型、脳内にしっかり映像が浮かびましたよ🎵 デーモン美女たちのこれからの行方も気になります!