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八雲瑠月
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プロジェクターに千一夜のキャラ設定の部分にスライドし、拡大される。
「次に話の詳細だ。プロローグもしくは一話から終了の話数、エピローグまでのあらすじを書いていく。ここで覚えておきたいのは起・承・転・結だ。起は物語の導入部、人物紹介をしていくパートになる。次に承、起を受け継ぎ、物語が少し進展する。転は転機、事件などの盛り上がりなどだ。結は結果、事件の締めくくりのオチとなる。これらを守って、基本は書いていく。十二星座星物語の上のプロットだとこのようになる」
プロジェクターのプロットに一話(起)二話(承)三話(転)四話(結)が赤文字で記されていく。
書也が少し考え、手を上げる。
「この起・承・転・結のパターンを外した物語って、あります?」
「ちょっと書也、先生の話を聞いてた? そんな話がある訳ないじゃない! 起・承・転・結が基本なんだから」
友美が書也を馬鹿にしたよう目で見る。
「あるぞ」
「ちょっと嘘でしょ!?」
教子先生の返答に友美が思わず声を上げる。
「有名な小説だと、シャーロックホームズだな。完結した話として、語り手が話しているので、結からの話となる。ただし、結から始める場合は上手く表現しないと、生きている人間がその場にいたりして、ネタバレになる可能性がある。その他にも有名ゲームだと、FFⅩなどは転から始まっている。あれはプロローグで主人公が死ぬ前に語っているので、転からの始まりとなる。転から始めると、読者にインパクトと謎が提示されるが、伏線を上手く回収しないと、つじつま合わせができなくなったりして、読者をがっかりさせる事となる。その他にも学園モノだと承から始まる話もある。例えばプロローグでヒロインと出会って、出会う前に遡る話だ。ただ、起の話が長くなったりすると、プロローグの承で起こった事を読者が思い出せずに混乱したりする。慣れないうちは起・承・転・結でプロットを書いてほしい」
友美が慌ててノートに記載を始める。
「以上で、プロットの簡単な説明はしたが、これから実際にプロットを書いてもらう。プロットは小説のライトノベル新人賞に出すものとして考え、先ほど言った起・承・転・結を守り、物語を完結させてくれ。特に結の部分だが、古いアクション映画みたいな続きを匂わすような書き方はするな。必ず完結させろ。それじゃあ、さっそく私のプロットを参考にして、書いてみろ。時間は二時間、書いたプロットは明日、みんなの前で発表してもらうから、そのつもりでな」
教子先生の話が終わり、沈黙の後、一斉にラノケンのメンバー達がノートPCで小説を書き始める。
それから二時間はあっという間だった。気付いた時にはけたたましい音のアラームが鳴り響いた。
「終了だ! プロットが完成したものはいるか?」
少し気になった部分はあったが、書き終えていたので、躊躇しながらも書也は手を上げる。他にも愛、幽美、エロスの手は上がっていたが、残りの友美、理香については手が上がっていなかった。
「あーもう! これだからプロットは嫌なのよ!」
友美は両手でくしゃくしゃと頭を掻きながら言う。
「プロットを完成していない奴は明日にまでには完成させること。完成させた奴も気を抜かず、気になる部分や誤字脱字をチェックし、発表に備えろ」
【はい】
と、声を揃えてラノケンメンバーが答えた。
人気ハンバーガーチェーン店、ワクドナルド。老若男女が通う人気店で、現代国語学院の近くにあってか、生徒も集まりやすかった。一階から四階まで飲食スペースがあり、モダンなテーブルと椅子、壁際にはベンチシートがあって、落ち着ける雰囲気があった。
ワクドナルドの飲食スペースで女子や男子の生徒が笑い話で盛り上がる中、友美は疲れたようにテーブルに顎を付いて、討ち取られた生首のようになっている。
「で……なんでこうなったわけ? わたし、プロット終わってないんだけど」
友美がだるそうに言ってから、顎を付けたまま、生首のモンスターのようにポテトを噛り付く。
「三十分ぐらいのお喋りぐらいは良いだろ? 私の心理の研究もかねて、付き合いたまえ」
理香が言うと、さらに友美は不機嫌そうな顔になる。
「はっ?」
「こほん……いや、まだ書也君……いや、失礼……語部君だったね。愛君が書也君と呼んでいたので、つい下の名前で呼んでしまったよ」
「書也で良いですよ。俺も下の名前で呼んでもらった方が親近感を感じるので」
書也は笑顔で答える。
「では……その書也君との絆を深める意味合いで一緒に食事というのも悪くないと思うのだがね」
「何を話すのよ」
生きた生首を続けている友美は器用にも口だけでポテトを食べ続けている。
「お待たせだよ。混んでたから、それなりに時間がかかったみたいだよ」
愛が書也の隣に座り、ドンとトレーを置くと、それなりの重量物のような音がする。トレーを見れば、ハンバーガー五個にポテトLサイズ二個、ナゲット、サラダ、Lサイズのアップルジュース、アップルパイなどが置かれている。
「お、おう!?」
愛が買ってきたその量に思わず書也が変な声を上げる。
「あんたは相変わらずね。よくいつもその量を食べて、太らないわね」
友美が呆れ顔で言う。
「これでも一キロ太ったんだよ。お夜食のおやつ、減らさないと……」
少し悲しそうに言う愛に呆れ顔のままの友美。
「あんたの家の体重計、壊れてるんじゃないの?」
「こほ……」
「うわっ!?」
書也が思わず悲鳴に近い声を上げる。気付けば愛の向かい側に居た幽美が咳をして吐血し、口元を真っ赤に染め上げていた。
「ちょっと幽美ちゃん、大丈夫?」
「ナゲットにケチャップとマスタードをつけたら、むせた……」
「なんだ……ケチャップか……」
血ではないと分かると、書也が安堵の溜息をもらした。
「ほら、幽美ちゃん。お口拭いてあげる」
愛は幽美の口を優しく紙ナプキンで拭いて、綺麗にしていく。
「ありがとう愛、お礼に残ったナゲット全部あげる」
幽美は躊躇いもせずにナゲットの箱ごと愛のトレーに乗せた。
「幽美ちゃんは食べなさすぎだよ……ナゲット、半分も食べてないよ」
「サラダとコーヒーで足りそうだから大丈夫」
何かに取り憑かれたかのように幽美はドレッシングもつけずにむしゃむしゃとウサギのようにレタスの切れ端を両手で掴んで食べ始める。心なしか瞳まで赤くなっている気がした。
「幽美の奴、動物霊に取り憑かれてないか?」
幽美の行動に引く書也に対して、ラノケンメンバーはそれが通常業務のように飲み食いをしている。
「それじゃあ皆様が揃った事だし、ペンネーム決めをやりますわよ!」
エロスが言い放って、周囲が一瞬、静寂に包まれたような気がした。
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