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八雲瑠月
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「そういえばそうだったわね……エロス部長の嬉し恥ずかしのペンネーム会議があったの忘れてたわ」
友美はテーブルから顔を上げ、書也を見る。それはまるで怪我をした可哀想な動物でも見たかのような顔だった。
「やっぱりエロスさん、部長だったんですね? ペンネームって、筆者につく仮名ですよね?」
書也はいじられそうな気配がして微妙な表情になる。
「そうですわ。ラノケンでは皆で良いペンネームを考えますの。作家となった場合はその決まったペンネームを使い続けますの。面白いでしょう?」
エロスは当然のように言うが、書也は少し抵抗があるのか、微妙な表情のままだった。
「うわ……エロス部長、なんかそれ軽い罰ゲームみたいな感じになってません? ちなみにみんなのペンネームは?」
「さぁ、皆様。発表してくださいまし! 学年順で愛さんから」
エロスにより、突然のペンネーム公表大会が行われ、ハンバーガーを頬張っていた愛が急に顔を真っ赤に染めた。
「……んとね……ペンネーム、ドジっ娘食いしん坊だよ」
愛が答えると、ラノケンメンバーの視線が友美に向く。
「わ、わたし!? つ、ツンデレよ……」
友美は頬を染め、書也から視線を逸らした。
「私はマッドサイエンティストというペンネームにされたよ。特にやましい研究はしていないのだけれどね」
理香に自覚はないのか、やれやれといった口調で言う。
「私はヤンデレ……字も設定されて、病ンデレにされた」
幽美は頬を染め、恥かしそうにボールペンでメモ用紙に「病ンデレ」と記載した。
「そして私のペンネームは……エロお嬢様ですわ!」
声を上げるエロスに一瞬、ざわついた店内が凍りついたような気がしたが、気のせいだと思いたい。
エロスは胸を張って言うが、誇れるペンネームではない。お嬢様ならまだしも、そこにエロが付いてしまうと、歩く変態レベルである。
「よりによって言いだしっぺが一番、恥ずかしいのきた!?」
書也は思わず叫ぶように言う。
うるさいと思ったのか中年親父が咳払いし、書也を睨んで通り過ぎる。書也は慌てて、視線を送り続ける中年親父に何度も頭を下げた。
「では、会議を始めましょう! 書也さんにふさわしいペンネームを!」
そう言うと、書也以外のラノケンメンバーが隅の方でコソコソと喋り始める。
『わたしの胸を触ったから……エロ大魔王でいいんじゃないの』
友美の声が聞こえてくるが、トーンは下がっていないせいか、はっきりと書也に聞えた。
『駄目ですわ。エロは私の特権ですわ! それに彼は思った以上に平凡で童貞の匂いがしますわ』
「あの……聞こえているんですけど……」
『これは彼をよく知る人物に聞いてみないとね』
理香が愛を見る。
『そうだね。書也君は中学二年生の時代に遡ると……SNSのミックシィにこんな写真をアップロードしてたよ』
「お、おい!?」
チラリとなにか黒歴史の写真が見えて、愛からスマホを取り上げようとするが、友美の背中にブロックされる。
『半裸で何やってんの!? やっぱり変態じゃない!?』
『両腕とお腹のあたりに黒い龍の影みたいな刺青してるよね?』
愛が言う。
『う~む。タトゥーシールのようだけど……部族の儀式的な刺青か何かかね? 靴下もせずに足にもこの紋章が入ってるようだが……』
理香がタブレットで何かを調べながら言う。
『独自でいろんな部族のシャーマン研究してるけど……知れ渡っている部族で、こんな刺青しない……どちらかというと漫画やアニメのような……』
幽美が首を傾げる。
『これは漫画、神魔転生白書の修羅黒龍のコスプレですわね。このタトゥーシールも出回ってますわ』
エロスが検索して、コスプレのショッピングサイトから似たようなタトゥーシールの写真画像をスマホに表示させ、ラノケンメンバーに見せていく。
「まさかこれはいわゆる……ぷぷ……」
友美が書也を見て、含み笑いする。
【中二病!?】
書也を除く、ラノケンメンバーが声を揃えて言う。
「ぷぷ……!?」
友美は何が可笑しいのか、店内で声を上げないように笑いを堪えているようだった。
「おい友美、笑うところか? 愛も酷いぜ……」
書也はむすっとした表情になり、友美に対してももはや敬語ではない。
「ごめんなさい……でも、何で消さなかったの?」
言ってから、友美はまだクスクスと笑っている。
「二年前の話だ……そんなの山ほどあったからな……ある程度、消したつもりだったけど、まだ残ってたとは……」
書也はがっくしと肩を落とし、赤面した。
「決まりね。あんたのペンネームは中二病よ」
「……マジかよ」
書也はそれ以上はなにも言えず、ラノケンメンバーの顔を何かを確かめるように見ていく。
「書也君に拒否権はあるが、どうするかね? 君自身で考えるか、また別の案のペンネームを私達で考えるかになるが……」
理香は真剣に考えて言う。
「中二病で良いです。俺だけなんかまともなペンネームですと、あれですし」
「ぷぷ……じゃあ、中二病でよろしく」
友美が笑みを浮かべながら何度も肩を叩く。
「そう言われると、なんかむかつくな」
書也は叩く友美の腕を弾いて言う。
「それではペンネームも無事に決まった事ですし、二人の新入部員の祝杯といたしますわ」
エロスが紅茶の紙コップを掲げる。
【乾杯!】
ラノケンメンバーがそれぞれ、手に持った飲み物の紙コップを当てた。
乾杯した後、ラノケンメンバーとの飲み食いの話は面白かった。アニメ化したラノベの話から、ラノベ作家が関わったスマホゲームの話、有名漫画を小説化した話などで盛り上がった。