コメント
0件
「あーっ!凛ー!こっちー!」
手をブンブン振っている蒼。
…腕、大丈夫か?
「早く行くぞ。」
「おーっ!」
こいつは、成仏させたい、絶対に。
…まずは、色んな店がある駅前に行ってみるか、
「まずは、なにしたい?」
こいつが思ったことやれば、未練が分かるか、そう考えた。
「んー、かき氷食べたいっ!」
「分かった。」
こいつのやりたい事、全部やってみせる。
結局、未練が見つからないまま、夕暮れが近づく。
「まずいな、蒼、最後に、行きたいところは。」
このままじゃ、今日中に成仏させてあげれない、
いや、もう、こいつを成仏させることだけを考えよう、
時間は関係ない、
「うーん、あっ!海!海行こう!」
海、たしか、海は、蒼が引っ越す前日に行った所だな、
場所はちがうけど、な、
「分かった。」
「うわぁぁぁ!綺麗っ!」
海ごときでこんなにキラキラ出来るのか、
「海綺麗じゃん!」
「そうか?」
たしか、前もこう言ってたな、
「私のね、名前の由来は、海のように、広く、深い心の持ち主になりなさい、なんだよね、」
初めて知った、
でも、それは、うみとかで良くないか、?
「へへっ、それがね、うみは、そのまんますぎるから、海の1番の特徴の、青色のあおになったんだ、」
そうだ、こいつ、心の声読めるんだった、
でも、素敵な、理由だな、
しばらく沈黙が続き、海の潮の音が響く。
「ねぇ、凛は、今日楽しかった?」
沈黙を破ったのは、蒼の声。
楽しかった、?どういう意味だ、?
「あぁ、楽しかったよ。」
正直、ここ最近1番楽しかった。
「えっ!楽しかった?!」
「え、ま、まぁ、」
「やったー!!!」
蒼は今までで1番大きな声を出した。
な、なんで、そんな喜ぶ、?
「ねぇ!どんな所が楽しかった?!ねぇ!」
しつこく聞いてくる蒼の懸命さに、僕はクスっと笑ってしまった。
「もう、分かったから笑」
「やっと、笑ってくれたね、笑」
涙声で、蒼はそう言った。
えっ、?
パッと蒼の方を見ると、微かに透明になっていた。
「あ、蒼、?」
「私の未練は、凛の笑顔を見る、だったんだよ、笑」
えっ、?
「凛ったら、私といる時、私が生きてた時も笑わなかったんだもん笑」
……たしかに、言われてみれば、凛の前、と言うよりかは、物心着いた時から、僕は笑わなかった。
「ねぇ、凛、」
さっきよりも蒼が透明になっている、
本当に、消えちゃうんだ、
「私が居なくなっても、凛は、皆の前で、笑顔で過ごしてね?」
「そして、今までよりも、幸せに過ごして。」
「私よりもいい人見つけて、幸せになるんだよ?」
「私は、ずーっと、見守っているから、」
なんで、どんどん消えかけていく蒼。
「じゃあね、私の約束、守るんだぞ?」
そう言い残し、跡も残らず消えてしまった。
最後くらい、言わせてくれよ、
全部、お前の言葉で終わってしまっただろう、
それより、お前以上、良い奴なんて居ないだろ、
僕は、蒼が居た所に、そっと手を添える。
「僕は、みんなの前で、笑顔でいると誓うよ、でも、お前以外は、好きになれない気がするんだ、だから、幸せになるから、恋人は作らなくていいよな、?」
聞こえないはずなのに、「いいよ」と、嬉しそうな声が聞こえてきた。
「大好き、大好きだ、蒼、」
嬉しいような、悲しいような、どちらの涙か分からない涙が、頬を伝った。
本当に、見ていてくれるよね。
蒼。
「なぁ!凛ー!カラオケ行こうぜー!」
「あぁ、行こう。優希(ゆうき)」
僕は、あの日から人と接するようになった。
お陰で、クラスの半分以上と友達になれることが出来た。
「凛くん!ちょっといい、?」
一人の女の子が、頬を赤く染めながら、中庭に来るように言った。
「好きです!付き合ってください!」
最近、告白されることはよくあるようになった。
「ごめんね、僕には、好きな人がいるんだ、でも、ありがとう、」
ねぇ、蒼、
僕、ちゃんと今幸せだよ。
でもさ、君と過ごした日々以上の幸せには中々出会わないんだ、
だから、蒼、戻ってきておくれよ、
願いもしない思いを胸にため、僕は明日に向かって歩き続ける。