テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
転校して数日。俺の制服は、かつての仲間たちが着ているものとは違う、少し暗い色のものに変わっていた。
「よお、花垣。今日の昼飯はこっちで用意してるぜ」
教室の窓際、騒がしい連中の輪から離れた場所で、乾青宗が俺にビニール袋を差し出す。
九井一がその横で、今日に携帯端末を操作しながら言った。
「花垣、お前の学校の奴ら、噂すきだな。お前が『逃げた』とか『悪い奴らに捕まった』とか勝手なこと言ってる 」
俺は渡されたパンを一口かじり、淡々と言い返す。
「放っておけばいいよ。もう、関係ないから」
俺の心は驚くほど静かだった。かつては彼らの顔色を伺い、誰かが機嫌を損ねる度に胃を痛めていたのが嘘のようだ。
俺が学校へ行かなくなったことで、彼らの間でも何かが変わり始めていた。
放課後の廊下で、かつての仲間たちが口々に俺の悪口を言っているのが聞こえる。
「タケミチがいないと、なんか空気が間延びするっていうかさ…」
「結局、あいつが一番のノイズだったんだよ。 いなくなって清々したろ?」
みんな笑っている。けれど、その笑い声は以前よりもどこか無理があるように聞こえた。
彼らは俺を追い出したことで「平和」を手に入れたはずだった。それなのに、彼らの顔には消えない影が差している。
(──ざまあみろ、なんて思っている時点で、俺ももう、彼らと同じレベルまで落ちているのか)
「タケミチ、顔色が悪いな」
背後から、鶴蝶が俺の肩に手を置く。その手は強くて、温かい。
「……うん、平気。ただ、少しだけ昔のことが気になっただけ」
俺は窓の方を見る。校門の向こうで、彼らがふと、俺がいつも立っていた場所を見て、何かに気づいたように眉をひそめた。
俺がいなくなってから、彼らの世界は少しづつ、確実に崩れ始めている。
それは俺が望んだ復讐じゃない。ただ、彼らが自分で積み上げた「完璧な世界」という砂の城が、潮の満ち引きで崩れているだけだ。
枯れた花は、水を与えられてももう咲かない。
俺はもう、彼らのための太陽にはなれないんだ。
ゆるみちゃん
934
222
440
3,137
コメント
1件
第2話、読みました。 「ざまあみろ、なんて思ってる時点で俺ももう同じレベルか」ってところ、すごくグッときたよ…。タケミチくんが静かに距離を置いて、自分の心の平穏を取り戻してるのに、元仲間たちの方は崩れてきてるのが対照的で。 乾くんや鶴蝶くんのさりげない優しさが沁みるね。枯れた花に水をやっても咲かない──その比喩が切なくて美しかった。次も楽しみにしてる🌙