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「あーっ!凛ー!こっちー!」
手をブンブン振っている蒼。
…腕、大丈夫か?
「早く行くぞ。」
「おーっ!」
こいつは、成仏させたい、絶対に。
…まずは、色んな店がある駅前に行ってみるか、
「まずは、なにしたい?」
こいつが思ったことやれば、未練が分かるか、そう考えた。
「んー、かき氷食べたいっ!」
「分かった。」
こいつのやりたい事、全部やってみせる。
結局、未練が見つからないまま、夕暮れが近づく。
「まずいな、蒼、最後に、行きたいところは。」
このままじゃ、今日中に成仏させてあげれない、
いや、もう、こいつを成仏させることだけを考えよう、
時間は関係ない、
「うーん、あっ!海!海行こう!」
海、たしか、海は、蒼が引っ越す前日に行った所だな、
場所はちがうけど、な、
「分かった。」
「うわぁぁぁ!綺麗っ!」
海ごときでこんなにキラキラ出来るのか、
「海綺麗じゃん!」
「そうか?」
たしか、前もこう言ってたな、
「私のね、名前の由来は、海のように、広く、深い心の持ち主になりなさい、なんだよね、」
初めて知った、
でも、それは、うみとかで良くないか、?
「へへっ、それがね、うみは、そのまんますぎるから、海の1番の特徴の、青色のあおになったんだ、」
そうだ、こいつ、心の声読めるんだった、
でも、素敵な、理由だな、
しばらく沈黙が続き、海の潮の音が響く。
「ねぇ、凛は、今日楽しかった?」
沈黙を破ったのは、蒼の声。
楽しかった、?どういう意味だ、?
「あぁ、楽しかったよ。」
正直、ここ最近1番楽しかった。
「えっ!楽しかった?!」
「え、ま、まぁ、」
「やったー!!!」
蒼は今までで1番大きな声を出した。
な、なんで、そんな喜ぶ、?
「ねぇ!どんな所が楽しかった?!ねぇ!」
しつこく聞いてくる蒼の懸命さに、僕はクスっと笑ってしまった。
「もう、分かったから笑」
「やっと、笑ってくれたね、笑」
涙声で、蒼はそう言った。
えっ、?
パッと蒼の方を見ると、微かに透明になっていた。
「あ、蒼、?」
「私の未練は、凛の笑顔を見る、だったんだよ、笑」
えっ、?
「凛ったら、私といる時、私が生きてた時も笑わなかったんだもん笑」
……たしかに、言われてみれば、凛の前、と言うよりかは、物心着いた時から、僕は笑わなかった。
「ねぇ、凛、」
さっきよりも蒼が透明になっている、
本当に、消えちゃうんだ、
「私が居なくなっても、凛は、皆の前で、笑顔で過ごしてね?」
「そして、今までよりも、幸せに過ごして。」
「私よりもいい人見つけて、幸せになるんだよ?」
「私は、ずーっと、見守っているから、」
なんで、どんどん消えかけていく蒼。
「じゃあね、私の約束、守るんだぞ?」
そう言い残し、跡も残らず消えてしまった。
最後くらい、言わせてくれよ、
全部、お前の言葉で終わってしまっただろう、
それより、お前以上、良い奴なんて居ないだろ、
僕は、蒼が居た所に、そっと手を添える。
「僕は、みんなの前で、笑顔でいると誓うよ、でも、お前以外は、好きになれない気がするんだ、だから、幸せになるから、恋人は作らなくていいよな、?」
聞こえないはずなのに、「いいよ」と、嬉しそうな声が聞こえてきた。
「大好き、大好きだ、蒼、」
嬉しいような、悲しいような、どちらの涙か分からない涙が、頬を伝った。
本当に、見ていてくれるよね。
蒼。
「なぁ!凛ー!カラオケ行こうぜー!」
「あぁ、行こう。優希(ゆうき)」
僕は、あの日から人と接するようになった。
お陰で、クラスの半分以上と友達になれることが出来た。
「凛くん!ちょっといい、?」
一人の女の子が、頬を赤く染めながら、中庭に来るように言った。
「好きです!付き合ってください!」
最近、告白されることはよくあるようになった。
「ごめんね、僕には、好きな人がいるんだ、でも、ありがとう、」
ねぇ、蒼、
僕、ちゃんと今幸せだよ。
でもさ、君と過ごした日々以上の幸せには中々出会わないんだ、
だから、蒼、戻ってきておくれよ、
願いもしない思いを胸にため、僕は明日に向かって歩き続ける。