「私のせいなら、どうしてほしい?」
こういう時、彼の誘いかけは無為のクールさで、ついこちらが気を引かれてしまう。
「……キス、して」
そうしてお酒なんかよりもたやすく酔わされて、彼を求めたくなる。
柔らかに唇が触れ合うと、その瞳に映る炎のような揺らめきから、目が離せない。
互いの気持ちを確かめ合うようにキスを交わして後、部屋のベッドに横たえられると、スーツを脱ぎ落とす彼のネクタイに自分から手を掛けた。
微かに震える手でネクタイをほどき引き抜こうとすると、ワイシャツの襟元のボタンを外そうとした彼の手と触れ合った。
「……脱がせてくれるのか?」
とけたネクタイをするりと抜き取って、彼が問いかける。
気恥ずかしさにただ頷くことしかできないままで、シャツのボタンを一つずつ外していく。
「この先は、私がやろう」
スラックスの際まで開けると、彼が未だ震えている私の手を握った。
「どうした、こんなに震えて……」
「……魅力的すぎるから、あなたが」
あの炎を宿した眼差しに射すくめられた時から、魅了され捕われていた本心を明かすと、
「君も、魅力的で……。私など、とうてい敵わない……」
耳に溶けるような低く甘い声とともに、はだけられた胸元に唇の熱を感じた。
重なり合った胸元から、体中が熱感に満たされていく。
頬に添えた手の平が、顎の下を過ぎ首筋を辿って、胸の谷間に降りる。
横へつとずらされた手が、胸の膨らみに触れると、「……ぅん」と喘ぐ声が小さく口からこぼれた。
微かに開いた唇に、追い上げるようなキスが降りしきる。
満身を翻弄され、時に高く低くなる息づかいが混じり合い、このまま一つに溶けてもいいとさえ感じる。
「……愛してる、彩花」
応える余裕すらない私の片手を取り、彼が指輪の嵌まった薬指に接吻ると、瞬間に極まった腰がビクンと跳ね上がった。